一見すると簡単な計算のように思える問題が、数学者も巻き込んだ論争になったことがあるのをご存知でしょうか。
今回は「計算の仕方」を確認しながら、その論争になった経緯をみてみましょう!
問題
次の計算をしなさい。
12÷2(1+2)
(上記問題は、ネット上で話題になった問題を改題しています)
まずは、ご自身で計算をしてみてください。計算の順序は、皆さんの知っている通りです。
答えは「2」になったでしょうか。「18」になったでしょうか。
実は今回の問題は、どちらの答えも間違いだと言い切ることができないのです!
解説
計算の順序は、小学校でも習う通り、以下のようになります。
1. カッコの中から計算
2. かけ算・わり算を計算
3. たし算・ひき算を計算
きちんと計算の順序が決まっているにも関わらず、なぜ2つの答えが出てくるのでしょうか。
それぞれの考え方をみていきましょう。
答えが「18」となる考え方
「答えは18だ」と考えた方は、次のように考えたのではないでしょうか
2とカッコの間には、「かけ算」が省略されています。
そのため、まずはカッコの中のたし算をして1+2=3。
これによって、12÷2×3となり、かけ算・わり算を含んだ計算になりました。
この場合は左から順に計算しなければいけません。
したがって、答えは18ということになります。
計算をまとめると次のようになります。
12÷2(1+2)
=12÷2×3
=6×3
=18
これは、2(1+2)の間に「×」が省略されているだけで、計算の順序に従う算数的な解釈をしています。
答えが「2」となる考え方
「答えは2だ」と考えた方は、どのような計算をしたのでしょうか。
ポイントとなるのは「2(1+2)」の部分の省略された「かけ算」です。
「かけ算が省略されたのだから、2(1+2)はひとかたまりの計算としないといけない」と考えています。
つまり、2(1+2)=6となって、12÷6=2という計算をしています。
つまり、計算をまとめると以下のようになります。
12÷2(1+2)
=12÷6
=2
「2(1+2)はひとかたまり」という考え方は、次の文字式の計算を考えると納得ができるのではないでしょうか。
9a²÷3aを計算する際、「3a」をかたまりとして扱い、「9a²÷3a=3a」となりますね。
一方、かけ算を省略しなければ「9a²÷3×a=3a³」であり、かけ算が省略されるかどうかで、わる数のかたまりが異なります。
今回の場合は、かけ算を省略をしているので「2(1+2)はひとかたまり」とするべきだと考える数学的な解釈をし、結果は「2」となります。
まとめ
それぞれの答えとなる主張は、どちらも間違いとは言いきれません。
2(1+2)のかけ算「×」が省略されただけと解釈するか(算数的)、他の演算より優先されるひとかたまりの計算だと解釈するか(数学的)で、答えが「18」と「2」で分かれるのです。
きちんと答えが定まると思われる算数・数学でも、答えが決まらないということがあるのですね。
どのような考え方が前提になっているかを明確にした上で、議論をしなければいけません。
※解き方は複数ある場合がございます。
文・編集(監修):SAJIMA
日本国内外の学校、学習塾で数学・理科の講師として幼児から高校生までを指導。現在はフリーランスとして独立し、オンラインを中心に授業を展開している。子供への学習指導だけでなく、大人向けの数学講座も開講し、算数・数学の楽しさを広く伝える活動を行っている。日本数学検定協会認定「数学インストラクター」