オートクチュールのオーラを表現した、ディオール。

2024年1月22日（現地時間）、毎シーズン恒例となったパリのロダン美術館で、ディオールのオートクチュール 2024年春夏コレクションショーが開催された。幾重もの人垣が取り囲むエントランスには次々と車が到着し、ナタリー・ポートマン、アニャ・テイラー＝ジョイ、ハン・ソヒ、エリザベス・デビッキ、そして日本からこの日のために来仏した八木莉可子などが姿を見せ、会場は華やかな雰囲気に包まれた。

美術館の庭園に設置される特設会場では、マリア・グラツィア＝キウリが選んだ女性アーティストによるインスタレーションが毎シーズンの恒例となっている。今シーズンのアーティストは、93歳になるイタリア人アーティスト、イザベラ・デュクロ。インスタレーションのタイトルは「ビッグ・オーラ」だ。織物の縦糸と横糸を思わせる黒い格子柄に覆われた白い壁に描かれた23体の巨大なドレスは、どこか東洋的で、オスマントルコのスルタンたちの衣装を抽象化したものだという。

会場が一瞬静まると、音楽とともに「To weave is human...Dear readers, here we weave for you a play」と、詩の朗読が始まり、最初のモデルが姿を現した。

ファーストルックは、ケープのように肩を覆うダブルカラーが印象的なコートとワイドパンツのセットアップ。続いて、アシンメトリーやデコルテでフェミニンに仕上げたベージュの５ルックが登場する。服のフォルムとシルエットが際立つオープニングだ。

今回のコレクションで、マリア・グラウィア＝キウリは、オートクチュールの持つオーラに視線を向けた。インスピレーション源となったのは、ムッシュー・ディオールが1952年秋冬のコレクションでデザインした「ラ シガール」ドレス。モワレ生地がカッティングの立体的な美しさを際立たせたこのアーカイブのドレスは、彼女の手でコンテンポラリーなシルエットに蘇った。肩を丸く包み込むショールのような襟や、胸元が折り紙のように畳まれたバージャケット、腰回りを誇張したワイドなスカートなどを、ベージュや黒、モスグリーン、チェリーレッドのアーティザナルなモワレ生地で提案。ムッシュ―・ディオールも好んだこの素材が、1点1点のシルエットを際立たせた。

フィナーレでは、ビロードのケープやモワレのドレスで、エレガントで崇高な女性像を描いた。布でフォルムを作り上げる。──クチュールの本質を追求する、オーラを感じさせるコレクションだった。