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医師に聞く【今こそ知りたい風邪のことQ&A】 薬は? 食事は? 風邪のギモン・不安を解決!

  • 2024.1.22
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まだまだ厳しい寒さが続くこの時期は、新型コロナやインフルエンザ、風邪などが猛威をふるいます。そんな感染症でつらい思いをしないためには、かからないこと、風邪に負けない体力をつけることが大切。そこで、医師の大谷義夫先生に基礎体力を高める方法を教えていただきました。

教えてくれたのは……医学博士 大谷義夫先生

PROFILE

池袋大谷クリニック院長、呼吸器内科医、医学博士。東京医科歯科大学呼吸器内科医局長などを経て、2009年に開院。近著に『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)。

知っているようで知らない風邪のこと 8つのギモンに大谷先生が解説!

Q1:そもそも風邪ってなーに?

A 鼻からのどまでに症状が出る、 急性上気道感染症の一種です。

風邪とは、呼吸器感染症のうちの急性上気道感染症の一種で「風邪症候群」ともいいます。上気道とは鼻からのどまでの、気管や気管支に達しない部分のこと。のどの痛みや咳、鼻水、鼻づまり、発熱などが主な症状です。症状は3日から1週間、長引いても2週間ほどで自然に治ります。ただ、風邪による炎症が気管支まで広がると気管支炎、肺に広がると肺炎になって高熱が続くなど、症状が重くなることがあります。

Q2:風邪の原因はなに?

A ほとんどが ウイルスですが、ウイルスの種類は200種以上あります。

風邪の80~90%はウイルス、残りの10~20%は細菌が原因。ただし、風邪を引き起こすウイルスの種類は200種類以上あります。以前はよく風邪に出されていた抗生物質は、細菌を殺すものなので、ウイルス性の風邪には効果なし。

主なウイルス ▪️ ライノウイルス 風邪の30~40%を占めるといわれる、もっとも一般的な風邪のウイルス。「鼻風邪ウイルス」と呼ばれることもあり、鼻を詰まらせたり鼻水を出したり、のどの炎症を引き起こします。春や秋に流行が多いのが特徴です。 ▪️ インフルエンザウイルス インフルエンザ(呼吸器疾患を伴う急性感染症)を引き起こすウイルスで、本来冬に流行しやすい感染症ですが、今年は夏にも流行。季節性のA型、B型、C型に大きく分類され、A型とB型が問題になります。一般の風邪よりも、重くなりやすい疾患と考えられています。 ▪️ コロナウイルス 風邪の約10~15%を占めるウイルス。鼻、のど、咳の症状や、発熱を伴うこともあります。コロナウイルスの仲間に2002年に流行したSARSや、2012年に報告されたMERSがあります。 ▪️ 新型コロナウイルス 2019年に登場した7番目のコロナウイルス。ウイルス名は「SARSCoV-2」、病名は「COVID-19」が正式。SARSやMERSと共通する部分もありますが、変異を繰り返しています。  

Q3:風邪の症状はなぜ起こるの?

A 咳、くしゃみ、発熱などは体がウイルスと闘っている証拠です。

ウイルスが侵入してきたときに、体は免疫力を活性化させて撃退しようとします。体温が上がっているときは、白血球のひとつであり異物を排除する好中球や、ウイルスを食べるマクロファージの作用が強まっている、つまり体が闘っている状態。また、咳は気道に入ったウイルスなどを追い出すための防御反応で、たんは気道の内側の細胞から分泌されている粘液が、異物をからめとってまとめたものです。このように、風邪の不快な症状は、すべて体がウイルスから自分を守るためにやっていることなのです。

Q4:風邪はどうやって感染するの?

A ウイルスが鼻やのどの奥のほうにくっついて起こります。 感染経路はいくつかあります。

ライノウイルスを例にすると、鼻の穴から入ってきたウイルスは、鼻の奥に到達し、細胞の中に入り込みます。特に、初めて感染するウイルスは、細胞の中で自分のコピーを大量に作り症状を引き起こします。それに対抗して、免疫が発動され、防御反応として風邪症状が起こります。感染にいたる経路は主に右の4つになります。

主な感染経路 ▪️ 空気感染・エアロゾル感染 感染している人が飛ばした飛沫が、からからになって空中を漂いそれを吸い込んで起こる感染。細かい粒子の場合を空気感染、それよりも大きいサイズの粒子をエアロゾル感染といいます。 ▪️ 接触感染 ウイルスが含まれた鼻汁、唾液などに直接触れて手にウイルスがつき、その手で鼻や口を触ることで感染します。幼児などが、同じおもちゃで遊んで感染するのはこのタイプ。 ▪️ 飛沫感染 感染している人の、くしゃみや咳によって、空気中にウイルスが飛沫として排出され、それを吸い込むことによって起こる感染。だいたい1~2mの距離で接したときに起こります。

Q5:高熱のときに、注意したほうがいいことはある?

A 脱水症にならないように、水分補給を忘れずに。

普通の風邪の発熱は38℃程度で、そこまで高熱にならないことがほとんど。一方、インフルエンザや新型コロナウイルスは、40℃近い高熱が続く場合があります。特に幼児の場合は、熱性けいれんを起こさないかどうか見守りを。また、高熱が続いて汗をかき、水分補給や食事が十分でないと脱水症が起こります。高熱は急に出る場合があるので、水と電解質を同時に補給できる経口補水液を常備しておくと安心です。

軽度から中等度の脱水症における、水・電解質の補給と維持に。風邪や感染性腸炎での下痢・嘔吐・発熱による脱水症に。オーエスワン500mL ¥216/大塚製薬工場(大塚製薬工場 お客様相談センター)

Q6:インフルエンザや新型コロナを早く治す方法はあるの?

A インフルエンザや新型コロナには、抗ウイルス薬が有効です。

風邪は、基本的には本人の免疫力が勝つのを待つだけで、早く治す方法はなし。インフルエンザと新型コロナに関しては、抗ウイルス薬があります。新型コロナの抗ウイルス薬には、重症化リスクのある人(高齢者、持病がある人)以外でも使えるものがあり、後遺症のリスクを低くするともいわれています。ほかの薬との飲み合わせなどもあるので、早期に受診して相談してみましょう。

主な抗ウイルス薬 インフルエンザ……イナビル、タミフル、ゾフルーザ   新型コロナ(重症化リスクありの人)……ラゲブリオ、パキロビット   新型コロナ(12歳以上の人)……ゾコーバ

Q7:市販の風邪薬は飲んでも大丈夫?

A 症状を抑えるためのものだと理解して、適切に服用を。

風邪薬はウイルスを殺すのではなく、鼻水や咳を抑えるものなので、つらいときに飲むのは問題なし。発熱が長びく場合、解熱剤で負担をやわらげるのもひとつの方法です。ただ、解熱剤を毎日3回内服すると熱は下がりますが、肺炎になっていた場合に発見が遅れます。解熱剤は頓服にとどめて。

Q8:風邪のときには、何を食べたらいいの?

A 消化に負担がかからない食事がいいでしょう。

これを食べたら風邪が治る……というものは特になし。ただ、水分不足に注意しなければいけないのと、消化に負担がかからないもので、栄養をとる必要があります。「ちなみに、アメリカでは、風邪のときはチキンスープを飲むのが定番です。チキンスープを飲むと、ウイルスを排除する鼻粘膜の線毛が活発になったという論文もあります」

\大谷先生からのアドバイス/ 風邪のひき始めには……

風邪をひいたかな?というときには、ごく軽い運動がおすすめ 少しのどがイガイガしたり、だるさや寒気があったり、もしかして風邪かな?という症状のときは、つい放置してしまいがちですが、「私の場合は、ウォーキングを15分くらいします。軽い運動によって、免疫のために働くナチュラルキラー細胞が活性化されるからです」。ただし、疲れるほどのハードな運動をすると、かえって免疫力が下がります。いつも激しく運動しているという人でも、あくまでも軽めの調整にとどめておくのがコツです。

edit & text: Ema Tanaka illustration: Kayo Yamaguchi web edit:Mina Ota
リンネル2024年2月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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