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「家から何としても出るために」兄弟からの虐待を逃れた20歳の女子大学生…相談からつながる「はざまの存在」への支援【札幌】

  • 2024.1.21

「いままで認められてこなかった」家庭内の暴力に悩まされた女子大学生

「将来の夢として、アーキビストって職業にあこがれてて…」

明るく笑いながら話すのは、札幌の大学生・あいりさん(仮名・20)です。

アーキビストとは、地方議会や国会の法案資料や、永久に保存しておくべき歴史資料を管理・保存する専門職。

「元々、歴史がすごく好きなんです。だからかっこいい仕事だなと思っていて」

未来を見つめる前向きな若者。

取材で話を聞く私には、あいりさんはそう映りました。

HBC報道部に配属されて2年目の私は、これまで、風俗、孤立妊婦、発達障害のグレーゾーンなど、悩みを打ち明けられずに「閉じ込められた」女性たちと、支援の現場を追い、取材を続けてきました。

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Sitakke

過去の取材より 右が貴田岡結衣記者

そんな取材の経験から結びついたあいりさんとの出会い。

あいりさんが生き生きした表情をみせるようになったのは実はごく最近…。

夏に迎えたある転機がきっかけだったといいます。

それは、「生まれ育った家を出る」決断をしたこと。

そして、こう話してくれました。

「小さいころから、兄の暴力を受け続けていました」

あいりさんの決断の背景にあったのは、兄からの暴力、つまりきょうだい間の「虐待」でした。

これまでも家を出ようと考えたことはありましたが、母子家庭であったこと、金銭的な余裕がなかったことなどを理由に、ずっと行動できずにいました。

そして2023年7月、大学の先生にこれまでに受けてきたことを初めて打ち明けたのです。

これが、あいりさんが生まれて初めて、他人に「助けて」と言えた瞬間でした。

大学の先生は、さらに次の一歩を踏み出すヒントをくれたといいます。

「家から何としても出るために」

大学の先生に初めてかつて自分が受けてきた「虐待」を打ち明けたあいりさん。

その先生に紹介されたのは、札幌市内にある、「LiNK」(リンク)というこれまで聞いたことのなかった窓口でした。

10代から20代の女性たちを支援する事業を行っているLiNKに、あいりさんは、強い思いをもって面談に向かいました。

Sitakke

「家からなんとしてでも出るために、ためらわずに相談しました」

ここまでは明るく、経緯を話してくれていたあいりさん。

でも、私がLiNKに来てからの自らの変化について聞いたとき、あいりさんの表情が変わりました。

「ここで初めて、自分が認められたと感じたんです」

母親が自分や兄のことを放置することが多かったこと。

兄からの暴力も母親に見逃されてきたこと。

そうした経験から「自分は誰からも認められない」と感じてきたこと。

これまでのことをLiNKで打ち明けたとき、かけられた言葉は、

「耐えてきて、えらいね」

というものだったのだそう。

「認めてもらえたことがすごくうれしくて、安心して『私はここにいていいんだ』と思えるようになりました」

涙ぐみながら私に話してくれるあいりさんをみて、彼女が踏み出せた一歩の大きさをひしひしと感じました。

札幌市2歳虐待死から浮き彫りになった、「はざまの存在」

あいりさんが新しい一歩を踏み出すきっかけとなった札幌市困難を抱える若年女性支援事業「LiNK」。

2021年、札幌市が設立しました。

その背景には、若い女性がなかなか支援に繋がりづらい実態がありました。

2019年、札幌市で池田詩梨ちゃん(当時2歳)が暴行を受けたうえに衰弱死し、母親とその交際相手が逮捕された事件がありました。

詩梨ちゃんの母親は、未婚の18歳の時に出産。

市から「特定妊婦(※若年・未婚・貧困などで子育てが難しいとされる妊婦)」と認定されていました。

保健師が支援をしていましたが、関係は薄かったといいます。

その後、虐待通告などが複数ありましたが、行政間での連携もとれず、母親との面談もかなわないまま…。

事態は進行して、ついに2歳の女の子が亡くなる、最悪な結果を招いてしまいました。

二度とこうした事件を繰り返さない…。

浮き彫りになった、特に支援につながりにくい10代後半から20代の思春期・若年期の女性たちの存在。

そんな“制度のはざま”に落ちてしまった女性の、セーフティーネットになれるよう発足したのが、LiNKです。

「家に居場所がない」

「思いがけず妊娠をしてしまった」

「きょう泊まれる場所がほしい」・・・

寄せられる相談は、ジャンルにとわず、様々です。

心の中でしまっておきがちな不安を、漠然とでもいいから打ち明けてほしい、それがLiNKの願いです。

電話(011-728-1255)での相談のほか、LINEやXでの相談も可能で一歩を踏み出すハードルが低くなっています。

また、相談を受けるだけではありません。

相談者と同世代で、支援者として奮闘する女性職員にも密着しました。

「ちょっとお姉さんくらいのつもりで」ススキノの「夜回り」続けるワケ「助けて」を言えない人たちへ自ら働きかけるメッセージ(リンク)

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