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『スプートニクの恋人』『現代思想入門』深い悩みから抜けられない時に。自分を取り戻すためのおすすめ書籍

  • 2024.1.18

さまざまなジャンルで活躍する、同世代女性のおすすめ書籍をご紹介! 今回は、イエローページセタガヤ店主 尾辻あやのさんが推薦する2冊です。

自分からいったん離れる。遠くから大きく捉える

辛い出来事や悩み、脳内が袋小路に陥って、泣くのにも怒るのにも飽きたら、本を読んでいったん「自分」から離れるのが効果的だ。一つ目のおすすめは「他人の物語」に身を(正確には頭を)任せること。村上春樹の『スプートニクの恋人』では迷える登場人物たちが、精神的にも肉体的にも遠いところへ旅をし、最後は戻ってくる。リアルなご飯の描写や仕事風景に旅の支度、村上氏ならではの日常(や非日常)のディテールが悩める私もあちら側に連れていってくれる。「いろいろと大変だったけれど、それでもなんとか帰ってきた」と物語は終わる。現実は何も変わらないけれど、混乱していた自分が随分遠くに感じられるのだ。 二つ目は、遠いところからいっそ大きく捉えてしまうこと。千葉雅也の『現代思想入門』はその柔らかでリアルな語り口が心地よく、気楽に読み進めることができる。れっきとした哲学の本であるが、哲学はつまるところ人間についての話なのだ。「グレーゾーンこそが人生のリアリティ」と、哲学の解説を通して、悩み苦しみ揺れる心そのものを、冷静に肯定してくれているように思える。何が起きてもどうせ最後は自分で決める。必要なのはあれをしなさい的な自己啓発本でも、他人の「がんばって」でもなく、ただ自分から離れ自分に戻る時間なのだ。

『スプートニクの恋人』 村上春樹著/講談社文庫

22歳の春、すみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進むような、激しい恋だった。恋に落ちた相手は17歳年上で、結婚していた。さらにつけ加えるなら、女性だった。ミステリアスなラブ・ストーリー。

『現代思想入門』 千葉雅也著/講談社

複雑な世界の現実を高解像度で捉え、人生をハックする、「現代思想」のパースペクティブ。物事を二項対立で捉えない。人生のリアリティはグレーゾーンに宿る…現代思想の真髄をかつてない仕方で書き尽くした「入門書」の決定版。


今回、おすすめ書籍を教えてくれたのは…
尾辻あやのさん NPO法人でコミュニティカフェの運営、ケータリング事業の立ち上げや運営などを経て、2020年、昼は八百屋、夜は居酒屋の「イエローページセタガヤ」をオープン。

『八百屋の野菜採集記』 ¥1,760/大和書房

野菜を買うことは、数百円で叶う小さな小さな冒険! 昼は八百屋、夜は居酒屋を営む東京・世田谷の人気店「イエローページセタガヤ」の店主が春夏秋冬それぞれの季節に合った野菜の楽しみ方を紹介。野菜本来の味を引き出すレシピ付き。

※InRed2024年1月・2月合併号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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