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「正直メンタルきつかった」東京都内の20代女子が“たった3カ月”で【ウーバーイーツ】配達員を辞めたワケ

  • 2024.1.17

本当に稼げる?フードデリバリー配達の実態

2020年春からの新型コロナウイルス禍でニーズが急拡大した、自宅や職場へ飲食物を届けるフードデリバリー。コロナが5類感染症に変更され外出などの自粛要請が解除された今も、街では多くの配達員の姿を見掛けます。短い時間から簡単に始められる副業として、幅広い世代の人が参入したフードデリバリーの配達員ですが、配達する先々にはさまざまなドラマが。そして必ずしもラクして稼げるとは限らず、中には早々に引退する人もいるようです。

かつて「Uber Eats(ウーバーイーツ)」の配達員として東京都内を駆け巡ったある20代女性の場合、わずか3カ月ほどで“卒業”の道を選びました。「今振り返ると、正直メンタルきつかったですね…」と渋い表情を浮かべる彼女の体験とは――?

「自転車ハ譲ラナイ…」外国人男性とのバトル

フードデリバリーの配達員として働く女性のイメージ(画像を一部修正しています)
フードデリバリーの配達員として働く女性のイメージ(画像を一部修正しています)

現在、都内のIT系企業に勤めるA子さん。ウーバーイーツの仕事を始めたのはコロナ禍真っただ中の2020年9月です。コロナ禍で本業がフルリモートになり、仕事が終わった夜の時間を生かせないかと考えたのが配達員を始めるきっかけでした。

動機は、お金を稼ぎたいというよりも「ダイエットのために運動したい」。コロナ禍でスポーツジムが軒並み休業となり、体を動かせる場を探していたのです。運動にもなってお小遣いほどの収入が得られるなら一石二鳥。真夏は熱中症が怖いので避け、秋の気配を感じ始める頃に満を持して配達員デビューしたのでした。

当時、フードデリバリーの足は自転車が主流。A子さんは自前の自転車を買うのではなく、都内で無数に設置されている「シェアサイクル」サービスを活用しようと思い付きました。

しかし考えることは皆同じ。デリバリーサービスの需給が活況を呈するとともに、街ナカのシェアサイクルもほとんど「貸し出し中」か電動アシストの「充電切れ」ばかりという争奪戦状態に。さらには思いがけないトラブルが待っていました。

シェアサイクルは専用アプリから事前に自転車を予約する仕組みですが、ある日A子さんが予約済みの1台を取りに向かうとなぜか、まさにその自転車のサドルに腰掛けて動こうとしないインド人らしき男性の姿がありました。

「あの、この自転車は私が予約したものです。ほら、車体番号も合っています」

スマートフォンの予約画面を見せながら説明を試みるA子さんですが、「イイエ。コノ自転車、私ガ先ダッタ。私ガ使イマスネ」と譲ろうとしない男性。

しかしA子さんがアプリ予約している以上、その男性は自転車を作動させられないシステムのはず。その旨を何度話しても「チョット、何言ッテルカ分カラナイ」と返されてしまい……。根負けしたA子さん、「もういいです。譲ります」と折れ、自身の予約をキャンセルする羽目になりました。

男性は、「配達、新人?ガンバッテ!」と笑顔でA子さんを励まし、さっそうと自転車に乗って去っていったといいます。

タワマン敷地内で迷子に…「早ク」催促の連絡

A子さんが担当していたエリアは、渋谷を拠点とした東京都心。港区の麻布や六本木といった一等地へもたびたび出向きました。

フードデリバリーを利用するのは主に、金銭的に多少とも余裕のある人たちなのでしょう。配達先には当然のように高級タワーマンションもありました。

1棟でも十分な威圧感があるというのに、複数のタワマンがそびえ立つ超セレブなムードただよう敷地内で迷ってしまい、オロオロと途方に暮れることも。

配達リュックの中で高級中華料理が冷めゆく中、中国人と思われる依頼主から「今、ドコイルカナ?」「早ク来テホシイナッ」と催促の通話連絡が入ったことも。何とか部屋を見つけ出し、ああ絶対に怒られる……と腹を決めてインターホンを押したところ、意外にもチップを握らせてくれる優しい依頼主でした。

緊張や冷や汗ものの体験で少しずつ疲労が蓄積させていたA子さん。この頃、決定的に「メンタルがきつく」なる出来事がありました。配達員としての彼女が、依頼主から唯一の「BAD評価」を受けた案件でもあります。

すでに何件かの配達をこなしたある夜、そろそろ業務を上がろうと思っていたタイミングで舞い込んだ依頼。青山~表参道エリアへ、フラペチーノを1杯だけ運ぶ仕事でした。

「こんな時間に(泣)。これ届けたら今日は帰ろう」。「それにしてもフラペチーノ1杯でデリバリー……、お金持ちな人って感じな」。自転車をこぎながら急な坂を上っていたときのA子さんの心情です。

配達方法は「置き配」という指示でした。特にコロナ禍では対面接触を敬遠して「置き配」を指定する依頼者が多かったそうです。当該の部屋に着いたA子さん。とはいえフラペチーノ1杯を地べたに置くのは何だか悪いな……。そうだ、ドアノブに袋を引っ掛けてあげよう――。

「心が折れた(泣)」親切心が完全に裏目に

フードデリバリーの配達員として働く女性のイメージ(画像を一部修正しています)
フードデリバリーの配達員として働く女性のイメージ(画像を一部修正しています)

親切心のつもりで、気を利かせてレバー式のドアノブに袋の持ち手を引っ掛けて、配達完了の通知をアプリから送りました。

部屋の前を去り、下りエレベーターの呼び出しボタンを押したところで、先ほどの依頼主がドアを開ける音が。ガチャリ。その途端、「ベコーーーン」という世にも不幸な音がフロアの廊下に響きました。A子さんがドアノブにフラペチーノの袋を引っ掛けたせいで、依頼主がレバーハンドルを回した勢いでフラペチーノの袋が地べたに落下してしまったのです。

そのままぼう然と下りエレベーターに乗って立ち去るA子さん。アプリに届いた「BAD評価」。親切心がもろに裏目に。その日は家に着くなり、無言で布団へ直行しました。

「ほかにも急に雨が降り出したときとかは、雨具の用意もしてなくて全身ずぶぬれになりながら配達しましたね。あと、さっき話したように電動アシスト自転車の充電が切れてしまうことがあって、そうなると自転車はもはやただただ重いダンベル状態で、徒歩より移動が遅くなるんです。その他もろもろ、正直かなりメンタルきつかったですね……」

ダイエットのつもりで始めた配達員でしたが、つらいことがあると“自分へのご褒美”としてスイーツを大量買いてしまい、体重も一向に減らず。「お小遣いがためられたわけでもないし……、でも社会経験としてはやって良かったと思うので、プラマイで言えばギリで“プラ”って感じですかね」。

※ ※ ※

コロナ禍では配達員を本業にし、1か月に数十万円を稼いでいるといった報告もSNS上では散見されましたが、配達員1本でやっていくには相当の体力と精神力が求められるようです。

とはいえ「人間関係のストレスなく、自分の裁量で休みを取ることもできる」などのメリットも聞かれる仕事。A子さんも「社会経験になった」と話している通り、一度は挑戦してみる価値はありそうです。

(LASISA編集部)

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