間違いなく「トラブルになったら面倒」
「社内恋愛」「職場恋愛」を経験したことがある人はどのくらいいるのでしょうか。ウェブサイト運営などを行うスタジオテイルが2023年、20~50代の独身男女計298人を対象に行ったアンケートによると、「職場での出会いを求めている」人の割合は全体の約4分の1に当たる27%。男女別では男性が35%、女性が17%と、男性は女性の倍も多くなっています。一方で、否定派からは「トラブルになったときに面倒」(30代女性)といった懸念の声も聞かれます。
職場恋愛は、恋人と毎日同じ空間にいられる、お互いの予定を把握しやすい、仕事でもプライベートでも励まし合える、共通の知り合いが多いのでいざというとき相談相手を見つけやすい……といった良さが想像できます。
一方で前述の通り、ひとたびトラブルに発展したり泥沼の破局に至ったりすれば、仕事にも悪影響が出かねず、極めて大きなリスクを伴うことは頭に入れておいた方がよさそうです。
顔を合わせる時間が長いからこそのメリット・デメリットを互いに承知した上で交際を始めないと、後で痛い目を見ることになりかねません。東京都内に住むとある20代の女性会社員は、実に不幸な職場恋愛の末路をたどったと話します。
優しい先輩…気づけば虜に
20代の女性会社員A子さんが職場恋愛を経験したのは、社員数が数十人規模のウェブ系制作会社でのこと。当時の新卒採用はA子さん一人で、一番年の近い同僚は3歳上の男性スタッフBさん、他の社員は全員30代以上という年齢構成でした。
同世代ということもあり二人は仕事に関する悩みやプライベートについて打ち明け合うようになり、半年を過ぎる頃には交際に発展しました。業務の進捗(しんちょく)が思わしくなければ可能な範囲で分担したり、参考になる文献をシェアしたりと、仕事にプラスの面も少なからずあったといいます。
Bさんはとても頭のキレるタイプで、社内での成績も良好。今の会社で修業を積んで、いずれは同業大手への転職を考えているとA子さんに話していました。物事の察しや要領が良く、仕事でもデートでも相手の喜ぶことを先回りして実行してくれる姿に、A子さんはメロメロになっていきました。
「私が食べてみたいと話した人気のスイーツを後日買ってきてくれたり、1日がかりのデートプランを練ってサプライズのプレゼントまでくれたり……。まさに“お姫さま扱い”という感じで、最高に楽しかったですね。仕事も、彼がいるから頑張ろうとモチベーションになっていました」(A子さん)
さらに、Bさんの父親は国内有名企業で部長級以上の役職に就いているエリートとのこと。いわゆる“太い実家”持ちであることが判明しました。A子さんの胸はいや応にも高鳴りました。
職場では当然ながら普通の同僚同士として振る舞い、他の社員には気づかれてはいないはずの関係。しかしながらA子さんは、このままずっと彼といたいから職場に知られてもいいや、とどこかで思うようになっていました。
仕事終わりに、彼を含む同僚数人で飲みに行くこともしばしばあったとのこと。そこでA子さんは、良からぬ話を耳にすることになります。
先輩社員が放った不穏な一言
「そういやお前、あの元カノとは本当にちゃんと切れたのかよ?」
ある夜の飲みの席で、30代前半の男性社員がニヤニヤしながらBさんにけしかけました。「だってお前たち、結婚の約束までしてたんだろ?」
聞けばBさんには、A子さんが入社する直前まで長く付き合った学生時代からの恋人がいたとのこと。お互いに就職して何年かがたち結婚が視野に入ってきた頃、しかし彼女は相談もなく、米国への1年間の留学を決意。突然の話に難色を示したBさんに彼女は、
「お互いにとって20代の大事な1年間だから、Bくんは私を待っていなくていいよ。私もあなたを忘れるよう努力する」
と言い残して去って行ったのだといいます。
「いや先輩、もう全然切れてますよ。それに俺もまだ若いので、もっと世の中のことを知りたいというか」
と笑って答えるBさん。その回答にA子さんがホッと胸をなで下ろしたのもつかの間、先輩社員の言葉に背筋がゾッと寒くなります。
「何だよお前。要は今のうちにもっと遊んでおきたいってことだろ?春になって彼女が帰ってきたら、どうせまたよりを戻すって」
春になって彼女が戻ってきたら――?いや、そんなはずはない。私たちは仕事もプライベートもうまくいっている。それに職場で一日中、一番近くで彼を見続けているのはこの私だ。元カノより私の方が若いし、彼も私に夢中のはず。
A子さんは自分自身に言い聞かせ、「え~Bさん、本当はどうなんですか~?」と軽い相づちを挟むことでその場を何とかやり過ごしました。
耐えきれず…仕事中に思わず暴言!
結論から言うと、Bさんは翌年の5月頃、元カノとよりを戻しました。それもA子さんときっちり別れるでもなく、自然消滅を狙うようなずさんなやり方で。裏では元カノと頻繁に連絡を取り、隠れて何度も会うを繰り返していました。
発覚したのは、疑念を抑えきれなくなったA子さんがBさんのスマートフォンをのぞき見してのこと。スマホにロックも掛けない適当さに、「この人は本当に私のこと何とも思っていなかったのか」と抑えようのない怒りがこみ上げてきたといいます。
決定的な決裂を経て、同僚同士という振る舞いも維持できなくなってしまったA子さん。業務に関する打ち合わせでもBさんと話すことが苦痛になり、ある日われを失い、
「もうさっさとこの会社を出て行ってよ!どうせ大手に転職するつもりだって前に話していたじゃない!」
と、皆の前で叫んでしまったそうです。あ然とする同僚たち。何とか平常心を保とうと引きつった作り笑いを浮かべるBさん。A子さんはいたたまれなくなり、打ち合わせを飛び出してトイレに1時間ほど籠城。そのまま早退し、2日間有給を取って寝込みました。
「転職希望だということは同僚や上司にも話していなかったみたいなので、さすがに悪かったでしょうかね……。でも私も錯乱状態だったので……。その後1か月後くらいにBさんが別の部署に異動になって、まあ少人数の会社なんで同じフロアでしたけど、さらに何か月かした頃ひっそり転職していきました。聞いたこともない、業種違いの小さい会社でしたね。今もそこに勤めているのかは知りません」
A子さん自身は計5年間同じ会社に勤め、今は別の中堅企業に移っています。Bさんが去ってから1年くらいはBさんの情報を探してSNSを検索する癖が抜けませんでしたが、元カノ(=本カノ)と結婚したという報告をFacebookで確認して以降、今度こそ本当にどうでも良くなって吹っ切れたそうです。
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冒頭に紹介したアンケート調査では、「職場に出会いを求めていない」とする人たちは以下のように答えていました。
「対人関係を悪化させたくはないので、うまくいかなかったときのことを考えると、職場内では恋愛を持ち込みたくはない」(20代男性)「トラブルになったときに面倒なイメージ。恋人を知っているから職場の人に相談もしてしまうので、知りたくもない情報を周りに広げてしまう」(30代女性)「職場は仕事をするための場で、恋愛などする場所ではないので、出会いや恋愛を求めるならプライベートでしてほしい」(50代女性)……
良い面と悪い面のコントラストがあまりにも鮮烈な「社内恋愛」。恋は気づけば落ちてしまうものとはいえ、良い年をした大人としてできる限りの分別を付けたうえで一歩を踏み出すべきでしょう。
(LASISA編集部)