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「転職回数が6回もある…」そんな人が応募書類で人事担当者の懸念を払しょくできる"退職理由"の書き方

  • 2024.1.11

30代後半から40代の人が転職活動をするとき、「転職回数が多い」などのネガティブ要素がある場合はどうすればいいのか。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんは「ネガティブ要素は誰にでもある。その打ち返し方にはセオリーがあり、その通りに返すことで採用人事の懸念は払拭できる」という――。(第3回/全5回)

※本稿は、中谷充宏『30代後半~40代のための転職「書類」 受かる書き方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

ルーペで履歴書を見る手
※写真はイメージです
今の会社に居続けられる保証はない

日本を代表するエクセレントカンパニーでも終身雇用を維持するのは難しい時代で、中高年を対象にリストラを実施している企業もたくさん出てきました。

またジョブ型という新しい雇用スタイルも出てきて、年功序列型の制度の下で働いてきた中高年には、更なる逆風が吹いています。

「自分には派手な実績や経験もないから今の会社にしがみつかなくては」「転職する方がリスクが高い」と考え、何も行動を起こさないというのはごく自然な流れです。

とはいえ、国も解雇の金銭解決導入を検討し始めるなど、安穏と今の会社に居続けられるとは保証できない時代に入っていきます。

チャンスやアクシデントはいつ巡ってくるかわかりません。そういった観点からも、転職の準備は進めておくべきと考えます。

ハイスペックの人でも落とされる

今の会社でバリバリ仕事ができ、同期と比べて昇格・昇進も早い方だという人は、きっと仕事上のスキルは高いのでしょう。

ただ、実績や経験、能力があっても、それらを採用選考の工程できちんと伝えなければなりません。

このようなハイスペックな人が落選するシーンを見てきましたが、これは採用人事にちゃんと伝わっていない、つまり自分をプレゼンする「転職スキル」が圧倒的に不足しているからなのです。

「ネガティブ要素」は誰にでもある

「いやいや、私は同期よりも出世が遅い方だし、そもそもそんなプレゼンするほどの実績がない」、もしくは「(休職、失業など)ブランク期間があるから」、「非正規での勤務が長いから」と、転職に向き合えない人達もいます。実はこういった人達の方がマジョリティで、何かしら「ネガティブ要素」を持っているけれども、それを打ち返す術を知らないので、そこで止まってしまっています。

ネガティブ要素をそのまま伝えるだけではダメ

ネガティブ要素をそのまま伝えるだけではダメなのは、おわかりでしょう。

例えば、病気を患ってしまい、キャリア上のブランクがあったとしましょう。

これは事実なので意図的に隠ぺいするのは、経歴詐称になりますので、もちろん良くありません。

ただ、多くの応募者や社員を見てきた採用人事は、「大病を患った人はごく普通に社会に存在する」と見ています。

つまり、その病気が入社後の仕事にどのように、どれくらい影響するのかを知りたいわけです。勤務上問題がないことを丁寧に説明すれば良いのです。

ネガティブ要素対処のセオリー

要素ごとの具体的な打ち返し方については後述しますが、セオリーは下記のとおりです。

①「不利になりそうだから」と事実を歪曲わいきょくしたり、隠ぺいしない

②それをどう捉えているのか、自身なりの解釈を述べる

③勤務上支障がないことを証明したり、入社後に粉骨砕身の思いで頑張るといった強い意思表示で、人事の不安を取り除く

それではさっそく、ネガティブ要素を打ち返す方法を解説していきます。

転職回数が多い場合はどうするか

職種や業界によって違いますが、ミドル世代なら概ね5回以上なら多い方だととらえてください。

2~3回程度なら気にすることはありません。

皆さんに職業を紹介してくれる転職エージェントが取り扱う求人には「40歳以下なら転職回数3回まで」といったように詳細な条件が付されています。

採用人事はこういった条件に抵触する人を「我慢が足りない」「責任感が乏しい」と見ていて、「当社に入社しても、すぐ辞めてしまうのでは?」と懸念しています。これを打ち返さないと前には進めません。

なのでやはり転職回数が多いのは不利に働きます。

最近も、経験、実績、実力とも申し分ないのに、落選が続くという相談者がいましたが、転職回数の多さがネックで、そもそもその人の内容を見てもらう工程まで進めなかった、ということがありました。

やみくもな応募はお勧めしない

一方でこういった裏事情を知らずに「実力さえあれば、どこに応募しようとちゃんと見てもらえるはず」とやみくもに応募件数を増やす人がいますが、秒殺(即不採用)が続くと心を折られるのでお勧めしません。

公開していない条件が付されている可能性が高いので、応募前に確認しておきましょう。メールや電話で「私は転職回数が6回あるのですが、応募可能でしょうか?」と伝えるだけです。

採用人事の懸念を払拭する

「当社に入社してもすぐ辞めるのでは?」という採用人事の懸念点を払拭する説明をするしかありません。今までの退職理由が下記のような場合は納得性が高いので、堂々と伝えましょう。

・会社が倒産した
・事業所が閉鎖になった
・先行きが不安で早期退職制度に乗っかった
・家庭の事情で全国転勤ができなくなった
・キャリアチェンジを図った

また、20代に転職回数が多いのなら「若かりし頃は、どういった仕事に就いたらいいか、わからずに若気の至りで」といったフレーズが使えます。

「多くの職場を経験してきたので環境適応能力が高い」とか「仕事覚えが早い」とアピールする人がいますが、採用人事はそうは見ていないので疎まれる危険性が高いです。絶対にNGとは言いませんが、ほどほどにしておいて、既述の懸念点を払拭することに集中しましょう。

赤い人のアイコン ブロックを指す手。
※写真はイメージです
セオリー通りに打ち返す
OK! 通る文例

①職歴を振り返ってみると転職回数が多いと実感するところです。
②新卒入社した山田精密機器株式会社と前職のABCテクノロジー株式会社は自己都合で退職しましたが、それ以外は業績不振、事業所移転による通勤困難といった、私の力ではどうしようもなかった事由によるものです。
③40代前半となりましたし、職場を転々とするのは本意ではありません。今後はしっかりと腰を据えて働いていきたいと思っております。

POINT

①セオリーどおり、今までを自分の言葉で振り返る
②自己都合で退職したこともあるが、他はそうではない点を説明しておく
③自身の置かれた立場を踏まえて、採用人事の懸念点を払拭するよう、今後に向けての姿勢や思いを宣誓しておく

転職回数が少ない場合も懸念は持たれる

新卒入社した会社でずっと勤務していて、転職した経験がないというのはもちろん、この年代で1回、2回程度なら少ないと言えます。これ自体に明確なデメリットはないと考えていいでしょう。

中谷充宏『30代後半~40代のための転職「書類」 受かる書き方』(秀和システム)
中谷充宏『30代後半~40代のための転職「書類」 受かる書き方』(秀和システム)

ただ、例えば1社のみの勤務だと、「その会社独自の仕事の進め方や社風に染まっていて、当社に合わないのでは?」というのが採用人事の懸念点です。

さらに「なぜその会社を辞める(辞めた)のか?」、その理由を知りたいと思っています。ただ、他のネガティブ要素とは明らかに違うのでサラッと触れる程度か、聞かれたら答える程度でいいでしょう。

転職回数の多さ、少なさの視点から考えると、少ない方が優位でしょうが、絶対的な強みであるわけではない点は肝に銘じてください。

また既述の2つを詳細に説明しようとすると、「何か重大なことを隠しているのでは?」と逆に疑心暗鬼にさせてしまう危険性があります。

2つを説明すればいい

他のネガティブ要素と違って、打ち返さないと絶対にNGという訳ではありませんが、あえて言うと、他社でもやっていける柔軟性や適応能力が備わっていること、長年勤めた会社を退職した理由の2つを説明すれば良いということになります。

例えば前者の場合は次のような説明をします。

・1社勤務といえども配置転換を複数経験し、どこでもうまくやってきた
・営業の後、管理部門を経験するなど、違う職種にも対応してきた
・様々なプロジェクトに参画し、他社の方々とも協業してきた

後者の場合は、前節のような退職理由を説明します。

・会社が倒産した
・事業所が閉鎖になった
・先行きが不安で早期退職制度に乗っかった
・家庭の事情で全国転勤ができなくなった
・キャリアチェンジを図った

転職経験が乏しいこともあって、つい退職理由に比重を置きがちですが、「1~2回転職するなどごく普通」と採用人事は見ていますので、ここはサラッとで済ませて他のアピールに尽力すべきです。

OK! 通る文例

①新卒入社から現在までずっと今の会社に勤務し、育てて頂いた恩もありますから愛社精神も強く、定年まで働き続けたいという思いがあります。
②ただ、業績不振で早期退職制度等のリストラが始まり、先輩や上司が退職していくのを目の当たりにして、転職を考えるようになりました。
③初めての転職で不安や戸惑いもありますが、心機一転、新天地で頑張りたいと思います。

POINT

①セオリーどおり、今までを自分の言葉で振り返る
②今までを捨てて、なぜ今転職なのか? 転職に至る経緯を説明しておく
③本音を伝えつつ、ここも今後に向けての姿勢や思いを宣誓しておく

中谷 充宏(なかや・みつひろ)
キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)、社会保険労務士
同志社大学法学部法律学科卒。新卒入社したNTT(日本電信電話株式会社)勤務後、1社転職を経て2004年にキャリアカウンセラーとして独立。マンツーマンで依頼者の転職を支援する「就職&転職のパーソナルキャリアコーチ」。米国MBAホルダーや代表取締役といったエグゼクティブ層から、転職回数が多い等のハンデを背負った層まで、幅広い方々の転職支援の実績がある。また社会保険労務士として人事採用コンサルティングの経験も豊富で、人事部長として企業人事を一任されるケースもあり、生々しい採用現場や面接シーンも熟知。 著書に『20代~30代前半のための転職「面接」受かる答え方』、『30代後半~40代のための 転職「書類」受かる書き方』『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』『20代~30代前半のための転職「書類」受かる書き方』(秀和システム)等多数。M&Nコンサルティング

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