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「カワイイ文具」人気拡大中 デジタル時代も増えるユーザー、大手各メーカーの取り組みは

  • 2024.1.6
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何でもスマホで完結する時代になぜ?

「カワイイ文具」人気拡大中 大手各メーカーの取り組みは
「カワイイ文具」人気拡大中 大手各メーカーの取り組みは

マイボイスコムが2023年9月に9854人を対象に行った「スマートフォンに関するアンケート調査(第17回)」によると、日本国内におけるスマートフォンの所有率は91.5%。2011年2月から行われている継続調査で一貫して上昇を続けています。通話や写真撮影はもちろん、時計・アラーム、電話帳・アドレス帳、チャット・トーク、ゲーム、電子書籍、メモ帳、SNS、音楽再生など、日常で要するありとあらゆる機能をスマホがカバーする状況はご存じの通りです。

ちなみにカレンダーやスケジュール管理にスマホを活用している人は49.8%。また別の調査では、紙の手帳を使用している人は42.5%(クロス・マーケティングが2022年11月、1100人を対象に実施)となっており、かつては誰もが持ち歩いていた紙の手帳・メモ帳がスマホに置き換わっている状況が見てとれます。

そんなデジタル全盛期にあって、なお人気の衰えないものが「文房具」です。むしろ近年、ますます注目が高まっているようにさえ見受けられます。ワードごとの検索推移が分かるサイト「Googleトレンド」で調べると、スマホの普及が急速に進んだ2010年代後半以降、実は「文房具」の注目度はそれ以前よりも増していることが分かります。

文房具人気に応える形で始まり、さらには人気のけん引役となった恒例イベント「文具女子博」(2017年12月スタート)の名からも分かるように、購入層の中心ともなっているのが女性たち。インスタグラムなどのSNSで「#手帳の中身」「#手帳デコ」などと検索すると、シールやカラフルなペン、スタンプ、イラストなどで彩られた魅力的な投稿が数十万件とヒットします。

こうしたニーズを背景に、大手文具メーカー各社も女性消費者をより意識した商品展開に近年力を入れています。

【キングジム】コト消費に見いだすアナログ人気

カードサイズのマスキングテープ「KITTA」も人気シリーズの一つ
カードサイズのマスキングテープ「KITTA」も人気シリーズの一つ

オフィス用品、事務用品などを手掛けるキングジム(東京都千代田区)は「スタイル文具」と呼ぶデザイン性の高い商品を数多く展開しています。

ブランド名は「HITOTOKI」。ほんの一手間を加えることで暮らしの中の“ひととき”が楽しくなる文房具を――というコンセプトで2017年に立ち上げました。これは「カメラ女子」などサブカルチャー的な文化が再流行していた時期とも重なります。

例えば貼ってはがせるマスキングテープ「SODA」は、太さ10~30mmの4種類で合計80種類近くのデザインをが展開されています。水彩画のように繊細な植物画や、コミカルな表情の動物、レトロなムードただよう少女、カラフルなスイーツなど、女性ユーザーを中心に心くすぐられるデザインが豊富です。

同社の広報担当者は、

「かわいい文房具はこれまでも市場にありましたが、2015年に発売した当社の『オトナのシールコレクション』や2016年に発売開始した切れてるマスキングテープ『KITTA』が好評を得たことで、大人も欲しくなるようなデザインを求めている人は多いのではと社内で検討し、商品点数を増やしてきました」

と説明します。

同社の従来の主力商品は、どこのオフィスでも見掛けるあの分厚いファイル「キングファイル」。しかしペーパーレス化などの影響で売り上げは近年、全盛期の半分ほどにまで落ち込んでいました。

一方、ペンやメモ帳、付箋といった手近な事務用品は、会社が一括して購入する職場であっても、あえて好みのものを自分で選んで買う人が少なくないという傾向に着目。「持っているだけ嬉(うれ)しくなったり、もっと集めたくなったり、使うほどに愛着が湧いたり……」というHITOTOKIのブランド・コンセプトに落とし込んでいきました。

「デジタル時代とは言われますが、だからこそ『アナログで残していきたい』と考える人はむしろ増えていると感じます。

特に近年は“コト消費”などと呼ばれる、体験に価値を置く消費のスタイルが注目されているので『体験したものを記録に残しておきたい』『スマホのカメラロールに埋もれさせるのではなく、好きな写真を手帳に貼っていつでも見返せるようにしたい、シールなどでかわいくデコりたい』という考える人は多いのは自然なことではないでしょうか」(同担当者)

文房具は一つ一つが比較的安価のため、主力商品の売り上げ減の全てを補うことは難しいですが、デジタルメモ「ポメラ」をはじめとする電子文具と併せて「売行きは好調」(同担当者)だと説明します。

【シヤチハタ】カラフル文具が秘める今日的ニーズ

色とりどりのカラーペンやスタンプ台には、それぞれ「牡丹色」「瑠璃色」など趣ある日本の伝統色の名前が付けられている
色とりどりのカラーペンやスタンプ台には、それぞれ「牡丹色」「瑠璃色」など趣ある日本の伝統色の名前が付けられている

「Shachi・iro」というブランド名で、さまざまなスタンプやカラフルなスタンプ台、カラーペンなどを展開しているのは、ネーム印などでおなじみの「シヤチハタ」(名古屋市)です。

紅色、牡丹色、山吹色、朽葉色など、日本の伝統色を採用したスタンプ台「いろもよう」や、植物や鳥、猫など一つで13種類のかわいらしい柄が楽しめる「回転デコレーションスタンプ」、日々の気分や体調などを記録するのに便利な「デイリーログスタンプ」など、過去5年間で30~40種類ほどを商品化してきました。

もともとスタンプ台からスタートした会社のため、インキの技術を生かしたカラフルな商品が多いことが特徴です。

シンプルだけどかわいくて、使いやすい……そうした商品のシリーズを本格的に打ち出したのは2005年頃から。一方、文房具の人気があらためて高まったきっかけの一つには、新型コロナ禍があったと同社担当者は振り返ります。

「おうち時間というキーワードが定着して、今日あった出来事を手帳に残しておこう、ライフログを付けてみよう、気分の上がる筆記具で手帳を彩ってみよう……と考える人が増えているようです。それに伴い、市場に出回る商品も増えていったと捉えています」(同担当者)

同社も従来BtoBが中心の企業ですが、2022年度はこうしたラインアップの商品が伸長。売り上げは過去5年間で最も好調だったといいます。

同社によると、カラフルな文房具の人気を支える今日的な理由は他にも。

一つは、老若男女を問わず浸透している「推し活」。推しをイメージした「推しカラー」のペンやスタンプ台を使って手帳・ノートをデコレーションする人もいるそう。

もうひとつは「メルカリ」に代表されるフリマアプリ。出品した商品が売れた際、手書きでお礼のメッセージを添えるのが主流になっているため、そこにペンやスタンプを使う人が多いようです。

※ ※ ※

両社とも、ビジネス用途の製品開発で培ってきた技術・特色を生かした上で、現代的な個人需要に併せた商品展開を広げている点が特徴的。そのため「かわいいだけでは駄目。必ず便利でなければ」と口をそろえます。

かわいさと便利さの両面で進化を遂げる「文房具」は、2024年もさまざまな新商品の登場でファンたちを楽しませてくれそうです。

(LASISA編集部)

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