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長尾智子さんの愛用する台所道具① アンティークの銅片手鍋

  • 2024.1.4
フランスの蚤の市で5 個セットを購入。出番が多いのは直径14㎝で「何しろ熱伝導がいい。ゆで卵は沸かして3 分、余熱で3 分」と長尾さん。時が経てばくすむものと割り切れば手入れは洗って乾かし、たまに磨く程度で。

最小限は何か、何があれば暮らせるかを考えた。

「あんまり変わってないなぁ、と思いつつ……でも、しばらく使わなかったものをまた掘り出して使ったりしてますね」と、今回のチョイスを振り返った長尾智子さん。シンプルで機能的な調理器具、表情のある器暮らしの中に加えたくなる道具の数々。ここ数年、久しぶりに手に取るきっかけになったのは、「作る量の変化だと思う」と実感を語る。

「何でもコロナの影響と言ってしまうのは嫌なんですが、やっぱり少なからず影響はあって、大きな器とか鍋は使わなくなった。人が集まる機会がなくなったので、料理を提案するときも、わりとこぢんまりした感じにはなってきたように感じます」

その代わりにフォーカスするのは、「自分が今日、何を食べるか」。必要な鍋や器は小さくなり、数も絞られていった。2 、3 個の卵を茹でる銅鍋は、ミルクパン程度の大きさ。ポタージュや煮物を仕立てるにも、浅鍋で十分事足りる。「最小限は何か、最低限何があれば暮らせるか、ということを考えるようになったと思う」と長尾さん。でも、と続ける。

「数は持つ、というのかな。鍋だけでなく、たとえばムーラン・ア・レギュームのように、この用途では必ず使いたいという道具はあるので。整理整頓や多少手放したりはするけれど、〝断捨離〞はしない」

ようやく日常が戻ったといわれる昨今。しかし、この間に得た感覚は、長尾さんにも、そして私たち誰の中にも残り、日々の思索は続いていく。

「料理も、以前はドンと作りたい感じがあったけれど、今は作りすぎず、ちょっと足りないくらいでちょうどいいんじゃないかと。たまに人を招いても、ご馳走ではなく、いつもより少し量を作るという感じ。そのなかで、新しいことを試したりしています」

長尾智子料理家

著書に『料理の時間』(朝日新聞出版)、『ティーとアペロ』(柴田書店)など。オンラインストア『SOUPs around the table』では、オリジナル商品のほか、季節ごとの日常にフィットする道具や器を紹介している。

photo : Kohei Yamamoto text : Michiko Otani edit : Wakako Miyake

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