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『アンネの日』演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんの一押しステージ情報!

  • 2024.1.3

演劇ジャーナリスト・伊達なつめさんのおすすめ作品をご紹介。今回は、serial number10『アンネの日』をピックアップ。


女性を取り巻く環境にも考えが巡らされる作品

生理にまつわる思い出は、女性なら誰もが抱えていることだろう。私が真っ先に思い出すのは、小学4年の時に女子だけが集められ、保健の先生から生理についてのレクチャーを受けた時のこと。お話が終わって質疑応答になったので手を挙げ、「生理っていつまで続くんですか」と質問した。先生は「だから話したでしょ、個人差はあるけどだいたい1週間くらい……」と言うので、「いやそうじゃなくて、1回で終わるんですか、もっと続くんですか」と聞き直した。「そりゃあ、ずーっと続くのよ」と先生が答えると、「えええーっ!」と生徒たちからいっせいに驚愕の叫びの大合唱。先生は慌てて、最初から説明し直したのだった。
「ずーっとだなんてアバウトな」と一瞬思うけど、思春期から約40年間つき合うのだから、それはもう、ずーっとに違いない。詩森ろば作・演出『アンネの日』は、ある企業の生理ナプキン開発部が舞台。このプロジェクトの女性社員たちによれば、12歳で初潮を迎え、50歳で閉経した場合、一度も妊娠せず毎月順調に生理があったとして、その回数は38年×12=456回。1回当たり7日間とすると456×7=3192日。つまり約9年の年月を「女たちは股から血を流して暮らしている」。
登場する8人の女性たちは、未婚/既婚、子持ち/子なし、年齢やバックグラウンドもさまざまだ。各自が自分と生理について何らかのこだわりを持ち、そのモヤモヤを感情だけで片づけず、このようにデータ化しながら、蓄積された知見と培ってきた研究技術で、環境に配慮しながら生物学的な女性の機能の一助になることを目指して、自然素材による生理ナプキンの開発に奮闘する。ひとりひとりは等身大のリアルな悩みを抱える女性で、普通に熱くなったり控え目だったりするのだが、基本的には、当たり前のようにサクサクと理詰めで、プロジェクトを推進してゆく。主に理数系のその女性たちの姿が、ガチ文系の目には、ひたすら眩しくかっこよく映る。
ところがつい先日、日本では、理系女子は就職に不利といった古い観念がいまだにはびこっている、という新聞記事を読み愕然とした。男女のジェンダーギャップ146国中125位の国に住む女性の中で、働くリケジョ(という呼称に若干抵抗を感じるけどご本人たちはどうなんだろう)は、さらに負荷を背負わされているということ? いまだに!?
絶賛された初演からはや7年。女性を取り巻く環境は、少しは改善されていると実感できるだろうか。世の中の雲行きは怪しいけれど、目を逸らさずに見届けに行かねば。

イラスト=saaya

作・演出=詩森ろば
出演(50音順)=伊藤弘子(流山児★事務所)、葛木 英、真田怜臣、ザンヨウコ、橘 未佐子、林田麻里、瑞生桜子、李 千鶴
2024年1月12日(金)~21日(日) 下北沢ザ・スズナリ
(問)serial number TEL.070-3602-4357

文=伊達なつめ

※InRed2024年1月・2月合併号より。情報は雑誌掲載時のものになります。
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