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二分化する世界…日本は“欧米”と“中国・ロシア”を繋ぐ役割を求められている?

  • 2024.1.2

ananで連載中の堀潤&五月女ケイ子「社会のじかん」の特別編。欧米の先進国が世界を牽引する時代は終わりを告げ、中東やアフリカが勢いをつけ、世界は2つのアライアンスに分かれていく!?

アメリカと中国の枠組みの真ん中で、世界を繋ぐ。

2022年に起きたロシアとウクライナの戦争が今なお続いています。これにより明らかになったのは、国連の弱体化です。国連安全保障理事会は、そもそも自分たちが戦争当事国になるイメージを持ち合わせていませんでした。ロシアがウクライナに侵攻したときに、歯止めをかける機能を安保理が持っていないことに世界中が気づいてしまいました。国際秩序は乱れ始め、あちこちで武装勢力の活動が活発化しています。

最たるものがガザで起きているイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘です。国連は’23年10月に人道的休戦を求める決議案を圧倒的多数で採択。ところがイスラエルは「テロリストを擁護するのか」と明確に拒否。さらに、グテーレス事務総長の辞任を要求しました。先進的な国が国連総長を非難するような事態が起こることを誰も想像していませんでした。そのイスラエルをG7が支援しています。国連の常任理事国は第二次世界大戦での戦勝国。かつて欧州諸国に植民地支配されてきた国々は、「もはや国連を中心とする国際秩序を守る必要はない」と思うようになってしまいました。

9月にニューデリーで開催されたG20サミットに、中国とロシアの首脳は参加しませんでした。国連同様、G20も実質的には機能しなくなり、欧米の先進諸国で構成されるG7と、中露ら新興5か国を基軸とするBRICSに分かれることになると思います。BRICSは枠組みが拡大され、中東諸国なども加盟して将来的には20か国以上の規模になり、共通通貨を発行する案も出ています。’24年以降世界は、欧米を中心としたアライアンスと、中国・ロシアを中心としたアライアンスに二分され、国連に代わり、それぞれの地域で国際秩序を作ることになりそうです。日本はその真ん中で、それぞれを繋ぐ役回りを求められるでしょう。

その一例が、IPEF(インド太平洋経済枠組み)です。’22年5月にアメリカ主導で発足。インド太平洋地域の経済枠組みには中国や日本で作るRCEP(地域的な包括的経済連携)と、アメリカが抜けたTPP(環太平洋パートナーシップ)があり、IPEFは、その両方にまたがる大きな枠組みになります。中国は入っていませんが、中国との関係を念頭に緩やかな貿易枠組みを作ることが目的。IPEF基金を作り、環境対策や新しい産業の創出に役立てようとしています。日本はこの基金に約14億円を拠出予定です。

これまで日本は全てアメリカに倣うイメージがありましたが、ガザの問題では違うスタンスを示しました。G7がイスラエル擁護を訴えるなか、他の6か国が作った共同声明に日本は参加しなかったのです。安保理の11月の一時的な休戦決議案にアメリカは棄権しましたが、日本は賛成を表明。アメリカと違う意見を明示したことは、これまでの日本とは違うというメッセージ性があります。日本にとって中国は重要な貿易相手国ですし、地政学的にはロシアとも近い距離にあり、エネルギーの多くはアラブ諸国に頼っています。経済的にも安全保障の側面からも、どの国とも良い関係を保ち、経済交流をしなければ日本は生き残れません。

5月には広島でG7サミットが開かれ、世界に平和のメッセージを発信しました。G7の首長が広島平和記念資料館を訪れ、花を手向けました。諸外国に日本が被爆国であることが強く刻まれた。これを機に平和的人道支援国家として、中間的な立場を取りやすくなると思います。世界が二分される今、声高に分断を煽るのではなく、それぞれをそっと繋ぎ続けるというのが、日本の安定にも繋がります。

五月女ケイ子解読員から一言
被爆国、戦争をしない国として、物言えるようになった日本が戦争を止めることができるとしたら、こんなにうれしいことはありません。’24年は、日本人として自信を持って堂々と「戦争をやめよう」と言っていきたいと思います。

KEYWORD:G7広島サミット2023

被爆地である広島で平和について議論される。
このサミットでは核軍縮に関する共同文書「広島ビジョン」の発表など、世界平和をテーマにしたさまざまな取り組みが注目を集めた。核を保有する米英仏を含むG7首脳がそろって広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪問。先進国の指導者が被爆の悲惨な現実を知るサミットとなった。

KEYWORD:IPEF/RCEP/TPP

アジアと環太平洋の経済圏でも米中の綱引きが!
TPPの当初の目的は、環太平洋地域で中国抜きの通商ルールを作ることだった。その後、アジア主導の枠組みとしてRCEPができ、中国も含めた巨大な自由貿易圏が誕生。最後に影響力を増す中国に対抗するためアメリカが主導してIPEFが発足。ただし関税の引き下げや撤廃は協議しない。※はASEAN加盟国

ほり・じゅん ジャーナリスト。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX)などに出演中。スーダンを取材した写真展「#BlueForSudan」が2024年1月14日まで宮城県・多賀城市立図書館(9:00~21:30 TEL:022・368・6226)にて開催中。

そおとめ・けいこ イラストレーター。雑誌や書籍、広告で活躍。オンラインストア「五月女百貨店」では、楽しいオリジナルグッズを多数販売。カレンダーやポチ袋も好評発売中。使える面白LINEスタンプも各種展開している。

※『anan』2024年1月3日‐10日合併号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 取材、文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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