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店の歴史を後世に伝える『御倉屋』の庭木。ひみつの坪庭コレクション vol.02

  • 2024.1.2
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京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。

密やかに主人の想いを込める。 ―御倉屋―

出典 andpremium.jp

代表菓は旅奴。多くの文人墨客にも愛されてきた菓舗は、知らずに入ればなんの店かと思うに違いない。茶室を思わせる土壁や窓に、ヨーロッパの古いタイルを敷き詰めた床。ショーケースはなく、棚にさりげなく置かれた菓子を見て、ようやく和菓子店だと気づく。数寄屋大工として名を馳せた中村外二、晩年の作品のひとつである。
ガラスの向こうに見える坪庭は、建物と同時に作られた。常緑のカクレミノの木を主役に、大きさも色もとりどりの庭石と苔が景色をつくる。
「庭ができて30年。2022年、寿命を全うしたカクレミノに代わり、2代目となる3本の木が植えられました。庭師さん曰く『わしの頭の中には物語があります。真ん中の木が親。その根から生まれたのが手前のやつ。種が落ちて生まれたんが奥のやつ。どれかがまた30年育ってくれると思てます』と。祖父が作ったこの店を、母と私たちが守り、息子へと繋いでいこうとしている気持ちを、庭木に託してくださったのが嬉しくて」と3代目の妻、後藤昌子さん。思いが満ちる、静かな庭だ。

出典 andpremium.jp

屋号が描かれた扁額は菓子を愛した画家・堂本印象による。庭を眺めての一服も可能。
 『御倉屋』
京都市北区柴竹北大門町78
075-492-5948
9時~18時 毎月1日・15日、8月16日、1月2日・3日休

photo : Yoshiko Watanabe edit & text : Mako Yamato

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