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片付けられない人はクリエイティブ? 散らかった部屋で暮らす理由とは。

  • 2023.12.31
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年末や季節の変わり目に整理整頓しなくっちゃ、と急に部屋の片付けを始める人も多い。でもごちゃごちゃの部屋で暮らしていても平気な人もいる。片付けられない人の方がクリエイティブという意見もあって気になるのだが、実際のところはどうなのだろう。フランスの「マダム・フィガロ」誌のリポート。

片付けられないことは創造性、あるいは知性の表れなのだろうか?photography : ElegantSolution / Getty Images

「これまで乱雑な部屋で暮らしてきた。どこになにがあるか、頭の中に全部入っているから、片付ける必要性を感じない。逆に片付けすべて戸棚にしまうと視界に入らなくなる。そうすると何も見つけられなくなる」と42歳のサブリナは散らかった部屋で暮らす理由を説明する。

57歳のカロリーヌも同様に、散らかっていた方がいい派。「片付いていると途方に暮れてしまう。何も見つからない。散らかっている方が安心する」そうだ。なるほど、それも一理あるような気もする。散らかった部屋の方が、人によっては頭も働くし創造性も発揮できるということか。

カナダの作家で『The Joy of living your sh*t all over the place』(COUNTRYMAN PR出版;日本語版は『もうモノは片づけない!』杉田七重訳、潮出版)の著作があるジェニファー・マッカートニーによれば、ミネソタ大学の研究で、乱雑な部屋にいる人の方が創造的なアイデアが生まれた実験結果が得られたそうだ。どうやら物に囲まれていた方が、整理整頓された空間にいるよりも、柔軟な発想や連想が生まれやすいようだ。

確かにアインシュタイン博士は散らかし魔として有名だったし、作家のロアルド・ダール、もっと身近なところでは、アンジェリーナ・ジョリーやブラッド・ピット、クリステン・スチュワートも片付けが苦手らしい。でも、だからといって彼らのことを頭が悪いと言う人はいないだろう。彼らは散らかっている方が創造力を発揮できるのだ。対照的に、ムッソリーニは片付け魔だったらしい。

散らかっている方が自然。

では、片付けられない人の方が知性が高いと言えるのだろうか。「この質問をすると愉快なのは、片付けられない人はそうだと答え、ほかの人はそんなことはないって100%否定すること」と笑うのはクリスティーヌ・ブノワ。彼女はフランスでコミュニケーションと自己啓発のコーチをやっており、『Je suis bordélique, c'est grave?(原題訳:私は片付けられない人だけどそれがなにか?)』(Gereso出版)の著者でもある。

「片付けられないことに何らかの価値を見出そうとするのは、一般的に世間からよい目で見られていないことへの反論だったりする。片付けられないというのは、問題に対処する能力がないとみなされがちだ。たとえば警察は"秩序の番人"と呼ばれていたりする」。確かに、就活では雑な性格をアピールするより、いかに几帳面かをアピールした方がウケがいい。

「片付け上手になるための指南書は山ほどあり、多くはベストセラーになっている。どの著者も片付けに一家言あり、自分たちのやり方を広めることで社会の手助けをしたいと熱意にあふれている」とジェニファー・マッカートニーは言う。「私がこの本でやりたかったことは、これまで示されなかった別な視点を提案すること。創造的で生産的な成功者の多くが、乱雑な部屋で暮らしていることを認めてはどうだろう。部屋が散らかることを恐れないでいたらどうだろう。散らかっている方が自然な状態だとしたら、どうしてそれを克服しなくてはならないのだろうか」

実際、世界的な片付けのカリスマであり、片付け術で成功した"こんまり"こと近藤麻里恵すら最近、「完璧な片付けを諦めた」と言っているぐらいだ。

42歳のジャーナリスト、ローランスは有能な編集者だが、片付けにこだわらないことに決めた。「自分が片付けが苦手なことは仲間内で有名で、整理整頓にまったく向いていない人間だ。片付けが苦手ということは、型に当てはめることが苦手ということ。だから何かを考える時も枠からはみ出てしまう。頭の中はぐちゃぐちゃで散らかっている。でもアイデアはたくさんあるし、新しいことを思いつくのも得意」

神話

クリスティーヌ・ブノワに言わせると、こうした「ぐちゃぐちゃ」な状態は理路整然とした思考の障壁を取り去り、ブレインストーミングやイノベーションを育む。それでは、いったんアイデアを思いついた後はどうだろう?引き続き散らかった状態に身を置いていた方がアイデアの実現の役に立つのだろうか。

フランスで臨床心理士として働くヴァンサン・トリブは『Se libérer de l'accumulation pathologique (原題訳:病的な蓄積から脱却する)』(Dunod出版)という本を書いている。ヴァンサンは少し違う視点から考えている。「芸術家は片付けが苦手で浮世離れしているというのは新ロマン主義的な固定観念だ。実際の芸術家は、片付けが苦手なんて言ってられない。理路整然と働かなくてはやっていけない」と言う。

そもそも冒頭で紹介したミネソタ大学の研究結果にもヴァンサンは懐疑的だ。「片付けられないことが知性や創造性の証だなんておかしい。病的なまでに片付けられない人は、不安障害やうつ病の問題を抱えることが多く、片付ける気力がない」と言う。

先述のジャーナリストのローランスは自分に片付け能力がまったくないことを自認している。だが解決策を見つけた。家事代行を頼むことにしたのだ。それぐらいの金銭的余裕はある。自分では片付けられなくても散らかった部屋には住みたくない。

「私たちは雑然と生まれ、雑然と死んでいく。だから、生きている間は整理整頓が必要だと思い込まされている。いずれにせよ、その人にとってリラックスできる環境が一番」とジェニファー・マッカートニーは結論づけた。

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