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ユーザーの声から名作キャンプギアが生まれる「ベルモント」のものづくり

  • 2023.12.31
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ベルモント社長 鈴木義彦さん

プロフィール/福島県に生まれ、大学卒業後に新潟へ。競輪業界で勤めたあと、2008年、ベルモントに入社。営業から開発、出荷など一連の業務に携わり、2011年、現職に就任。そと遊びに触れたのはバス釣りからで、新潟に来てからはスノーボードも楽しみ、パートナーとの出会いをきっかけにキャンプにもハマる。最近では日本海に出てマグロを釣るなど、仕事だけでなく、プライベートでも自然の中で遊び続ける、根っからのアクティブ派。

キャンプに夢中になったきっかけは、宿代わりのテント泊

――キャンプを始めたのはいつ頃からですか?

鈴木義彦さん(以下「鈴木」):90年代後半から2000年くらいからです。妻と一緒に旅行をしていて、宿が高いからテント泊するというキャンプ場の使い方をしていました。子どもが生まれてからはファミリーキャンプになり、あとは、釣りが趣味なので、仲間と行くときはキャンプ+釣りなんて遊び方をしています。

――湖のそばでベースキャンプというスタイルですね。

鈴木:そういうのが多いですね。野尻湖に行って、みんなでバス釣りをしたり。

――現在もキャンプは継続的にされているんですね。

鈴木:子どもが大きくなってからは、なかなか家族では行かなくなってきました。今は、仕事を兼ねたキャンプが多いかもしれません。イベントのついでに1人用のテントで寝るみたいなこともしばしばありますね。

猪苗代湖畔のキャンプ場でのイベントの時は、初めてキャンプするスタッフがいまして、「初キャンプで嫌な思いはさせてはキャンプ嫌いになってしまう」と思い、テントの設営から寒さ対策まで完璧に整えて快適に過ごせるようにがんばりました(笑)。夜には花火も上がり、光が湖面に反射して幻想的な体験ができまして。そのスタッフが「もう一度キャンプしたい」と言ってくれたのはうれしかったですね。

数えきれないほどの思い出がキャンプ場に

「キャンプ場ではフリーサイトで過ごすのが好きなんです。北軽井沢スウィートグラスに行った時は、電源サイトが人気で満員でしたが、フリーサイトはガラガラ。貸し切り状態で贅沢な時間を味わわせてもらいました」

――思い出に残っているキャンプを教えてください。

鈴木:妻に初めてのプレゼントをあげたのが、新潟のキャンプ場だったんです。号泣して喜んでくれたので、それが一番の思い出ですね。

それから、私と子ども2人で過ごした中浦ヒメサユリキャンプ場も印象深いです。朝から晩まで、子どもたちの好きなことを一緒に遊んで、パンを作ったり、ピザを焼いたり……。

ほかにも、キャンプ場での思い出はたくさんありますが、私の家族は星が好きなんです。だから、夜中の2時に目覚ましをかけて、みんなで星を見るというのが、キャンプの楽しみの1つでした。

――今もご家族でキャンプに行かれますか?

鈴木:子どもが大きくなってからはなかなか。でも、子どもから「自分たちだけでキャンプ場に行っても、ちゃんとできるかな?」という相談は受けたりします。友達とキャンプしたいのでしょうね。「道具は貸すよ」といった感じで、キャンプをテーマにした子どもとのコミュニケーションは今もありますね。

――お子さんもキャンプの楽しさを覚えているんですね。

鈴木:昔、家族で行ったことを覚えててくれているんですかね。私自身も楽しかったですし。一緒に行っていた時も、おもしろい体験をさせてあげたいとか、新しい体験させてあげたいとか、そんな意識があったと思います。

キャンプ場には製品開発のヒントも!

会社内には、ベルモントの名品「チタンシングルマグ」をはじめ、鈴木さんが手がけた製品が所狭しと並ぶ。

――今、鈴木さん自身は自然の中でどんな楽しさを感じていますか?

鈴木:最近は毎週、海に出るんです。洋上でゆったりと流れる時間が至福なんですね。いつも顔を合わせている社員と行くのですが、会社で会うのとはまた違う感覚で触れ合えます。

――自然の中に身を置くと、コミュニケーションも変わってくるんですね。キャンプでも同じような感覚はあるんでしょうか?

鈴木:キャンプに行くと「仕事のヒントになるものはないかな」という感じで、ひたすら何かを探してしまうんですよ。どなたかのキャンプサイトを見て「あの製品、私だったらこう作りたいな」とか考えてしまいますし。

――仕事柄、キャンプだと「オン」の状態になってしまうと。

鈴木:そうかもしれないです。でもそれは、お客さんが喜んでくれるから、新しいものやいいものを提供したいという欲につながっていると思うんです。

ユーザーからのフィードバックやコメントが開発のソースに

――やはり、ご自身の体験から商品開発につながるものもあるのでしょうか?

鈴木:そうですね。あとは人に聞いたり、ショップさんに聞いたり、いろいろ参考にしながら商品開発をすることもあります。

たとえば、弊社の代表製品の一つでもある「TABI」は、お客さまから「ピコグリルのような軽量の焚き火台を国産で作れませんか」と言われて。そこで、アウトドア好きのデザイナーにちょっと絵を描いてくれないかと相談して、完成したものなんです。

――ユーザーの声が製品作りに反映されるんですね。

鈴木:ユーザーの声を受けて生まれたもの第1号は、小さいメスティンに入るシェラカップでしたね。お客さまから電話で30分ぐらい話し込まれたのを覚えています。実際、作ってみたら反響があったので、お客さまのほうがわかっているんだなと思いました。

「TABIの最初の試作品がこちらです。発売したものよりだいぶ小さかったんですよ」

――ユーザーの意見を取り入れた製品で、反響があったものは他にもありますか?

鈴木:「UL Hibasami」ですね。「TABIに合う軽いトングはないの?」というコメントから開発しました。アルミ製だと熱伝導で熱くなるのでは、と思いがちなんですけど、熱を放射する力もあるので、全然、熱くはなりません。

「アルミを使うことで70gという軽さを実現しました。TABIの収納ケースに入る長さで、唯一無二の製品です」

――入社されてからは、ずっと開発に携われているんですか?

鈴木:入社当時はスタッフが5、6人しかいなかったので、営業をして、開発もして、出荷もして…全部の工程に携わっていました。今も統括として、すべての製品の最終チェックをしています。

「新作の山箸は、なかなか長さが決まらなくて悩んでいたところ、ショップの方が『110サイズのOD缶の裏に入る長さがいいんじゃないか』と。それで全長172mm、分解すると75mmという長さに決定しました」

――今、鈴木さんが推している製品を教えてください。

鈴木:2024年の新作展示会で評判が良かったのが「山箸」です。これもお客さまから何気ないメールをいただいて。「今、登山ブームがきているし、3本継ぎでコンパクトに持ち運べる箸があったら売れるんじゃないですか」と。それで試作をしてみたら、自分でも「いいな」と思って、製品化しました。発売は2024年の3月です。

――思い立ったらすぐに試作品を作ることができるというのは、ものづくりが盛んな街という影響もありますか?

鈴木:私自身はこの土地の出身ではないのですが、来てみたらものづくりがとてもしやすい土地でした。たとえば、金属加工が終わったら、次はあっちに持っていって違う作業、となるのですが、それぞれの場所が近いんです。「横持ち」が近い、ぎゅっとしたエリアというのはなかなかないんですよね。

ーー作ったものをすぐに使えるフィールドも豊富に感じます。

鈴木:そうですね。バーベキューが手軽に楽しめる公園や子どもも楽しめる釣り場もありますから、小さい頃から自然を身近に感じられる環境が整っていますね。本格的なアクティビティであれば、沢登りやバックカントリースキー、磯でのヒラマサフィッシングなどにもトライすることができますし。世代はもちろん、入門者・上級者などスキルにあわせて選べる、バラエティに富んだフィールドがあるのも新潟県の魅力だと思います。

キャンプ+αな遊び方も、ものづくりから提案したい

――ベルモントはキャンプギアだけでなく、釣具や登山具も製作しています。鈴木さんがされているキャンプ+釣りのような遊び方を提案していく予定はありますか?

鈴木:結び付けたいとは思っています。ただ、壁は高いなとも思っています。釣りの人はとことん釣りがしたいんですよね。休まないんですよ。ゆったりしていない。かたや、キャンプはゆったりするのが目的だったりしますしね。

釣りの人は「車で休めばいいじゃん」という感じになってしまうので。それをもうちょっと豊かな時間が過ごせるような提案をしたいとは思いますね。道具という切り口で「バーナー1個、コッヘル1個あれば、こんなに楽しいんだよ」という会を1度開催してみたんですけど…、まだまだこれからですね。

刃渡りが240mmで太い薪も切ることができる「U.L.Noko」。重さは180gということで、とにかく荷物を軽くしたいキャンパーや移動が多いアクティビティを好む人にもぴったり。

――道具からの提案として、そういう遊び方に導くような製品も考えていますか?

鈴木:2024年はUL系の道具をリリースしようと思っています。「U.L.Noko」という組み立て式のノコギリなのですが、キャンプでも釣りでも使い所がありますよね。軽量でコンパクトなのでなので沢登りや渓流釣りにもハマるはずです。そういったいろいろなアクティビティとリンクする製品がベルモントにはありますし、これからも考えていきたいですね。

本気のキャンパーと本気のメーカーが残っていく時代へ

「これはシェラカップを使いながら箸を置く場所を確保したい、という話から作ったものなのですが、ただ置けるだけでは転がってしまうこともあるだろし、ということで箸をしっかり固定するために、ハンドル部分に差し込めるようにしました。こういった突き詰めた「機能」を持たせることも、私たちのこだわりです」

――今後のキャンプシーンへの思いを聞かせてください。

鈴木:コロナ禍を含め、ここ数年は異常でしたよね。今は混雑も解消されて、本当にキャンプに行きたい人が行けるような状況になっています。

ブームみたいなものが落ち着いてきてはいますけど、ずっとキャンプを続けている方はもちろんこのまま続けるでしょうし、すごく興味はあるけど、まだ始められていない人もたくさんいます。だから、シーンとしてはまだまだ、伸びる要素や潜在能力はあるんですよね。

とはいえ、平時に戻りつつある今だからこそ、一度整理するタイミングなのかなとも思います。勢いの中でたくさんのアウトドアメーカーさんが立ち上がりましたが、選択肢が広がり過ぎて、ユーザーやシーン自体も混乱しているような気もしますから。

本当にキャンプに行きたい人と、本当にキャンプギアを作りたいメーカーが残り、そこから裾野が広がっていくような、まっとうな形に戻っていく段階が来るのでは、と思っています。

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