【韓国ドラマ】雨の日には特別メニューのスジェビを。『賢い医師生活』

韓国ドラマによく登場する食事シーンは、主人公たちの心情や、作品のコンセプトそのものを伝える役割を果たす。食材やメニュー、食卓の風景などからもっと深くドラマを理解しよう。

韓国では雨の日に食べる料理がある。人気ドラマ『賢い医師生活』の9話で長い手術を終えた医師が、「外は雨ですよ」と聞いて目を輝かせる場面がある。彼の頭に雨の日のメニューが思い浮かぶ。「チヂミか？ スジェビか？」。彼の問いに、同僚医師が答える。「スジェビ！」。スジェビは小麦粉をこねてスープに入れたもの。日本で言えばすいとん。ただ、すいとんに比べて韓国のスジェビは外食としてもポピュラーであり、ソウルには行列ができるスジェビの名店もある。ちなみにチヂミは、焼く音が雨が降る音と似ているからという説もある。韓国は日本よりも年間降水量が少なく、雨の日は少し特別扱いだ。それを口実に友人や恋人を食事に誘うこともできるから、雨は決して悪いことばかりではないのだ。

『賢い医師生活』1999年度に同じ大学の医学部に入学した同期５人が、20年後にひとつの病院で再会する。それぞれの専門分野で第一線に立つエリート医師たちだが、結婚や恋愛といったプライベート面では問題が山積み。彼らは学生時代のバンドを再結成して友情を育みながら、医療現場や私生活での難問に立ち向かっていく。監督／シン・ウォンホ脚本／イ・ウジョン出演／チョ・ジョンソク、ユ・ヨンソク、チョン・ギョンホ、キム・デミョン、チョン・ミドほかNetflixにて独占配信中

Text: 伊東順子1990年に渡韓し、企画、翻訳オフィスを運営する。2017年に同人誌「中くらいの友だちー韓くに手帖」（皓星社刊）創刊。著書に『韓国カルチャー 隣人の素顔と現在』（集英社刊）、7月には第2弾を発売予定。

＊「フィガロジャポン」2023年9月号より抜粋