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きゃりーぱみゅぱみゅの 大人なLADYになるわよコラム〜 第54回 Z世代はがっつかないわよ〜

  • 2023.12.28

第54回 Z世代はがっつかないわよ

皆さま、ごきげんよう。Z世代研究家のきゃりーぱみゅぱみゅです。

以前この連載で、“一緒に遊んでても急に帰る”とか“プレゼントの値段が高い”といった、私が感じたZ世代独特の特徴について触れたことがあります。

で、今回はそこに、最近気づいたZ世代の新たな特徴を付け加えたいな〜と。

それは“がっつかない”です。

せっかくのチャンスが来ても、「あ、そうなんすか。じゃ、俺いいっす」とか「ぜんぜんぜんぜん、どうぞどうぞ。私行かないんで」と、変なところで人に譲ったり、冷ややかなZ世代がマジで多い気がします。

まあ、ゆとりど真ん中である私たち世代も、これと同じように上の世代に映っていたかもしれませんけど…。

でも、私たちの頃はまだ「チャンスは一度逃したら二度目はない。自分の席がなくなっちゃう」みたいな危機感は常にあったし、がむしゃらになれたギリギリ最後の世代なんじゃないかと思うんですよね。

対してZ世代は、どうも一線を引いた距離感がある気がします。

もちろん、どっちが良くてどっちがダメってわけではありませんよ。あくまで世代の感覚の違いという話です。

先日、私のバックダンサーさんたち(全員20代前半)と将来について話したときも、私たち世代とは全然違う考え方をしていてとても面白かったです。

私が「今後もダンスをやっていきたい?」と聞いてみたら…

Aさん「いつかカフェとかやってみたいです」
Bさん「結婚して子どもが生まれたらダンスやめます」
Cさん「映像の仕事にも興味あります」

みんなダンス一本では考えてなくて、「これがZ世代なんだな〜」と思いました。

もし私が質問された側だったら、たとえ本音ではカフェがやりたかったとしても…

「今はきゃりーさんのバックダンサーがとても楽しくて感謝しています!この貴重な経験を生かしてもっとダンスに取り組みたいです!」

こんな感じでガッチガチの社交辞令を思ってなくても言ってそうで、そんなこと気にせず素直にそれぞれの未来を語る彼らが眩しく見えました。

まるで「今はきゃりーさんの後ろで踊るのが楽しいからやってます!」というような軽やかな感じで、ストイックな職人集団というよりも“人生最高の瞬間を共に刻む仲間”みたいな雰囲気。

実際にステージ上でも、気負いすぎた感じがまったくなくて、すごい表情をコロコロ変えたり、お互い見つめ合って笑ったりして、いつも超楽しそうに踊ってくれます。

それを見ると「今が楽しい!」というのがすごく伝わってくるし、「今日もお揃いの衣装で一緒にステージで踊れてよかった!」みたいに、“今”という感覚が他の世代よりも強そうに見えます。

なんかめっちゃSNS的ですよね。

でもその一方で、今そこに自分がいる意味を見いだせなくなった瞬間、Z世代は仕事を辞めるという話を聞いたことがあります。

「ここに自分がいてもいなくても変わらなくね?」とか「これやる意味あるの?」とか「なんのためにここに?」とか、ほんのちょっとでも“今”に対して疑問を持ったらサッといなくなってしまうんだそうです。

これは以前この連載で触れた“一緒に遊んでても急に帰る”という特徴にもつながる話かもしれないですね。

で、いざ仕事を辞めるときもサササッという感じで「体調崩して会社にもう行けないんでこのまま辞めます」とLINEで送って終了みたいなことがあるあるらしいです。

で、もうひとつあるあるなのが、「え、残業代とか休暇とかないんですか?」というパターン。

私の世代くらいまでは「いやまだ自分はそんなこと言えるほど会社に貢献できてないし…」みたいな人が多かったと思うんですけど、これが今の20代になると「はい、ブラック企業に認定〜!」となるようです。

この旧人類と新人類のぶつかり合いが、今どの業界でも起きてるっぽいんですよね〜。

旧人類側から見ると、新人類はマジでプライドが高く見えます。「根性もねーくせに『残業代ないんですか?』だあ?ふざけんな」という感じです。

新人類側から見ると、旧人類側は「綺麗事ばかり言いやがって、都合よく俺たちを利用してるだけだろ?」みたいな感じになるんだと思います。

そりゃネットを開いたら「ブラック」だの「やりがい搾取」だの「10年も修行するなんて時間の無駄」だの…といった情報がいくらでも転がってますからね。

そんなの見たら大人たちをなかなか信用しなくなるでしょうし、だからZ世代は警戒してがっつかなくなってるという部分もあるのかもしれません。

実際に私の経験でいうと、それまで「ぜんぜんぜんぜん、どうぞどうぞ」だったZ世代が、私と一対一でじっくり話してひとたび信頼関係ができると「俺にやらせて!」となったことが過去に何回かありました。

だから新人類と旧人類の信頼関係の回復こそが、明日の日本社会の鍵を握るんじゃないかな〜と。

でないと、

「あのインフルエンサーみたいな“スーパージャンプ”を俺もしたい…!」

ネットに転がっているYouTuberやTikTokerの一発逆転サクセスストーリーを見て、本気でそう考える若者が増える一方です。

親みたいなことを言いますが、何段も過程をすっ飛ばせるようなスーパージャンプなんて宝くじレベルです。

それにそんな若者たちの大半は、夢を叶えるための地道な努力もしたくないし、そもそも努力が苦手。

というのも、 Z世代は“〇〇ハラスメント”になりかねないから強く言われたことがないし、仕事もすぐ辞めちゃうしで、忍耐力をつける機会や訓練に恵まれていないからです。

で、ジャンプもうまくいかないし、努力も続けられないしで、八方塞がりになった気持ちになって、生きづらさを感じるスパイラルになるという…。

それじゃあまりに不憫です。

しかも、仮にうまくいって売れたとしても、そこから先はまた違う苦労が待っているだけなんですよね。

「いつまで売れ続けられるんだろう?」という不安感だとか、体調を崩しても無理して仕事をしなきゃいけない責任感だとか、常にパパラッチに狙われている緊迫感だとか…。

売れてからしばらく経つと今度は「過去の自分を超えられているか?」と自問自答するようになったり、「どこまで“表の自分”を演じなきゃいけないんだ」と苦悩したりして、ふとこう思うようになります。

「幸せタイムっていつ来るんだろう?」

私は周囲で何人も売れた人たちを見てきましたし、私自身もそういう経験をしましたが、みんな「売れた状態ってなんか思ってたのと違う」と言います。

そこに到達できたからといって、決して幸せになるわけではないんですよね。苦労の旅はずっと続きます。

だからこそ私は「他人のSNSだけ見て焦らなくていいよ」と、Z世代の皆さんに言いたいです。

SNSは自分の最高の瞬間を切り取った「これ見てください!」でしかないし、投稿と投稿の間には明かされることのないプレッシャーや苦労がたくさん隠れています。

ごく当たり前のことですけど、現実はSNSに載っていないことのほうが遥かに多くて、今、目に見えている成功は、見えないところで地道に続けてきたそんな現実の積み重ねの結果です。

だから皆さんも焦らずに、自分の中にある“誰にも負けないポイント”を見つけて、ぜひそれにがっついてみてください。ほんとその積み重ねに尽きると思います。

自分にそんな強みとなるものがないという人は、“譲れないポイント”でもいいです。

ちなみに私は歌もダンスも自信ありませんでしたが、「世界観を作り上げることだけは誰にも負けないぜ!かかってきやがれ!」という気持ち一本できゃりーぱみゅぱみゅを12年も続けています。

きゃりーになる前の高校生の頃は、某中華ファミレスでバイトしてたんですけど、髪型は低めの位置でひとつ結びというルールを無視して、いつもお団子を2つ作ってバイトに行っては毎回店長に怒られてました。

「中華レストランなんだから、それにあった世界観で料理を提供するんだ!私がチャイナ感を演出するんだ!」

そんな謎の譲れないポイントがあったのかもしれません(良い子は真似しないでね)。

まあ、そんな感じで、皆さんも負けないポイントや譲れないポイントを見つけて、じっくり時間をかけて取り組んでみてください。

そうするとたぶん、幸せタイムが見つかると思います。

私はライブをしてるときがそれなんだと、デビューして10年経った頃にようやく気づくことができました。これがあるから他の全部を頑張れます。

SNSとかで知っているのはその人の点に過ぎません。

スーパージャンプなんて実は誰もしていないんだと思います。

地道にがっつく若者を私は応援します

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