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コンビニ商品で「全身コーデ」…ダサい? 意外といける?ファミマ“洋服シリーズ”実力と課題

  • 2023.12.28

なぜファミマは洋服を?コンビニの矜持とは

2023年11月30日(木)に開かれた「ファミフェス」でのファッションショーの様子
2023年11月30日(木)に開かれた「ファミフェス」でのファッションショーの様子

来たる2024年、国内コンビニエンスストアは誕生から半世紀を数えます。日本で初めてフランチャイズ式のコンビニが開業したのは1974(昭和49)年5月。東京都江東区豊洲の「セブン‐イレブン第1号店」でした。

その後50年にわたりコンビニは市民生活のさまざまなニーズを拾い上げ、光熱費の払い込み、ATM、PB商品、レジ横のホットスナック、マルチコピー機、コーヒーマシン、イートインスペースなどを次々に導入、あらゆる分野で利便性の向上を図ってきました。

新商品、新サービスがますます深化するなか、ファミリーマートが2021年にスタートさせたのが、ファッションデザイナー落合宏理氏との共同開発した衣料品ブランド「Convenience Wear(コンビニエンスウェア)」です。

Tシャツやソックス、タオル、パーカなどのベーシックなアイテムに加えて、2023年12月にはスエットの上下やデニムジャケット、デニムパンツ、フライトジャケットといったよりアパレル性の強い商品を発売。それに先立つ同年11月には、コンビニ業界初となる“ファッションショー”を開催し、さらなる挑戦への意欲を印象づけました。

安価なラインからラグジュアリーまで、あまたのアパレルブランドが存在する中で、コンビニ発のファッションはともすると“ダサい”といったイメージを持たれてしまうのではないか。あるいは、ファストファッションの雄「UNIQLO(ユニクロ)」がかつて負のイメージを完全払拭したように、「コンビニエンスウェア」も幅広い世代に受け入れられるのか。

ファミマ「コンビニエンスウェア」の使い勝手とは、またコンビニが独自の衣料品を展開する狙いとは何か。同ショーの雑感を振り返るとともに、その「意義」についてあらためて考えます。

コンビニ業界初ファッションショーの現場で

ファッションショーに出演したモデルたち
ファッションショーに出演したモデルたち

2023年11月30日(木)午後、東京都渋谷区・国立代々木競技場の第二体育館は不思議な高揚感に包まれていました。ファミマ主催イベント「ファミフェス」の、コンビニ業界初というファッションショーを前に、客席は多くの関係者や招待客らで埋められていました。

そのスタンド席・アリーナ席にぐるりと囲まれた円形の中央ステージには、同じく円状のフォルムをした疑似店舗「FamilyMart」が。店内にはファミチキや「コンビニエンスウェア」シリーズ、新商品のスイーツといった商品が整然と陳列されています。

曽我部恵一氏率いるバンドの演奏とともにショーは開幕。総勢100人のモデルが順に登場し、ステージ上を周回しながら中央の店舗内へ。用事を済ませてまた店外へ出ていく人と、入れ替わるようにして店内へ入っていく人がすれ違い、さながら街角のコンビニそのもののような演出です。

出演したモデルには著名な俳優など芸能人もいましたが、多くは一般来場客にとって名も知らぬ老若男女。ファミマで働く現役店員も含まれていたといいます。

「コンビニエンスウェア」でコーディネートした彼らの服装は実にさまざまです。上下とも黒のスエットを着た青年がいて、白と黄色のTシャツを重ね着した少女がいて、水色のトレーナーにデニムパンツの中年女性が、紫色のパーカや黒いTシャツ、ボタンダウンシャツを羽織った親子連れがいます。

一つ一つはてらいのないごくベーシックなデザインなのに、組み合わせによってこれほど多様かつ個性的な着こなしが可能なのかという驚きがありました。

あらゆる人が利用する「コンビニ」が服を手掛けるということ

ショーの最終盤、全てのモデルが一堂にステージへ
ショーの最終盤、全てのモデルが一堂にステージへ

そしてまた服装と同じように多様だったのは、出演モデルたちの性別、年代、出身、属性、体形、家族構成です。さらに言えばその足取りや表情までもが、決して一様ではありません。

楽しげな表情を浮かべて足取り軽く店舗へ入っていく人。無表情で淡々と売り場を目指す人。どこか呆然とした様子でただ歩を進める人。欲しい商品のもとへ真っすぐ向かう人があれば、ぶらぶらと店内を眺めて歩く人もいます。

真夏の晴天を思わせるサングラスとタンクトップ姿の女性がいたかと思えば、パーカの上にダウンを重ねてしっかり防寒する男性がおり、降り出した雨を気にするように店内で買ったばかりと見える折りたたみ傘を手に取る男性がいます。

それぞれのストーリーを持ち、今日という日を生きる一人一人が、また別の誰かとすれ違い、行き過ぎるステージ……。このショーの要は、まさに「コンビニとは何か」を見る者に想起させる点にあったように感じます。

言うまでもなく、住むまちにあるコンビニを利用することに年齢も属性も関係ありません。何歳でもどこの出身でもどんな体形でも何の血液型でも、独身でもパートナーがいても大家族でも誰もがコンビニを使います。そんなごく当たり前のことと、そのことの“すごみ”が舞台からはあふれていました。

喜びも憂いも晴れの日も雨の日も、全てを包摂してコンビニはある。その役割や矜持(きょうじ)のようなものをショーは体現しているようでした。

さっき誰かの背後を通り過ぎていった人が、今度は真正面の入り口に現れる。そんな風に次々と視点が移動して“主人公”が入れ替わっていくステージ。その服装や表情、足取り、手に持った商品からおのおののストーリーを想像させられて、「自分も確かにこの中の一人だ」と感じさせられる温かさがありました。

次の半世紀へ――コンビニは何を目指すのか

ステージ中央の“店舗”内に展示されていた「コンビニエンスウェア」の一部
ステージ中央の“店舗”内に展示されていた「コンビニエンスウェア」の一部

あらゆる人が利用する。その当たり前に立ち返ったとき、コンビニが「あらゆる人」のニーズに応えられる衣料品を展開することは決して容易ではないと、その難しさについてあらためて考えさせられます。

現に商品のほとんどはM・Lの2サイズかワンサイズでの作りゆえ、あらゆる体形の人をカバーするには至っていないと言えるでしょう。加えてコンビニという特性上、店舗面積は限られており衣料品がその中心を占めることはまずあり得ません。今回お披露目されたアイテムのうち全国発売されたものは黒いスエットの上下計3点。その他の大部分は「ファミマ!!麻布台ヒルズ店」での限定商品です。

それでもなお、ファミマが今回のファッションショーで見せた矜持には深いメッセージ性があったように思われます。“全ての人のための店”たるコンビニが次の半世紀に向けて今度はどのような進化を遂げていくのか、その行く末を今回の取り組みは示唆しているかのようでした。

(LASISA編集部)

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