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ドライバーがすぐ&格段にうまくなる!新しいスイング軌道と打点とは…?

  • 2023.12.25

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。斬新な視点と理論が、レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

※「MOS」とは「memory of the senses」の略で、距離感やフェースの状態などを具体的な感覚量として“小脳で記憶”すること。高い再現性を得ようという新しい理論

ドライバーでのフルショットに挑戦

これまでの定説であった最下点を過ぎた上昇局面というのは、上面図で見るとフェースはすでに左にかぶったポイントでもある。これに対しスパイン・アングルでは、どこで打っても打ち上げ角は変わらないので、アッパーブローに打つ場合は少しティーを高めに設定して地面との接触を避けつつ一直線に振り抜くことを心掛けたい。インパクトでの正しいフェース状態を担保させることでボールは思ったところへ打ち出せる。

スパイン・アングルでアッパーブローとは

前号ではアイアンでのフルショットを自信をもって打つ方法を説明しましたが、今月はドライバー編です。ドライバーというとフルショットが前提だけにヘッドスピードも速く、現れる物理現象も顕著でスライスに悩む人には苦手意識があると思います。でも、もしかすると一番簡単なショットかも知れないのです。ドライバーもアイアンも私は基本、同じスイングのバリエーションと考えているので、前回とかぶるところがあるのですが、まったく同じという訳ではないので、いくつかの違いをあげていきます。

ドライバーはティーアップして、アッパーブローで打てるショットです。理想的な打ち出し角は13から14度ほどといわれますが、ロフトが10・5度のドライバーだとすると、シャフトのしなりによるキックバックを考慮しなければ、2・5から3・5度ぶん足りないことになり、このぶんをアッパーブローで補ってやる必要があります。一般的な教科書では、このアッパーブローはイラストAのようにスイング軌道の最下点から少し上昇局面に入ったところで打つことで実現されるとしています。

そもそもこのU字型のスイングイメージというのは、スイングを正面視点から見たときの錯覚であることは以前説明しましたが、この上昇局面とやらのポイントを真上から見てみると、円弧状に振られていることからすでに左側にフェースがかぶりはじめているポイントであることがわかります。アッパーブローを強調するあまり、このフェースかぶりに関しては話題にもなりませんが、この状態では何らかの小細工をしないかぎりスクエアに打つことはできません。

そこで、もっとスイングをシンプルに考えてみます。イラストCのように前傾軸を右に少し傾けてみます。すると、イラストBのようにスイングプレーンを左上りに設定できるのですが、この角度が安定したアッパーブローの打ち出し角になるため、タイミングに依存せずスイング軌道のどこで打ってもボールを自然にあおって打てるようになります。このような背骨を右に傾けてアッパーブローにすることを「スパイン・アングル」と呼びます。

この「スパイン・アングル」という用語はミッシェル・ウィーなど著名な数々のプロゴルファーのコーチを務めたゲイリー・ギルクリスト氏の著書ではじめて知ったのですが、検索をしてみると、スタンスでの前傾角をスパイン・アングルと説明しているものも多いので、ここでは「右傾角のこと」とします。このスパイン・アングルのすぐれているところは、スイングプレーンの仰角だけでアッパーブローを作っているので、上昇局面で打つときのようにタイミング(時間)に関わる要素がなく、単純にスクエアな位置で打てばよいということ。さらに弾道の高さを変えたいと考えた場合、従来の方法では上昇局面のより違うポイントを狙って打つ必要があったのですが、その必要がなく非常にシンプルなこともすぐれている点です。

フラットサービスのように確信して打つ

ここまでのことを踏まえてドライバーをフルスイングで打ってみましょう。そもそも、ティーに乗せたボールをU字型のスイング軌道の上昇局面でアッパーブローに打つということから、アイアンショットとは別のスイングであるかのような錯覚に陥ってしまいますが、スイングの基本はアイアンと変わりません。スイングの際の手首から見えるヘッドの軌跡は、ハンマー投げで振り回されるハンマーを手首側から見たようなもので、真一文字に振られているはずです。

アッパーブローの仰角はハンマー投げで斜めに投げ上げる際の軸の傾斜と同じで、右傾角であるスパイン・アングルによって決まるわけですから、ここではU字型のスイング、上昇局面のことは一切忘れ、手首を起点に一直線に加速することだけをスイングイメージとします。トップまでクラブを振り上げたら、インパクトで担保するフェース状態とインナーカウンターでの左手ブロックの位置を強く意識し、重力を利用して上半身リードで切り返すと同時に、加速する上半身を迎え撃つように左ワキの締めによる左手のブロックで最大限の加速度が発生するようにします。

ブロックの衝撃によりヘッドはトリガーが引かれ一気に加速されますが、この暴走状態に入ったスイングのなかでフェース状態の担保に集中し、前号で説明したようにボールの右サイドから臆することなく叩きにいきます。インパクト後は何もせず惰性に任せるのもアイアンのときと一緒です。何度も説明しているようにボールはフェースの方向に自動的に打ち出されるので、ロフトの少ないドライバーではラケットでボールを打ち出すような感覚になります。気になるスライスもサイドスライドが起きないように制御すれば生じません。

このようにインバースキネマティクス(弾道から逆算してインパクトでのフェース状態を決める)で、インパクト状態を担保して打つようになってから私はスライスに悩んだことはありません。恐らく、私にとってはセンターラインを貫くテニスでのフラットサービスとほぼ同じで、特別のことではなくなっているからです。ですから、私にとって今やドライバーはむしろ楽しいショットですらあります。

文・イラスト=サンドラー博士
●ゴルフ好きの研究者。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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