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【フィンランドが世界一幸せな理由を探る】子育て・教育・ジェンダー…8つのキーワードから分かること

  • 2023.12.25
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「世界幸福度ランキング」でも6年連続で1位の国、フィンランド。今回モデルの香菜子さんが、フィンランドに詳しい堀内都喜子さんとノーラ・シロラさんにお話を伺い、フィンランドが幸せな理由を、8つのキーワードから紐解きます。

お話を聞いた3名のprofile

[PROFILE](左から)
堀内都喜子さん
フィンランド留学を経てフィンランド大使館でプロジェクトコーディネーターとして勤務。

ノーラ・シロラさん
フィンランド大使館商務部勤務を経て、北欧旅行フィンツアーにて勤務。

香菜子さん
本誌をはじめさまざまな媒体でモデルとして活躍しながら、2児の母として子育ても行う。

キーワード #01 (ネウボラ)

切れ目ないワンストップ支援は、ママとパパが信頼できるより所

Kimmo Brandt © Helsinki city

フィンランド語で「アドバイスの場所」を意味するネウボラは、子どもを持つ家庭を対象に産前・産後・子育てをワンストップで支援する制度のことです。できるだけ同じ保健師が産前から就学前まで長期的にカウンセリングを繰り返しながら母親ひとりひとりに寄り添い、無料でサポートします。

1944年に運営主体を自治体として制度化され、現在はほぼ100%に近い定着率を誇ります。母親にとっても子どもにとっても身近で信頼できる、心強い味方のような存在です。こうした支援は世界各地へと広がり、日本でもネウボラと類似したサービスを実施する自治体が増えています。

キーワード #02 (育児パッケージ)

国から生まれてくる子どもへ、祝福と歓迎のシンボル

©Kela

育児パッケージは、ネウボラまたは医療機関での妊婦健診を受けた家庭に無料で支給される母親手当のひとつです。母親手当は170ユーロの現金支給と育児パッケージのどちらかが選べますが、第1子を迎える多くの家庭は育児パッケージを選択します。

ベッドとしても使えるかわいい北欧デザインの箱には、マットレスや羽毛布団、ケア用品、洋服など、男女共通で使えるベビーアイテム 43点(2022年版)が入っており、新しい命の誕生を祝福するとともに、これから子育てを始める親を経済的にサポートします。

キーワード #03 (育児制度)

男性の育休取得率は80%!性別に関係なく育児を楽しむ文化

フィンランドには育児をする男性を称賛する「イクメン」という言葉はなく、母親も父親も子育てに参加するのが当たり前です。フィンランド男性のうち約 80%が育児休暇を取得しています。さらに、2022年8月に施行された新制度では、二人の親が合わせて約14か月の育児休暇が取得できるようになりました。

日本では男女ともに1年間の育休を取ることができ、男性に与えられる育休の長さは世界でもトップクラスですが、日本の男性育休取得率は約17.3%と制度の充実に比べて取得率の低さがうかがえます。

「フィンランドでは日本のように料理は母親、労働は父親といったような性別による役割分担はなく、それぞれが得意なことを発揮しながら家事・育児を行っています」と堀内さん。

フィンランドの育児支援の一例
☑︎産休
フィンランドでは、子どもが生まれる1か月前から出産休暇を取ることができ、計40勤務日分、計1.5か月間の産休を取得することが可能です。

☑︎育休
2人で約14か月間が取得できる新しい育休制度では、 63日の勤務日分を相手に譲ることができます。最大18日勤務日分は二人同時に取得可能で、それ以外はどちらかの就業が必要です。

☑︎児童手当
第1子約95ユーロ(約15,000円)、第2子約105ユーロ(16,500円)、第3子約135ユーロ(21,200円)が17歳になるまで毎月支給されます。※レート:ユーロ=約158円(2023年9月現在)

【日本では】
2022年4月に、男性が産後8週間以内に最大28日を2回に分けて取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」が施行されました。また、宮城県名取市が2022年の男性育休取得率100%を達成して話題を呼ぶなど、日本の男性の子育てに対する姿勢や職場の雰囲気が変わりつつあります。

キーワード #04 (教育制度)

子どもの意思を尊重する教育方針。大学院までの教育費が無料!

フィンランドでは就学前から大学院まで、すべての教育が無料で受けられます。6歳の就学前教育と7歳から16歳までの基礎教育を受けた子どもは、大学進学をめざす普通高校か、働くための資格を取得する職業高校へと進学します。
18歳までの義務教育では教科書や給食代が無料で提供されます。全国統一模試などの偏差値を測るテストはなく、自分らしい成長をめざして個性と自立性を育みます。

「保育園の頃から『あなたはどうしたいのか』といった意見を求められることが多く、自分の意思で人生を選択していく力が身につき、その後の人生設計に役立ちました」(ノーラさん)

キーワード #05 (ジェンダー)

世界で初めて女性が参政権を獲得。男女が等しく社会で活躍する国

フィンランドは、女性に完全な選挙権が与えられた世界初の国です。1907年に行われた国政選挙では、200人のうち19人の女性議員が誕生しました。現在は国会議員の約46%を女性が占め、閣僚の半数以上も女性です。女性が国会に進出すると同時に、社会では男性と同じようにフルタイムで働く女性が増えていきました。

「ジェンダー制度は女性のためではなく、みんなが幸せになるためのもの。女性の困り事を代弁する議員が増えたことで、女性も男性も暮らしやすい社会へと変わっていきました」(堀内さん)

キーワード #06 (ワークライフバランス)

ロングバケーションを楽しむ文化。よく休み、効率よく働くフィンランド人

「思う存分休暇を楽しんだから、また仕事をがんばろう」といったように、オンオフを使い分けながら効率よく働くのがフィンランド流です。
コーヒーブレイクをとるよう就労規則に定められており、休憩を上手に使いながらメリハリをつけて働きます。残業はせず、就労規則に定められた週40時間以内に仕事を終える人がほとんどです。通常、30日間の有給休暇が与えられ、多くのひとが約5週間のロングバケーションを満喫します。

「家族がいない人も家族がいる人と同様に定時で帰る権利があります」(堀内さん)

キーワード #07 (福祉・老後の支援)

施設介護から在宅介護へ。地方自治体が介護サービスを提供

City of Helsinki

フィンランドでは、社会保険庁事務所「KELA」が社会保障を行っています。社会福祉法に基づく高齢者福祉政策では、地方自治体が各種在宅サービスや高齢者向け住宅、老人ホームなどを整備することが定められています。施設ケアから脱施設ケアをめざす動きがあり、自宅で快適な介護生活が送れるようさまざまなサービスを提供しています。

「20歳ぐらいになるとみんな一人暮らしを始めますが、実家に戻って再び両親と一緒に暮らすことはありません。介護が必要になると可能な限りサポートはしますが、福祉は国と社会に任せています」(堀内さん)

キーワード #08 (自然享受権)

自然の恵みを享受する権利。森と湖が身近にある暮らし

Noora Sirola

森林率が約74%を占めるフィンランドでは、森や湖に自由に入ることができる「自然享受権」がみんなに与えられています。湖の水をたっぷりと蓄えた森には植物や動物など多種多様な生物が生息しており、自生したベリー類の果実やキノコなどを採取することができます。
休日になると森へ出かけ、湖畔にテントを張ってアウトドアを楽しんだり、ウォーターアクティビティを満喫したり、サウナの後に湖に飛び込んだりと、自然が身近にある暮らしを楽しんでいます。

「いつでも出かけることができて安らぎを与えてくれる森や湖は、フィンランド人にとって心のより所です。日本にいても、時々フィンランドの森の香りや美しい風景が恋しくなります」(ノーラさん)

Noora Sirola

お話を聞いてみて・・・

「日本の女性はがんばりすぎてる(笑)!でも自分の幸せにとってなにが大事なのか気づいてる人が増えてきた気がします。私たちはもっと自分軸でもいいんだなって思いました」

「“家族が”とか“子どもが”とか“年齢が”とか一旦置いて、自分のやりたいことに、もっと素直になってもいいかなと思います。自分のやりたいことを大事にしてみたら、きっと、周りも応援してくれると思うんです」

「フィンランド人だっていつもニコニコしているわけではなくイライラしたりもします。そんなとき、特別なことをするより、日々の暮らしに好きなことを取り入れて過ごすと幸福度が上がる気がします」

photograph:Chiharu Fukutomi hair&make up:Yuka Takamatsu text:Asami Asai, Miho Iwai(Kokohore Japan Inc.)illustration:Toshinori Yonemura web edit:Riho Abe
リンネル2023年12月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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