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恋愛がいらない女たち カギは自己肯定感

  • 2023.12.24

私たちは日々さまざまな「HAVE TO:やらなければならないこと」に囲まれている。でもそれって本当にやらなきゃいけないこと? 働く女性たちを研究している博報堂キャリジョ研プラスによる連載「XXしない女たち」。今回は恋愛がいらない女たち。恋愛や結婚が女性の人生においては大きな幸せだと捉えられがちだったこれまでだが、いま恋愛だけにとらわれない人生を楽しもうとする女性の姿も目立つ。恋愛しない選択を自らとっている女性たちのリアルな生き方をお届けします。

複数同時進行だった恋愛を絶ったのは……

俳優業兼ジムトレーナーのNさん(29)は2年半ほど前まで、“恋愛的な付き合い”を様々な人とするのを積極的に楽しんでいた。正式に付き合っている訳ではなく、お互い他に相手がいてもいいが、その人と過ごす間はその人に全力で恋愛感情を持って接していたそうだ。

Nさんは18歳から俳優を目指して活動をはじめ、しばらくして結婚も考えるほど真剣な恋愛をした。しかし、4年間同棲の末、相手に浮気をされてしまい、一気に自分の存在を完全に否定された気持ちになった。その悔しさや悲しさが自己肯定感を低くしてしまい、その後は複数の人と恋愛をすることで自己肯定感を得るようになった。

「その当時はトレーディングカードみたいなイメージで、色々な業種の人を手中に収めたくて次々と恋愛しました。様々な人が自分に好意を抱いてくれるのは確かに肯定感を上げてくれていたと思います」

kieferpix/iStock/Getty Images Plus

Nさんはこうして2年間様々な人との恋愛を楽しんだ。その恋愛は時に同時進行で、それをそれぞれ付き合っていた相手にも伝えていたという。加えてその間、どういう人がどういう恋愛傾向にあるかを研究することにもはまった。心理学の本を読んだり、その様々なお付き合いしている人の特徴や行動をデータとしてメモしたり。

「お付き合いしていた方たちからは“博士”と呼ばれてました(笑)。男女間で思い通りにならないことが色々あるなと思っていた中で、その解決につながるような、男性の恋愛心理の研究を行うことが、同時並行の恋愛のモチベーションにもなっていました」

その2年間は何より恋愛が中心で、俳優業は惰性、とにかく結婚したいと思っていた。しかし、2年間遊びきったとき、すでに自己肯定感も上がっており、この時間はなんだろうと思うようになった。ちょうど、ジムの仕事も始め、パートナーがいなくても自分で食べていけるという自信もついた頃だった。そしてふと、俳優業に本腰を入れようと思った。

「俳優業を本気でやるからには、これまでめちゃくちゃハマって時間を沢山使っていた恋愛をきっぱり切ろうと。そこから恋愛をしない生活が始まりました」

実際、恋愛を絶ってから、小さい頃から学んでいた空手や中国語など、それまで自分が行ってきことが俳優業でもどんどん活かせるようになり、大きい仕事も入ってくるようになった。「恋愛を絶つことが今では願掛けとなっています。なので、18歳から夢だったハリウッドへの出演という大きい夢を叶えるまでは少なくとも恋愛しないと決めています」

west/iStock/Getty Images Plus

大きな夢が生きる原動力に

加えて、恋愛や結婚に関して男性に頼るような関係性を描きがちだったそれまでをふり返り、実はもともとは「自分の手で誰かを幸せにしたい。家族を幸せにしたい」という思いが強かったことも思い出した。

子どものころから、母からは「人を助けてあげるべき」という教えをさりげなく受けてきた。Nさんが習ってきた空手も、自分より弱い人を守るという考えが根底にあった。「人を守るという教えから、いつか自分の手で誰かを幸せにしたいという想いが生まれたと感じています。将来は、保護犬の施設、老人ホーム、児童養護施設の複合施設をつくって、そのコミュニティで人が助け合って生きていけるようにするのが夢。そのためにもまずはハリウッドで大きい資金を得られたらなと、思っているんです」

その想いがあるからこそ、恋愛を絶ち、夢を叶えるために突き進んでいけるのだ、と今は思っている。元々人のことを気にしてしまう性格のNさんは、恋愛をするとその相手のことが始終気になるタイプ。大きい夢のため、また余計な問題や精神的負担を減らすためにも恋愛を完全に絶っているのだ。

「食事に誘われても、それは仕事の関係かどうかをまず聞きます。もし違うなら行きません。恋愛にすべての時間を取られずに済む人は、他に大きな目標があっても恋愛してもいいのだと思います。ただ自分はそうじゃなかった」

Chinnapong/iStock/Getty Images Plus

ドキドキ恋愛より安定・安心

メーカー勤務のYさん(23)。今年の6月頃まで彼がいたが、別れた後、半年近く恋愛をしていない。その彼とは、大学3年の頃、所属していたダンスサークルで知り合った。二人ともダンスが大好きで、友達や家族との付き合いもとても大事にしていた。パートナーと約束していてもダンスの予定を急遽入れるということもお互いあったそう。

「お付き合いしていた方とはいつの間にか恋愛関係というより、お互いあまり遠慮しない友人関係になっていってしまいました。そもそも私は昔から一個のことに集中してしまうタイプ。恋愛がいらなくなったのは、今は趣味のダンスに集中してしまったというのが一つ理由になりますね」。集中していること以外のこと、そのなかでも特に精神的な影響を受ける恋愛というものに時間を割くのは時間の無駄に感じるという。

「恋愛を積極的にしないのは、昔から変わらないです。そもそもそんなに恋愛に興味があるわけではないので、実は、友達と恋愛の話をするのは結構苦手なんですよね」と、Yさんは打ち明ける。Yさんにとって恋愛とは、安定や安心を求めるものだという。

Yさんは一人っ子として生まれ、幸いにも両親に愛され育ってきた。そのため、家庭のあり方は、夫婦はお互い助け合って子どもを中心に回っているのが当たり前だったそう。そのためか、恋愛とは最終的に結婚して、子どもを育てるための家庭づくりの過程のように感じている。そして、だからこそ、恋愛にはドキドキするような気持ちより、安心、安定を求めるようになっている。

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「私はもう結婚するくらいの人でないと付き合いたくないんですよね。それを私の年代の友達に言っても理解されないです。細かいね、って言われちゃうので少し喋りづらく感じます」
そして、両親から愛情を注いでもらうことで事足りているので、パートナーが欲しいという気にならないのだろうとも、Yさんは言う。

仕事が圧倒的に一番に

商社勤務のSさん(27)は大学生のころは恋愛に興味があり、好きな人が欲しいという思いもあった。しかし、社会人になって数年経った今「恋愛は一旦いいかな」というフェーズになっている。

「大学の時は、何か一つが大きく突き抜けて優先順位が高いということがなく、恋愛も勉強も友達関係もすべて横並びのような感覚だったんですよね。だから、恋愛をしていても別に他がおざなりにならなかったんです」

しかしSさんのそんなライフバランスは、社会人になって一転、毎日仕事に没頭する日々を送っている。「平日は基本仕事のことばかり考えていますね。土日に例えば友達の結婚式に参列して、あ、結婚っていいな、と思っても、平日になるとその感覚が消えていきます。でも仕事で忙しすぎて、他のことが考えられないという感覚ではないんです。逆に仕事が楽しくてとにかく頑張りたくて、他のことに目がいかないという感じですね」

whyframestudio/iStock/Getty Images Plus

そもそも本当は恋愛というもの自体が自分の性分にマッチしていないのではないかと感じている。昔から常に自分が成長している実感を持っていたいタイプ。そして恋愛というのは、どうしてもその恋愛相手のことばかり考えてしまう機会が生まれてしまい、くよくよ悩んで立ち止まってしまうこともある。だから燃えるような恋愛は避けていたそう。

「私は理性がすごく強いタイプなのかも。直感でいいなと思った人がいても、少しでもこの人といたら精神的にしんどい状況になることもあると感じたら、すぐ興味をなくします。とにかく付き合う人は、精神的に負担がない人がいいと思っていました。なので、その人の行動が気になってしまうような人とは付き合いませんでした」

これまで付き合った相手からも「冷たい」「もう少し自分に執着してほしい」と言われたこともある。そうは言っても、誰かに頼りたくなったり、愚痴をこぼしたくなったりもしないのだろうか。筆者は気になり、聞いてみた。

「そもそも普段からあまり嫌な感情になることがないんですよね。めちゃくちゃポジティブで、何か嫌なことがあってもすぐ自分の中で消化してケロッとしてしまう。なので誰かにすごく話を聞いてもらいたいとかいうことも、あまりないですね」

【グラフ1】【グラフ2】

博報堂キャリジョ研プラス 「恋愛についての意識調査」グラフ1(n=150)、グラフ2(n=85)

博報堂キャリジョ研プラス は2023年11月、20-49才の女性150人を対象に「恋愛についての調査」を行った※。グラフ1をみると、「恋愛をしないように思っていた時期がある人」と「恋愛をしないように今も思っている人」は合わせて29.3%、「恋愛にそもそも興味がない人」は27.3%となった。

グラフ2は、全体150人から「一度も恋愛しないようにしていた時期がない人」を抜いた集団を母集団としている。「恋愛をしないようにしている」、「していた人」、「恋愛にそもそも興味がない人」に理由を尋ねると、TOP3は「恋愛で精神的に疲れたくない」が26.7%、「恋愛で傷つくのが怖い」が23.3%、「家族や友人との時間を大切にしたい」は23.3%になった。

【グラフ3】

博報堂キャリジョ研プラス「恋愛についての意識調査」グラフ3(n=85)

グラフ3は、全体150人の内、グラフ1における「一度も恋愛しないようにしていた時期がない人」を抜いた集団を母集団としている。
今後恋愛をするきっかけ、あるいはきっかけとなりそうなものとして、「完璧に理想の人に出会えたらまた恋愛をしたい」34.9%が最も回答率が高いことが分かった。その他「周りの友人が結婚したら恋愛したい」11.1%や「仕事が落ち着いたら恋愛したい」11.1%「『推し』への愛が冷めたら恋愛がしたい」11.1%が上位の回答として挙がった。

調査結果からは、恋愛は精神的な負担を考えて遠ざかる人が多いことや、恋愛を今後するとしたら、仕事や友人などの恋愛以外の外的環境の変化よりも、理想の恋愛対象が現れるかどうかで決めるという傾向がわかる。

インタビューでは、恋愛をなるべくしないようにしている人たちの共通の特徴として、一つのことに集中することや、友人や家族との関係性の良さがみられた。また、社会的承認欲求や、恋人でなくても他人から愛情を注いでもらうことで満たされると、恋愛という関係をそこまで求めなくなるのだということが推察された。

とはいえ、そもそも恋愛とは本能的に好感を持つことで始まるものでもあり、その気持ちを必ずしも理性では止められないことも多いだろう。こうした彼女たちの今後も注視していきたい。

※「恋愛についての意識調査」調査概要
年代:20代-50代、性別:女性、対象地域:全国、未婚既婚の縛りなし

■北里礼のプロフィール
「博報堂キャリジョ研プラス」所属。1997年生まれ。グローバルマーケティング部で、ストラテジックプランナーとして、ヘルス&ビューティーブランドや通信会社のマーケティング、リブランディング、競合調査などを担当。趣味は旅行、ハイキング、ゴルフ、YouTube鑑賞。

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