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未来の天皇に学歴は必要なのか…"学歴エリート"雅子さまと"教育熱心"紀子さまの対照的な教育方針

  • 2023.12.22

筑波大学附属高校2年生の、秋篠宮家の長男、悠仁さまの大学受験が近づいてきている。武蔵大学社会学部教授の千田有紀さんは「お子さまの進学のご様子からわかる、雅子さまと紀子さまの教育方針は、対極的であるように見える。本来、皇位継承権を持つ悠仁さまは、学歴競争に参加する必要はなく、むしろ難関大学を目指すことは、国民の反感を買うことになってしまうのではないか」という――。

秋篠宮ご夫妻らに見送られ、インドネシアに出発される天皇、皇后両陛下=2023年6月17日午前、東京・羽田空港
秋篠宮ご夫妻らに見送られ、インドネシアに出発される天皇、皇后両陛下=2023年6月17日午前、東京・羽田空港
悠仁さまが書かれたトンボの論文

秋篠宮悠仁さまが、赤坂御用地のトンボ相についての論文を書かれたそうである。2012年から11年にわたる調査結果をまとめられたものであるという。素晴らしいことだと思う。そして、悠仁さまが筆頭著者になっていると聞いて驚いた。

こうした学術論文で、複数の著者が名前を掲載する場合、その名前の掲載順は大きな意味を持つ。特に、論文の最初に名前を掲載する筆頭著者は、その調査を主導して論文を執筆したことを表す。

現在高校2年生の悠仁さま。そろそろ大学受験が近づき、総合型入試(ペーパーテストの結果だけで評価するのではなく、論文や面接などで総合的に評価する)に備えている面もあるのではないかと想像してしまった。

にじみ出る親の教育方針

大学への進学戦略は、庶民であれ皇族であれ、子ども本人よりも親や学校の方針が強く出てしまうものだ。勝手なイメージかもしれないが、これまでのメディアの報道ぶりを見ていると、紀子さまはとても教育熱心なのではないかと思わされる。それは皇室でほぼ唯一の若年男子、皇統を継ぐであろう悠仁さまをお育てするという気負いから来ているのだろう。

悠仁さまは、皇族としては珍しく、幼稚園から中学までお茶の水女子大学附属に進み、悠仁さまのために作られたとも噂される提携校制度で、超進学校の筑波大学附属高校に進学した。高偏差値の名門大学を狙われているのだろうとみられている。

しかし、たおやかで優しい笑顔の紀子さまが学歴にこだわりをお持ちの様子である一方、ハーバード大学を卒業され、東京大学の在学経験やオックスフォード大学の留学経験もある元外務官僚の雅子さまのほうがそうでないのは、やや意外にも見える。

愛子さまは、優秀であるという評判が高かったが、大学も、幼稚園、初等科、中等科、高等科と学んだ学習院にそのまま進学された。

しかも日本文学、なかでも中世の文学を専攻されたことには、少々驚いた。昨今の風潮で言えば、人文学、中でも文学、中世文学と言えば、「実学の対極にある」学問の代表とされることもある。私などは、「国際的なキャリアをお持ちの雅子さまのように、外国語を駆使して、国際的な学問などを専攻されるのではないか」と予想していただけに、実に意外な選択であった。

“学歴エリート”だからこその、学歴へのこだわりのなさ

しかしよく考えれば、こうした選択を後押しされたであろう雅子さまの子育ては、“学歴エリート”であるからこそのものだろう。

ご自身がお持ちの、ハーバード大学卒や東大法学部学士入学といった学歴は、キャリア官僚になる際に光り輝くものである。受け継ぐべき家業のない中産階級(というにはあまりに上流階級ではあるが)の女性が、身を立てていく際の武器となるものである。もっとうがった言い方をすれば、外務官僚という父親の「家業」を受け継ぐための「資格」であったと考えることすらできる。

天皇家の長女に生まれた愛子さまは、もはやなんの資格もいらないのである。雅子さまは、学歴がどのように機能するのかを知っているからこそ、愛子さまには、人材市場で戦い勝ち抜くために求められるような学歴は、必要がないと判断されたのだろう。

天皇家の祖先がどのように「源氏物語」に描かれているのかを知ることの方が、愛子さまにはプラスになるかもしれない。中世の日本文学という学問が、これほど自身とつながりが深い人は、愛子さま以外になかなかいないだろう。

自分たちのいまいる場所が、どのような歴史のうえに成り立っているのかを考えること――天皇家に生まれた愛子さまにとっては、日本の文学や歴史を学ぶこと以上の学問のメリットはないだろう。そういう意味でも、学習院大学はふさわしい大学だといえるだろう。

一方、ずっと学習院で過ごされ、大学院まで学習院だった紀子さまは、むしろ純粋にわが子のために、さらなる高みを目指されているように見える。就労経験もない紀子さまにとっては、皆に尊敬してもらえるような学歴をつけていくことが、悠仁さまにとって重要だと感じられているのではないだろうか。

道いっぱいに並ぶ卒業生たち
※写真はイメージです
学歴競争に参加する必要があるのか

しかし繰り返すが、学歴が「武器」となるのは、家業をもたない庶民、一般の国民である。

日本はまだ、メリトクラシー(能力主義)の神話が信じられている。「どのような階層に生まれても、実力こそが、その後の地位を決める」というものだ。実際には、生まれた家の経済格差によって、ある程度のコースは敷かれているうえに、よい学歴がよい就職や高い収入につながるという保証もなくなっているが、「良い大学に行くことで、良い就職が可能になる」という学歴信仰はまだまだ根強い。

教育社会学者から見ると、悠仁さまがこうした競争に参加する必要は何もない。むしろ、恵まれた環境や資源を活用して、競争に強いとされる高い学歴を追い求めることは、国民から反感を招いてしまうことになるのではないか。

国民が悠仁さまに願っているのは、在学中に、若いうちにしかできない経験をしていただくことなのではないだろうか。のびのびと充実した青春を謳歌おうかする悠仁さまの笑顔があればじゅうぶんである。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人

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