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神かクソか?史上最も評価が割れた映画とは?絶賛と酷評に二極化する作品の共通点

  • 2023.12.17
史上最も評価が二極化した伝説のカルト映画とは?
史上最も評価が二極化した伝説のカルト映画とは? / Credit: canva

日本では毎年1000本を超える新作映画が公開されています。

そこに旧作を含めると映画作品はこの世に星の数ほどあって、一体どれを観たらいいのか途方に暮れてしまうでしょう。

そんな中、ネット上では映画作品を星5つで評価するレビューサイト(Filmarksなど)が世界的に広まっています。

これを参考に観たい映画を決めている人も多いはずです。

しかし一方で、サイトの評価を見ていると「え、これ超感動したのに」と思っていた作品が星2だったり、「どこが面白かったの?」と批判していた作品が星4だったりと、人によって評価が真っ二つに割れる作品があります。

だいたいの作品は「まあ、そんなもんだろう」と評価が一致する中で、どうして大勢の感想が正反対になる作品があるのでしょう?

評価が二極化しやすい映画にはどんなものがあるのか、どのような特徴があると二極化しやすいのか。

これらの疑問について、統計データを中心に文化・経済・スポーツの動向を探るアメリカのニュースサイト「Stat Significant」が調査しました。

これはニュースサイトチームの仕事とはいえ、かなり統計研究に近い興味深い報告です。

目次

  • 「史上最低」と言われた伝説のカルト映画
  • 評価が二極化しやすい映画はこれだ!

「史上最低」と言われた伝説のカルト映画

皆さんは、世界中で”史上最低の映画(Worst Movie of All Time)”という悪しきレッテルを貼られた伝説のカルト映画をご存じでしょうか?

1978年、アメリカの映画評論家であるマイケル・メドヴェッドは、映画史上もっとも欠陥のある作品群をまとめた『The Fifty Worst Films of All Time(=史上最低の映画50本)』を出版しました。

しかし本の出版後、メドヴェッドは著名な映画評論家であるロジャー・イーバートを含む多くの識者から、「あの作品が抜けてるぞ」との指摘を受けました。

それが1959年公開のSFホラー映画プラン9・フロム・アウタースペースです。

『プラン9・フロム・アウタースペース』のポスター
『プラン9・フロム・アウタースペース』のポスター / Credit: ja.wikipedia

この作品はアメリカの映画監督であるエド・ウッド(1924〜1978)が手がけた作品で、「外宇宙からやってきた宇宙人が地球征服を企むもうまく行かないので、仲間を増やせとばかりにゾンビや吸血鬼を造る… 」という話です。

日本でもレンタルや市販のDVDで簡単に観れますが、ご覧になった方はお分かりの通り、UFOを吊ったピアノ線がもろに見えたりとB級ならではの作りの甘さが目立ちます。

メドヴェッドは本作を鑑賞後、つづく著作の『Golden Turkey Awards(=ゴールデン・ターキー賞)』にて、『プラン9・フロム・アウタースペース』こそ、史上最低の映画の名にふさわしいと高らかに宣言しました。

これが世界中に浸透したことで、悪しきレッテルが一般にも定着してしまったのです。

ところが、この評価が広まると同時に、本作を熱狂的に支持するファン層も現れ始めました。

『シザーハンズ』『チャーリーとチョコレート工場』の監督でお馴染みのティム・バートンもその一人です。

彼は『プラン9〜』の監督であるエド・ウッドを敬愛するあまり、1994年に自らの手で、そのものずばり『エド・ウッド』というタイトルの伝記映画を撮りました。

主演はバートン作品に欠かせない人気俳優のジョニー・デップが務めています。

エド・ウッド
エド・ウッド / Credit: ja.wikipedia

このエド・ウッドという人物自身、「アメリカで最低の映画監督」と言われており、映画へのほとばしる情熱を持っていましたが、残念ながら映画の方から愛されることはありませんでした。

しかし没後に、上映権を安く買われた彼の作品が深夜テレビの映画枠で繰り返し放送されたことで、カルト的な人気が出始め、一部で再評価の波が広まったのです。

こうして彼の代表作である『プラン9〜』は今や、世界で最も評価が二極化している映画作品とみなされるようになっています。

そこでStat Significantの調査チームは、賛否両論を巻き起こしやすい映画の特徴を調べることにしました。

評価が二極化しやすい映画はこれだ!

評価が二極化しやすい映画の共通点とは?
評価が二極化しやすい映画の共通点とは? / Credit: canva

チームは二極化の指標として、映画レビューサイト・MovieLensのデータセットを用いました。

MovieLensでは、日本のFilmarksと同じように、それぞれの映画作品が星1〜5で評価されています。

このとき、ほとんどの映画の評価は3〜4の狭い範囲内でスコア付けされていますが、評価が二極化する映画は1〜5の広い範囲でスコア付けされる傾向があります。

チームはこの標準偏差(平均からのズレを表す数値)の大きさを利用して、評価が二極化している作品を選定しました。

MovieLensのデータセットは、1995年から2015年の間に収集された2000万件以上のレビューを対象としています。

その結果、最も標準偏差の高い、つまり評価が二極化している作品のトップ15はこうなりました。

上から順に、

1位:プラン9・フロム・アウタースペース(1959)
2位:パッション(2004)
3位:トワイライト〜初恋〜(2008)
4位:ピンク・フラミンゴ(1986)
5位:悪魔のいけにえ(1974)
6位:トランスフォーマー ザ・ムービー(1986)
7位:ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999)
8位:トランスフォーマー/リベンジ(2009)
9位:ベイブ (1995)
10位:コックと泥棒、その妻と愛人(1989)
11位:ジャッカス・ザ・ムービー(2002)
12位:タンク・ガール(1995)
13位:ロッキー・ホラー・ショー(1975)
14位:エビータ(1996)
15位:バイオドーム(1996)

ここからチームは、評価が割れやすくなる映画の3つの傾向を特定しました。

その1:低予算のカルト映画

これは『プラン9・フロム・アウタースペース』『ピンク・フラミンゴ』『ロッキー・ホラー・ショー』を代表とする、低予算で製作されたものの一部にカルト的な人気がある作品群です。

これらの映画は小規模の劇場で深夜に上映されることが多く、主に犯罪やインモラルなど、世の中的にタブーとされる過激なテーマがよく扱われます。

低予算ゆえにセットや衣装の作りが甘かったり、道徳的に反感を買いやすいのですが、一部のファンはそれを愛嬌として好意的に受け入れているのです。

その2:フランチャイズ映画

フランチャイズ映画とは、例えば『スター・ウォーズ』や『トランスフォーマー』『トワイライト』など、同じ舞台設定を共有したシリーズ作品群のことを指します。

近年だと、アメコミヒーローを主役とするMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が絶大な人気を誇っています。

フランチャイズ作品は一般に、人気作品のシリーズ化による大衆受けを狙って作られるため、興行的に安定した成功を収めやすい傾向にあります。

その反面、作品ごとに大きなバラつきが出ないよう、お馴染みのストーリー展開にしたり、「人気キャラを出しておけば観客は喜ぶ」といった作りに陥りやすいため、根強い映画ファンからは何かと酷評されがちです。

その3:定番化したホラー映画

ホラーというジャンルは昔から、観客のターゲットが明確なため、作品の質と興行成績の間にほとんど相関関係がありませんでした。

ホラーの作り手たちは、一般大衆や映画評論家の意見など気にせず、ホラー好きのためだけに作品を作っていればよかったからです。

ところが70〜80年代にかけて、普段はホラー作品を観ない一般大衆にもヒットするホラー映画群がたくさん登場しました。

『悪魔のいけにえ』や『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などがそれに当たります。

このように良くも悪くも時代の流れに乗った作品は、ホラー好きでない人々や評論家の目にも留まってしまいます。

すると、陰湿なテーマや過激な描写に強い拒否反応を示す人々が低評価をつけて、二極化しやすくなるのです。

評価が二極化しやすいジャンルとは?

またジャンルごとの調べによると、ホラーは最も評価が二極化しやすいことが分かりました。

やはりホラー作品は好きな人と苦手な人が分かれやすいようです。

ホラーに続くのが「ファミリー映画」でした。

少し意外かもしれませんが、ファミリー映画は年齢の離れた親と子の両方にアピールするという難しい課題があるため、評価のばらつきも大きくなると考えられています。

その後にはSF、コメディ、音楽・ミュージカル系と続いていました。

さらにMovieLensには「タグ」といって、俳優の名前や題材など個々の単語にヒットする作品を検索して、その評価を調べることもできます。

そこでチームが最も評価が二極化しやすい「タグ」の統計を取ったところ、トップ5位は「低予算」「キリスト」「おバカ」「ミュージカル」「ジム・キャリー」となりました。

評価の二極化しやすい「タグ」を分析
評価の二極化しやすい「タグ」を分析 / Credit: Stat Significant – Which Movies Are The Most Polarizing? A Statistical Analysis(2023)

おそらく「キリスト(Jesus)」が入っているのは、キリスト教が深く浸透したアメリカならではの傾向で、キリストの描写や解釈に強い反感を持つ人が一部にいるためでしょう。

先の「最も評価が二極化した映画トップ15」の2位にランクインした『パッション』(2004)などはその代表です。

キリストのタグは、日本なら織田信長がこの代わりになるかもしれませんね。

しかしここまで来ると、皆さんはもう評価の二極化しやすい映画を簡単にプロデュースできるかもしれません。

例えば、ジム・キャリーを主役にイエス・キリストを演じさせて、それを低予算かつミュージカル風に作ればいいのです。

もちろん、作品の評価を二極化させる要素はこの他にもたくさんありますし、国や文化によっても変わってくるでしょう。

ただ同じ映画を見て、絶賛する人もいれば酷評する人もいて、人々の間に賛否両論が広がり、白熱した議論が巻き起こる。

これこそ映画という表現の醍醐味ではないでしょうか。

参考文献

Which Movies Are The Most Polarizing? A Statistical Analysis
https://www.statsignificant.com/p/which-movies-are-the-most-polarizing

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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