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鉄道好きの絶景グルメ旅【10】釧網本線編「SL冬の湿原号」で雪景色とつぶ焼き・駅舎喫茶を満喫

  • 2023.12.16

鉄道好きで鉄道写真のために全国を回る写真家の伊藤宏美が、カメラを持って出かける「鉄道好きの絶景グルメ旅」。各地で見つけた絶景や絶品ローカルグルメなど、素敵な出会いを紹介します。今回は北海道を走る釧網本線の旅です。

 

 

釧路は美しい夕日と「蓮葉氷」が見られる絶景地

釧網本線は網走駅から東釧路駅まで走っており、太平洋側からオホーツク海側へ越える絶景路線です。沿線でのグルメも楽しみながら、数日かけてゆっくり旅をしてみてはいかがでしょうか。

世界3大夕日が見られる釧路。特に北海道三大名橋のひとつ「幣舞橋(ぬさまいばし)」付近は夕日のベストスポットです。ベストシーズンは秋から冬。夕日を眺めに人々が集まります。

幣舞橋の近くにある商業施設「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」の前もきれいで、雪解けで濡れた路面が夕日に照らし出されます。

幣舞橋

住所:北海道釧路市北大通1

釧路と聞けば、大自然のイメージがありますが、町は製紙工場の香りがしています。冬になると大好きな蒸気機関車が走る町です。列車の名前は「SL冬の湿原号」。

寒さの厳しくなる釧路では、「蓮葉(はすは)氷」が見られることがあります。蓮葉氷とは、厳しい寒さで海水が氷盤となり、ぶつかりながら、蓮の葉のように丸い形になったものです。

寒い朝、釧路の町を出発した蒸気機関車が渡る釧路川でも、蓮葉氷が浮かぶことがあり、鉄道ファンを楽しませてくれます。

釧路川

住所:北海道釧路市

釧路で必食のご当地グルメ「つぶ焼き」

釧路市内では、朝に蒸気機関車と釧路川の蓮葉氷を楽しみ、きれいな夕日、そして夜にはおいしい食事を楽しめる町です。

釧路の町で、必ず食べたいのが「つぶ焼き」。釧路の飲食街の一角にある何年も続く老舗のお店「かど屋」でいただけます。

寡黙な店主が、カウンター席の目の前で、黙々と「青つぶ」を焼きながら、秘伝の醤油タレを注いでいます。丁寧に焼いてくれるアツアツのつぶ焼きの中身をそっと、楊枝で引き出します。ところが、最後まで千切れないように引き出すのが、なかなか難しいのです。

きれいに取れるとうれしいですが、最後までうまく引き出せない時は、木の板の上で貝殻をトントンと叩いて出します。沁みたタレがとてもおいしいので、食べた後は、貝の中に残ったタレを先っぽから丁寧に啜ります。

つぶ焼きの後にいただくのは、醤油ラーメン。真っ黒の濃い醤油ラーメンで、これもまた癖になるのです。

昔はつぶ焼きだけのお店でしたが、飲食街にあるため、常連のお客さんに締めのラーメンを出すようになり、メニューになったそうです。食べ物のメニューは2つだけ。連日、たくさんのお客さんでにぎわっている人気のお店です。

かど屋

住所:北海道釧路市栄町4-1

釧路の町を出て、遠矢駅の近くにある釧路神社からは、晴れている日に、雄阿寒岳(おあかんだけ)と雌阿寒岳(めあかんだけ)を両方見ることができます。

釧路神社

住所:北海想釧路郡釧路町字遠野52

タンチョウのやってくる釧路湿原

遠矢駅を出る辺りから、列車は釧路湿原を車窓に進んでいきます。広大な釧路湿原は、かつては海の中だったというのだから驚きです。

塘路(とうろ)駅付近のサルボ展望台・サルルン展望台からは、釧路湿原の中を行く列車を眺めることができます。

サルボ展望台・サルルン展望台

住所:北海道川上郡標茶町塘路

釧路湿原の間にある丘陵を蒸気機関車は力強く進んでいきます。

釧路湿原にはたくさんの動植物が生息しており、天然記念物のタンチョウも見かけることができます。鶴居村には、タンチョウを間近で観察できる施設「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」もあります。

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

住所:北海道鶴居村字中雪裡南

釧網本線の茅沼(かやぬま)駅も、タンチョウが訪れる駅。茅沼駅にはタンチョウの餌場があり、冬になると、駅にタンチョウが来るのです。蒸気機関車は、タンチョウを驚かせないために、汽笛を鳴らさずゆっくり発車します。

茅沼駅

住所:北海道川上郡標茶町コッタロ原野北17線

「SL冬の湿原号」の終着駅「標茶駅」

釧路から釧路湿原を抜け、木立の中を進んだ列車は、この列車の終着駅、標茶(しべちゃ)駅に到着します。

標茶駅では、蒸気機関車の到着と発車に合わせて、たくさんのおもてなしでにぎわいます。標茶町のPRキャラクターであるハッピーくろべえと、ミルクックさんも遊びにきます。

標茶駅では、到着した蒸気機関車が、釧路に折り返すための準備で、入れ替え作業が行われるのですが、その様子を見学することもできます。

2024年も、「SL冬の湿原号」の運転日が発表になりました。

斜里岳の見える釧網本線

標茶駅から先の釧網本線は、牧草地と草原が続き、だんだん山深くなります。阿寒国立公園や摩周湖などの観光地もありますが、釧網本線は釧北(せんぽく)トンネルで峠を抜け、緑駅に到着します。太平洋の釧路からオホーツク海側へ越えたことになります。

険しい山を越えた後、到着した緑駅は、駅名の由来の通り、緑に囲まれた静かな場所でした。

緑駅を過ぎると、広大な小麦、ビート、じゃがいもの畑が続いていきます。晴れの日には、斜里岳が見えます。斜里岳の向こうは、知床半島に続きます。

斜里に入ると、チョコレートのような香りがしてきます。ビート工場の香りです。この香りを嗅ぐと、斜里に来たなあと思うのです。ビート工場がある中斜里駅に、香りに釣られて必ず立ち寄ることにしています。

中斜里駅

住所:北海道斜里郡斜里町中斜里

オホーツクグルメラインの駅舎レストラン3店

オホーツク海に沿って進む釧網本線には、レストランや喫茶店の入った駅舎がいくつかあります。改札の隣の扉を開けたら、そこはレストラン。駅では、おいしそうな匂いがしているのです。

止別(やむべつ)駅にあるのは「ラーメンきっさ えきばしゃ」です。

人気のメニューは「ツーラーメン」。細切りのチャーシューに、白髪ネギの2種類の具が入ったラーメンで、「2種」と「通」をかけたネーミング。シンプルな塩味のラーメンですが、とてもおいしく、地元の方も訪れる人気のお店です。

流氷が見える駅としても人気のある北浜駅にあるのは、レストラン「停車場」。席はボックスシートで、網棚にはお飾りの荷物が乗っています。まるで、列車で旅しているような雰囲気です。

ラーメンから、洋食まで幅広いメニューがそろっています。「停車場ランチ」は、豪華なハンバーグでした。

藻琴(もこと)駅にも、渋い雰囲気のお店「トロッコ」があります。藻琴駅は大正時代開業の渋い駅舎で、映画『網走番外地』のロケ地でもあります。

注文した「トロッコランチ」は、大好きなものがすべてのっている“お子様ランチ”のような、夢のプレートでした。

今回の釧網本線は、主に釧路から上り列車に乗車した旅ですが、“自然とグルメの宝庫”を満喫できました。知床の山々と流氷を見るために、何度も行きたくなる場所です。

オホーツク海沿の網走〜知床斜里では、「流氷物語号」が走ります。冬の釧網本線で、旅してみてはいかがでしょうか。

[All photos by Hiromi Ito]

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