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必見!!体感できる彫刻世界へ~中津川督章(なかつがわよしふみ)木の形楽展~@柏

  • 2023.12.14

こんにちは、柏 おどりです。

芸術が身近で楽しめるような日常、そんな場所がパレット柏の市民ギャラリーにあります。パレット柏内柏市民ギャラリーは、柏駅より徒歩3分、DayOneタワー3Fです。ドンキホーテの向かい、柏の葉っぱがたくさんデザインされたビルの入り口のエスカレーターで3階までお越しください。

体感できる彫刻世界へ~中津川督章 木の彫刻展~

出典:リビングかしわWeb
出典:リビングかしわWeb

会期 2023年12月22日(金)〜12月27日(水) 時間 10:00〜17:00(最終入館16:30) 場所 パレット柏 柏市民ギャラリー(DayOneタワー3F) 料金 無料

中津川督章(なかつがわよしふみ)先生とは

柏市在住。京都府生まれ。京都市立美術大学彫刻家卒業。美大卒業後はデザインに関わる仕事に就く。東京のマネキン会社ではデザインを担当したトルソ(ボディ)やハンガーがあたり、香水・スーツで有名なフランスブランドのボディも手掛けたことがある。また、オリジナルのデザインを追求していたなかで、世界の最高水準を誇るイタリアのアート雑誌、『ABITARE』が取材にきたことも。会社勤め(デザイン)をしていくなかで、木の彫刻をはじめたが、幾何学的な形をより強調するため金属作品を制作していく。そして、会社勤めを辞めてからはほぼ木彫り制作一色になる。

ヴァレンシア(スペイン)国際陶磁器デザインコンペティション銀賞受賞、横浜彫刻展入選(横浜市営地下鉄仲町台駅に設置)、倉敷まちかどの彫刻展優秀模型、国民文化祭とちぎ95美術 野外彫刻入賞(西那須野町運動公園に設置)、個展・グループ展は多数開催。

彫刻=形楽

中津川先生:「絵画」や「彫刻」という言葉は、画いたり、彫ったりと作家の行動(制作)を表す言葉からつくられている。それに対し、「音楽」という言葉はよく出来ている。音を楽しむ、と書く。つくり手もそれを受ける(聴く)人も含まれる。私は自分の「彫刻」を「音楽」に倣い「形楽」と言い変えたい。先生は特に形や質感に関心が強いそうです。「形楽」とは先生が考えたことばで、読み方は「けいらく」でも「けいがく」でもなんでも良いそうですよ!

アートを楽しもう!!

今月22日からわくわくする展示が始まります。おとなもこどもも思わず声を出し、笑顔がこぼれることでしょう。柏市民ギャラリーにて中津川先生オリジナルのなんと木彫りの枕!が並びます。寝転んだり、さわったり、写真もOK。その際は作品を所定の位置から移動しないことだけお守りください。え!?寝るの!?そうです、どうぞ思い思いに寝転んで、頭を枕にうずめてください。この枕は堅い木でも快適に頭が支えられ、大抵の方の頭にフィットするような、いわばフリーサイズでできているようですよ。

出典:リビングかしわWeb

『夜はお日さんも眠る』(幼い頃の思い出)

上の写真は、前回の柏融展で中津川先生出品の『夜はお日さんも眠る』。こちらはお日さん専用ですので、お日さんと枕はくっついております。お日さんが水平線、もとい、枕に沈んでいくように、わたしたちも先生が用意してくださったわたしたち専用の枕に頭を沈めてみましょう。

枕シリーズ 自刻像とは

出典:リビングかしわWeb

ふとんから出るとシーツや枕に自身のぬくもりと自身の眠っていた痕跡をしめす抜け殻がありますよね。中津川先生は無意識に凹ませた自分の枕の形に興味をもち、当時使っていた2種類の枕をモデルにして、木に写しかえて彫ってみたのが枕シリーズの出発でした。まさに絵画でいう”自画像”であり、自ら無意識に刻んだ(凹んだ)ということで、初期の枕は『自刻像』と名づけられました。その後枕は『肖像』シリーズに派生、『胎生』へと変化していきます。この木彫り枕を欲しいとおっしゃった方もいらっしゃったそうですよ。あまりにも気持ちよかったのでしょう。収まりのよい形は快適であるものの、寝返りがうてないので、先生いわく1時間くらいなら眠れるとのことでした。

出典:リビングかしわWeb

右『病院・Ⅰ』左『病院・Ⅱ』 枕つながりで、こちらも前回の柏融展で中津川先生出品の『病院・Ⅰ』『病院・Ⅱ』。棺桶かベッドかわからない、ちょっと皮肉ったシュールな作品。

すわってみる お尻でみる

中津川先生:枕は首のつけ根から頭までを支える。その部分の形の凹みをつくることによってすっぽり収まる。同じ発想からお尻はどうだろうか、と思うのは当然の成り行きである。比較的堅い頭に代わり、柔らかいお尻を支える形はかなり趣が異なる。頭は包まれる快感であるが、お尻は当たりの感覚である。なるほど、お尻でみる【お尻で視る】とはそういうことなんですね。実におもしろいです!白樺文学館の楠木の椅子、中村順二美術館のモチの木のベンチも今回の展示で実際に座ってお尻で視ることができます!

無意識に誰もがやっている彫刻

出典:リビングかしわWeb

『石けん』檜 1988

中津川先生が彫刻をはじめようか、と考えていたころの作品だそうです。私はてっきり最近の作品だと思っていました!とても現代的な発想で斬新です。『石けん』は手を洗うという行為によって減っていく形を6段階に木に写し代えたものだそうです。手で何かを作るとき、当然頭も使っているはずですよね。しかし無意識に自分自身がつくりだしているもの、誰もがやっている彫刻があるという。それが『石けん』であり、先生はこの手と頭がつながらない面白い造形を発見した時、とても高揚したそうです。そして先生は、このように「手は時に勝手に不思議な造形作品を作っていますよ」、と他人に知らせたくなったそうです。

樹木の中心とは

出典:リビングかしわWeb

白樫発芽標本 2018アトリエに積もった白樫の実から発芽した苗木を引き抜くと、実をつけたままのがあったそうです(写真上)。中津川先生:実から上に将来幹となる部分が伸び、下方に向って根が伸びている。やはり樹木の中心は発芽部分、地表付近の幹とも根とも区別しがたいところのようである。つまり伐り倒されたあとに残された根っこそのものである。その根っこを、根と幹の中心に向って彫り進めると樹木の中心と思われる部分が見えてくる。

出典:リビングかしわWeb

樹木の核 柿 2001

彫らないと見ることのできない樹木の中心は、自然の造形そのもので、明らかにこれは彫刻家としての造形ではない。しかし、彫刻家は彫ることによって木の中心を見ることができる。画家は当然樹の表面は見えても内部まで見ることはできない。彫刻家の私が見たかったものは「木の中の風景」である。そして、先生が彫ってくれたからわたしたちは今、木の中心を見ることができるのです。きっと言われるまで疑問にも思わなかっただろう風景を先生が見せてくれました。

白樺教育館の『てとて』

出典:リビングかしわWeb

『てとて』2003年 白樺教育館

こちらは白樺教育館の玄関にある手の把手。中津川先生:白樺教育館では、手と手の触れ合いから毎日がはじまる。把手の手と、もう一方の手は子どもたちをはじめとする教室への来訪者の手である。手と手の情景が美しいと思い、手の把手を略して『てとて』という作品名にしたそうです。私もこの手を握って引っ張って扉を開けました。実に握りやすくて、優しい手でしたし、何か楽しい1日になりそうな予感すらしました。また、把手としての不便さは全く感じませんでした。先生は形に強い関心があるため、もっと細くて美しい手にしたかったそうですが、あまり指を尖らすと、ぶつかった時など危ない感じがしたので、あえて丸くてふっくらとした手にしたのだそうです。

出典:リビングかしわWeb

こちらは内側の把手。教育館を後にする際は手のひらで押すのです。なんて素敵なアイディア!こんな把手はいまだかつて見たことがありません!

半円に削りとられた輪

出典:リビングかしわWeb

こちらは今回取材で先生を訪れた時に見せていただいた、一見シンプルだけど珍しい形のバングル。この木はとても軽く、なめらかで、柔らかく感じました。先生の刻印入り。

自然に囲まれた環境で自然と向き合い気づくこと

彫刻の仕事はそれなりの空間・作業場が必要であるため、ご友人の写真家、森かずおさんから土地を借り(木材などの提供も受けられていました)、中津川先生は、白樫や欅が茂った森の中にアトリエを建てました。そこで自ら薪を割ってストーブを焚き、音楽に精通するご友人にオーディオをセットしていただいて美しい音楽を聴きながら制作活動を28年間されてきました。しかし、森かずおさんが急逝し、アトリエを離れた今、形楽(彫刻)の手も止められています。先生はこのアトリエで今まで気づかなかった木の魅力に気づいたそうです。腐った木、べたべたとした木、虫が巣くう木…生命体であったが故の樹木の痕跡と記録を間近にし、削るという行為でそれを抽出していった先生の作品はおおらかで生き生きとして、観ている方も楽しくなる、おもしろい作品ばかりです。先生自身がこの環境で楽しくのびのびと制作していたからなのかもしれません。

出典:リビングかしわWeb

『春の小川』 中津川先生:「河童がなんとなくでそうな感じだったから川を歩かせてみた」

ふだん感じないことを感じるために

中津川先生の作品は目の不自由なかたにも楽しんでいただけます。見て(視て)、さわって、時には嗅いだりして一緒に思いっきり楽しみましょう!美術館とは楽しむもの、ふだん感じないことを感じるために行くんだよ。と教えてくださった中津川先生。ふだん感じないことを感じるって、素敵なことですよね。今年もあとわずか、年末は寒くなりそうです。暖かい服装でぜひ遊びにいらしてください。クリスマスも皆さまのお越しをお待ちしております。

柏 おどり

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