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真面目さって狂気。菅野美穂が京都で語った『ゆりあ先生の赤い糸』出演を即決した理由

  • 2023.12.13

菅野美穂、クラシックとモダンの邂逅。【Miho Kanno IN KYOTO】後編

菅野美穂さんと訪れたのは、木々が色づくほんの少し前の京都。観光客で賑わうエリアから西に外れた静かな古刹「妙心寺 退蔵院」を特別にお借りし、撮影を行いました。纏うのはエルメスやヴァレンティノ、フェンディなど、メゾンブランドの秋冬コレクション。和と洋、クラシックとモダン……相反する世界観が不思議と調和する、スペシャルなカバーストーリーをお届けします。デビュー30年の節目を迎えた俳優・菅野美穂さん。40代を折り返した今も清々しいほどの真面目さをたずさえて新たな挑戦に向かっている最中。

今季のヴァレンティノを象徴する「ブラックタイ」があしらわれたミニドレス。菅野さんが着こなすのは、真っ白な襟とカフス、裾のフリルが可憐な1着。ドレス¥594,000(ヴァレンティノ)、タイ¥60,500、イヤーカフ上¥53,900、イヤーカフ下¥37,400(全てヴァレンティノ ガラヴァーニ/全てヴァレンティノ インフォメーションデスク)

得難い出会いに感謝。難役でも迷わなかった

—現在、主演ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』が放送中です。突然、夫の介護が始まり、夫の彼氏や彼女、隠し子の発覚など、人生における試練やトラブルが一度に降りかかる難しい役ですが、オファーが来たときの心境は?
 
「実は迷うことなくお受けしました。まだちょっと子どもが小さいというのもあって、以前に比べて携われる作品がすごく少なくなった中で、これだけやりがいのある作品でお話をいただけたのが光栄なことですし、得難い機会。脚本が橋部敦子さんであることも大きかったです。これまで橋部さんの脚本に何度も感動して涙してきたので、今回ご一緒できることが本当に嬉しかった。三田佳子さんと共演できることも夢のようです。芸能界に入る前に、三田さんの映画『遠き落日』を観に行って、子ども心に母の愛にすごく感動したのを覚えています。『三田さんと私が共演できるの!?』と、ちょうど聞いたときに焼肉屋さんにいたんですけど、火加減が命のネギタン塩を焦がすほどびっくりしました。逆に今になって、私ちゃんと演じられているかな? と心配になっています」

—演じているゆりあ先生について、菅野さんの心に響いた部分は?
 
「損得ではなく、どこか人に対して寛容なところはすごいなと思います。真面目過ぎて全てのトラブルをたったひとりで背負いにいく愚直さもありながら、夫以外の男性に心が惹かれてしまう。ゆりあ先生を応援したくなるのは、決して完璧ではなく、そういった矛盾を抱えているから。頭だけでも演じられないし、心だけでも演じられない役であり、私にとっても挑戦なんだなと思っています。改めて感じたのは、真面目さって狂気でもあるなということ。“こうあるべき”という真面目さは、気づかないうちに自分を壊してしまうかもしれない危うさがあって、真面目=正義だと思うほど苦しさや辛さを飲み込んでしまいがち。自分が壊れる前に違う選択をすることは逃げでも間違いでもないので、ゆりあさんの生きる姿が何か考えるヒントやきっかけになったら嬉しいですね」

ジャケット¥438,900、シャツ¥181,500、パンツ¥218,900、シューズ¥207,900(全てザ・ロウ/ザ・ロウ・ジャパン)、パールネックレス¥990,000、ロングネックレス¥682,000、ダブルフィンガーリング¥792,000(全てTASAKI)

鈍くなっていく自分を受け入れるけどあきらめない

—菅野さんも真面目に頑張る側の人ですよね。
 
「真面目に頑張るって損だなと思うこともありますが、そもそも頑張れる事自体が実はとても幸運なこと。健康があって、その機会があった上で成立することなので。俳優の仕事は、スポーツ選手と似ている部分があって、『前はもっと早く台詞を覚えられたのに』と自分が鈍くなっていく現実と向き合っていかなきゃいけない。でも、現場ではキャリア63年の三田さんが、台詞を書き写してマーカーを引いたり、衣装の下に肉襦袢を着ておばあちゃんらしさを演出して、立ち方、歩き方も研究されている。あれだけのキャリアがある大先輩が新鮮な気持ちで向かっている姿を見たら、弱音なんて吐けない。同時に、若い共演者さんの瑞々しい感性にもハッとさせられる年齢になりました。改めて人の心に訴えるのはキャリアだけではないと痛感します」

—受け入れたり、抗ったり。その心意気がゆりあ先生の存在感とも重なるように見えます。
 
「原作のゆりあ先生は、背が高くて骨格がしっかりした女性として描かれているので、見た目でいえば私はしっくりこないと思います。けれど、どう頑張っても身長は伸ばせないですし、それ以外の部分でゆりあさんを表現するだけ。私でいいと言ってくださった原作者の入江先生にドラマを見てもらうとき、言い訳しないでいられるように引き続き頑張ります」

「手持ちの服に新しいエッセンスを施し、大切に着続ける」。そんなドリス ヴァン ノッテンの今シーズンのコレクションから感じる意思は、私たち日本人の「着物」に対する想いと通じるものがある。トレンチコート¥338,800、トップス¥151,800、パンツ¥169,400(全てドリス ヴァン ノッテン)

妙心寺 退蔵院
みょうしんじ・たいぞういん_日本最大級の禅寺「妙心寺」内の46の塔頭寺院のひとつで、室町時代である1404年に創建。初期水墨画の代表作である国宝「瓢鮎図」を所蔵していることで有名。ほか、「元信の庭」や「余香苑」、「陰陽の庭」などの庭園を有し、四季折々の豊かな自然を楽しむことができる。なかでも見事な「紅枝垂れ桜」は、過去に「JR東海 そうだ 京都、行こう。」のキャンペーンに登場するなど、退蔵院を象徴する存在。

菅野さんの行きつけ in 京都

食べることが大好きな菅野さんが教えてくれた、京都のおいしいお店3件

祇園びとら、

「和のフレンチ。前回の京都ロケで伺って美味しくて感動しました。ぜひ再訪したいです」

京都 本家第一旭本店

「昔ながらの醤油ラーメンに九条ネギがたっぷり。京都駅から近いのもいい」

京湯葉 千丸屋

「地のものをいただくようにしているので、京都では千丸屋さんの湯葉料理は外せない!」

profile_かんの・みほ/1977年8月22日生まれ。埼玉県出身。1993年に俳優デビュー。直近の出演作に、ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』、映画『明日の食卓』『仕掛人・藤枝梅安』シリーズなどがある。現在、主演ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』がテレビ朝日系にて毎週木曜夜9時から好評放送中。

photo:TISCH[MARE Inc.] styling:CHIKAKO AOKI hair & make-up:KEIKO CHIGIRA[cheek one] produce:MAKI KONIKSON[Konikson Productions,LLC.] model:MIHO KANNO interview & text:HAZUKI NAGAMINE

otona MUSE 2024年1月号より

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