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新NISAで安易に手を出してはいけない…「1万円で買える」超低位株にひっかかる人がはまる心理的な罠

  • 2023.12.13

有名企業の株式にも1万円程度で買えるものが少なくない。「新NISAで買ってみようか」と思っている人もいるかもしれないが注意が必要。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「宝くじも同じだが、儲かる確率を実際よりも高く感じてしまう心理の罠にはまってしまう可能性がある。冷静に考えてほしい」という――。

複数のショッパーを手にごきげんで渋谷の街を歩く女性
※写真はイメージです
有名企業でも1万円以下で買える銘柄は意外にある

1株100円程度、もしくは100円を割り込むような銘柄は少なくありません。

ヒロタのシュークリームでおなじみ「ヒロタグループホールディングス」(88円)、サマンサタバサのバッグで有名な「サマンサタバサジャパンリミテッド」(106円)など、知名度のある会社の中にも、100円を割り込む銘柄は数多く存在します。

株式は100株単位で売買できるので、1株100円程度であれば、1万円程度で買えるわけです。

ですので、極めて少額から投資できるお手軽さ、そして、極めて低い株価から、その上昇余地の大きさ(伸びしろ)に期待して、そのような銘柄に手を出す(出そうとする)人は少なくありません。

しかし、それらは投資対象として、魅力的なのでしょうか?

一般には、株価500~1000円以下の銘柄を「低位株」、株価100円以下ともなれば「超低位株」とも言われるのですが、そんな超低位株の中には、業績低迷が続き、財務内容も悪く、将来性もない企業も少なくありません。

とくに株価が50円を切るような銘柄など、市場に見放され、放置されている可能性も高く、「ボロ株」と揶揄されることもあります。

ダメだと分かっているのに、なぜ投資してしまうのか

経営再建中、上場廃止秒読みの銘柄も珍しくありません。

それゆえに、超低位株の大幅上昇など、めったにありません。

極めて低い株価ゆえに、いったん上昇モードとなれば、わずかな期間で大きな利益を得るチャンスはあるわけですが、実際のところ、超低位株のほとんどは超低位のまま、ずっと放置されているのが現状です。

私自身、ホテル運営の「アゴーラホスピタリティグループ」(23円)、いきなりステーキの「ペッパーフードサービス」(106円)、紳士服の「タカキュー」(79円)など、多くの超低位株を保有しています。

しかし残念ながら、そのどれ一つ、株価は上昇することなく、超低位のままです。

コロナショック以降、堅調な株価相場ではありながら、超低位株は完全に「蚊帳の外」状態なのです。

そうです、ずっと安値で放置されている超低位株の急騰劇など、相場全体が少し堅調なくらいでは、起こり得ることはありません。

超低位株の急騰劇は、奇跡に近いと言っても過言ではありません。

それは、私も十分に分かっております。

そしてそれは私だけでなく、超低位株に投資する人のほとんど人は、十分に分かっていることでしょう。

それでも、株価急騰を期待して、超低位株に投資する人は少なくないわけですが、それは、いったいなぜでしょうか?

「ダメ元」と思いながらひそかに期待してしまう

それは、「ダメ元」心理によるところが大きいかと思われます。

超低位株が突如、上昇モードに切り替わる可能性は極めて低いわけですが、しかし、その確率は決してゼロではありません。

ゼロではない以上、「ダメ元」でチャレンジしてみようという心理は、(超低位株に興味ない人も)理解できるのではないでしょうか? もし上昇モードに切り替われば、少ない元手で大きな利益が得られるチャンスなのですから。

そして、これはまさに、宝くじを買う感覚に似ているのかもしれません。

宝くじ一等の当選確率はおよそ1000万分の1と言われていますが、これはあまりにも低く過ぎて、まったく実感の湧かない数字ですね。

ただ、このように「極めて低い確率」については、「体感としては、実際の確率よりも高く感じる」と言われています。

宝くじを買う人は「ダメ元」と思いながらも、でも実はひそかに「でも、当たるかも」とも思っているのは、そのような「心のクセ」があるからです。

実際の確率(1000万分の1)通りに実感すれば、宝くじなど、まず、買う人などいないでしょう。

ちなみに、飛行機が墜落する確率は10万分の1らしく、これも極めて低い確率で、ほぼゼロと言っても良い数字です。

しかし、飛行機に乗るときには「大丈夫かな……」とドキドキしてしまう人は多いわけで、これはまさに、「極めて低い確率は、実際の確率よりも高く感じる」からですね。

「極めて低い確率」は実際よりも高く感じられる

超低位株が上昇モードに切り替わる確率は、分かりません(私の知る限り、公のデータはない)。

さすがに、宝くじの当選確率や飛行機墜落の確率よりは高いでしょうが、それでも、極めて低いことは間違いありません。

そして、超低位株を買う人は、その実際の確率よりも高く感じていることも間違いないでしょう。

だからこそ、買うわけですね。

ちなみに、私は超低位株を10銘柄以上保有していますが、これまで、上昇モードに切り替わった銘柄はゼロ。

にもかかわらず、私の感覚としては、低迷を続ける超低位株が上昇モードに切り替わる確率は10~20%くらいに感じてしまっています。

もちろんこれは、私が勝手に(期待込みで)感じてしまっている数字であって、実際の確率よりも、かなり高く見積もってしまっていることは分かっています。

株式市場のボードの前で、スマホの数字を確認している女性
※写真はイメージです

頭では分かっていても、そんな「心のクセ」は、抗いがたいものがあるわけです。

なお、私の保有する超低位株は、良くて現状維持、中には、低い株価がさらに低くなった銘柄もあり、残念ながら、私の超低位株投資においては、含み損を抱えた状態が続いております。

急騰することもあるが利益を得るのは難しい

残念ながら、超低位株が「継続的な上昇モード」に切り替わることはほぼないわけですが、「一瞬の急騰劇」であれば、それほど珍しくはありません。

たとえば、超低位株で知られる不動産会社「REVOLUTION」(17円)は、2019年秋ごろ、それまで10円程度で推移していた株価は、一気に80円超まで跳ね上がりました。

その後急落、2020年春には10円台まで戻るも、同年夏には再び70円超まで急騰し、急落しました。

このように、株価が突然跳ね上がり、そしてすぐに急落するという「一瞬の急騰劇」は、超低位株によく見られる現象です。

これは意図的に株価が操作されているケースが多く、そのような銘柄を「仕手株」と言います。

超低位株は、そんな仕手株となる可能性が高いのです。

そんな急騰劇の一瞬、株価上昇のピークで売ることができれば良いのですが、通常、そんな芸当はほぼ不可能です。

多くの場合、「おおっ」と思っているうちに、株価はピークを付けて、急落してしまうことでしょう。

なので、そんなことはほぼ不可能にもかかわらず、「急騰したときに売っていれば……」と、ただただ悔しい思いをするだけなのです。

下手すれば、急騰時に思わず追加で買ってしまい、その後の急落で損失を被るリスクもあります。

いずれにせよ、そんな「一瞬の急騰劇」の際には、株価の動きに振り回されるだけで、良いことはないのです。

「以前より株価が安くなった…」お手頃感に要注意

あと、超低位株で気を付けたいのが、「以前の株価は高かったのに、超低位株の水準になった」銘柄です。

以前は、それなりの株価であった超低位株の場合、余計にお得感を感じやすく、また、「以前の株価水準に戻れば、大儲け」との期待感もあって、ついつい手を出してしまいがちなのです。これも、心のクセと言えるでしょう。

しかし残念ながら、いったん超低位株の水準まで沈んでしまえば、多くの場合、そこから這い上がるケースは少なく、むしろ、さらに下落することも少なくありません。

そもそも、以前はそれなりの株価だったのに、超低位株の水準まで下落するということは、何らかの致命的な要因があるわけですから。

たとえば、冒頭にも挙げた「サマンサジャパンリミテッド」(106円)の株価は、2014年夏ごろには1600円でした。料理レシピサイト最大手の「クックパッド」(118円)は、2015年夏ごろには2880円まで上がりました。そして、私の保有する「ペッパーフードサービス」(106円)に至っては、2017年秋ごろには、株価はなんと8000円を超えていました。

それゆえに、「以前の株価8000円からすれば、今の株価はタダみたいなものだ」と、赤字続きの会社に、ついつい手を出してしまったわけです。

そしていずれも、現在の株価は100円前後と、以前の株価から見ればとんでもなく安い水準ではありますが、残念ながら、株価上昇の見込みはほぼなく、ずっと低迷を続けています。

新NISAで投資デビューする人が知っておきたいこと

また、超低位株は極めて少額から投資できるので、「損をしても、たかが知れている」とばかりに、銘柄分析もそこそこに、株価だけで判断して、投資が雑になりがちなのも要注意です。

超低位株に傾倒し、そんな雑な投資ばかりをしていると、他の投資にも悪影響を及ぼしかねません。

それでは最後に、投資対象としての超低位株についてまとめると、以下の通りです。


・市場に見放されたボロ株(業績低迷・財務内容が悪い・将来性なし)が多い

・よって、本格的な株価上昇モードになることなど、めったにない

・しかし、「極めて低い確率は、実際の確率よりも高く感じる」「かつて高い株価だった超低位株は、お手頃感を強く感じる」といった心のクセから、ついつい手を出しがち

・「一瞬の急騰劇」はあり得るが、多くの場合、ただ株価の動きに振り回されるだけ

・投資判断が「雑」になりがちで、他の投資にも悪影響を及ぼすかも

来年から始まる新NISAもあり、投資の第一歩として、冒頭でも書いたとおり、「少額からできるお手軽さ」「株価上昇余地の大きさ」から、超低位株に関心を持つ人も多いかもしれません。

しかし、上記のポイントしっかり認識して、極めて低い株価に目を惑わされることなく、慎重に判断したいものです。

※株価は2023年12月5日現在

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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