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日本の世界遺産【19】産業国家形成の軌跡「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」

  • 2023.12.13

19世紀半ばから20世紀の初頭にかけて、日本では主に重工業が急速に産業化しました。それを主導したのは、「長州ファイブ」と呼ばれる5人の青年です。彼らは植民地支配から日本を守るため、産業を基盤とした国づくりに尽力しました。今回は、日本の産業勃興の軌跡をたどれる遺跡群「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」に注目。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもわかりやすくご紹介します。

三菱長崎造船所旧木型場

 

 

長州ファイブが明治日本の産業革命を主導「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」

三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン

1863年、鎖国していた日本を命を賭けて飛び出し渡英した長州ファイブは、帰国してから明治政府の中枢において明治日本の産業革命を主導しました。長州ファイブのメンバーは、後の初代内閣総理大臣・伊藤博文、外務大臣・井上馨、鉄道庁長官・井上勝、造幣局長・遠藤謹助、工部卿・山尾庸三と、現在の日本の基盤を築いたともいえる錚々たる面々です。

下田の黒船の遊覧船 ©️KO-TORI / Shutterstock.com

突如、江戸湾に現れた黒船に驚き、国の安泰を危惧した日本は、鎖国政策を撤廃。そして、明治新政府に政治が移ると、社会制度の大改革を成し遂げ、開国と明治維新を乗り越え、半世紀で人を育て、産業革命を受容する社会システムを築きました。

初代内閣総理大臣・伊藤博文がプリントされた旧日本紙幣

意志をもって短期間で産業化に成功したのは、非西洋諸国で日本が初めて。世界に近代国家として認知されるまでに至りました。

19世紀半ばから20世紀の初頭にかけて重工業(製鉄・製鋼、造船、石炭産業)の急速な産業化を時系列でたどれるのが、九州、山口県を中心に8県11市と、広範囲に広がる23の遺跡で構成された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」です。2015年に世界文化遺産に登録されました。

明治日本の産業革命遺産の見どころは?

グラバー商会を開設した、スコットランド出身のトーマス・グラバーは、1859年9月に上海から開港して間もない長崎に来て、造船・炭坑・鉄道などにおける新しい技術を日本にもたらしました。同時に、新しい政府の設立を目指した薩摩藩、長州藩、土佐藩を支援。政治的な改革を推進した重要人物のひとりでもあります。

そんなグラバーが接客を目的として建てたのが、長崎市南山手町に位置する日本で最も古い木造洋風建築「旧グラバー住宅」です。屋根の桟瓦(さんがわら)葺き、L字型バンガロー、コロニアル風大型窓などが特徴的で、当時の三菱重工業長崎造船所を一望できる丘に建設されました。

貿易、炭鉱、造幣、三菱の顧問、キリンビールのいずれもの舞台となった旧グラバー住宅は一度は訪れたいスポットだといえるでしょう。現在は「グラバー園」の一部になっており、同園では、居留地時代から残る外国人住宅と長崎市内に点在していた洋館も見学できます。

また、幕末期の代官である江川英龍が手がけ、後を継いだ息子の英敏が完成させた、静岡県伊豆の国市にある「韮山反射炉」も必見です。実際に稼働した反射炉として、国内で唯一現存していて、日本の近代化の第一歩を示す貴重な建物になっています。反射炉とは、銑鉄(せんてつ)を溶かして優良な鉄を生産するための炉のこと。内部の溶解室の天井部分は浅いドームになっており、見学も可能です。

街歩きを楽しみながら、当時の雰囲気を味わいたいのなら、山口県の「萩城下町」を訪れるのがベスト。白壁の重厚な武家屋敷や土塀、鍵曲といった、かつて城下町として栄えた町並みが今も残っています。幕末から明治維新にかけて活躍した高杉晋作や木戸孝允などの偉人の生家が現存するほか、古民家カフェや雑貨屋、史跡も点在。観光しながら学べますよ。

さらに、長崎県長崎市にある要塞のような人工島「端島炭坑(軍艦島)」も一見の価値ありです。炭鉱開発のために周囲を埋め立てられ、島全体が護岸堤防で覆われています。最盛期には、狭い島内に5,267人もの人々(炭鉱従事者とその家族)が過密状態で暮らしていました。しかし、主要エネルギーが石炭から石油へと移行。衰退の一途をたどり、1974年に閉山し、無人島に。現在も朽ちたコンクリート造の高層アパートが残っています。軍艦島上陸ツアー船に乗船して、ぜひ訪れたいですね。

旧グラバー住宅、韮山反射炉、萩城下町、端島炭坑(軍艦島)への行き方

今回、見どころとしてご紹介した4カ所への行き方は下記の通りです。

旧グラバー住宅

路面電車「大浦天主堂」から徒歩約7分

路面電車「石橋」から「グラバースカイロード」経由で徒歩約3分

旧グラバー住宅

住所:長崎県長崎市南山手町8–1

電話:095-822-8223

開園時間:8:00~18:00(最終入園受付は20分前)

休園日:年中無休

入園料:一般620円、高校生310円、小・中学生180円

韮山反射炉

伊豆箱根鉄道「伊豆長岡駅」から徒歩約30分

韮山反射炉

住所:静岡県伊豆の国市中268

電話:055-949-3450(韮山反射炉ガイダンスセンター)

観覧時間:9:00~17:00(3〜9月)、9:00~16:30(10〜2月)

観覧できない日:毎月第3水曜日(この日が休日の場合はその翌日)、年末年始(12月31日~1月1日)

観覧料:一般(高校生以上)500円、生徒・児童50円

萩城下町

JR「東萩駅」から徒歩約20分

萩城下町

住所:山口県萩市南古萩町付近

電話:0838-25-3139(萩市観光課)

端島炭坑(軍艦島)

長崎港から軍艦島上陸ツアー船に乗船、約40分

端島炭坑(軍艦島)

住所:長崎県長崎市高島町字端島

電話:095-822-8888(長崎市コールセンターあじさいコール)

手軽に異国を味わえる! 東山手地区にある石畳の「オランダ坂」

旧グラバー住宅と端島炭坑(軍艦島)のほか、小菅修船場跡や高島炭坑 北渓井坑跡など多数の遺構が残る長崎市を訪れたら、ぜひ「オランダ坂」にも立ち寄ってみてください。

現在、主に活水女子大学下の坂、活水坂、誠孝院(じょうこういん)前の坂を「オランダ坂」と呼んでおり、洋風の建物が立ち並んでいて、異国情緒を手軽に味わうことができますよ。

オランダ坂の石碑のそばにある水色の洋館「東山手甲十三番館」は入館料が無料です。カフェスペースを併設しているため、休憩するのもおすすめ。

また、長崎といえば「ちゃんぽん」。野菜や魚介類といった具材と、ちゃんぽん麺で作られる、長崎グルメの定番メニューです。お店によって麺の太さや、具材、味つけが異なりますので、お気に入りのお店を探してみてくださいね。

オランダ坂

住所:長崎県長崎市東山手町

電話:095-822-8888(長崎市コールセンターあじさいコール)

交通アクセス:JR「長崎駅」から路面電車(崇福寺行)で約7分、新地中華街で乗換(石橋行)で約2分、「メディカルセンター」下車徒歩約4分

[参考]

明治日本の産業革命遺産

九州の世界遺産|九州観光情報サイト「九州旅ネット」

長崎市公式観光サイト

長崎観光/旅行ポータルサイト ながさき旅ネット

伊豆の国市

山口県観光/旅行サイト おいでませ山口へ

[All photos by Shutterstock.com]

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