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まるで宝石箱! 彩り豊かな「茶請け」と愉しむ超贅沢な“お茶体験”

  • 2023.12.12

お茶、食事、そして宿まで。継承し、未来へ築きあげた空間。

西国立駅から徒歩3分ほどで現れる正門。

2023年4月、旧無門庵跡地に誕生したオーベルジュ〈Auberge TOKTIO〉へやってきました。無門庵は1940年代から続いていた老舗旅館。戦時中には陸軍将校の専用旅館や、神風特攻隊の最後の宴が催されるなど、歴史を刻んできた場所です。

紅葉した木々が美しいお庭を抜けて。

門をくぐると、立派なお庭が広がっています。外からは想像できないほど広い敷地にびっくり。再開発の話がもちあがったとき、一時はここを取り壊す案も出たそうですが、こうしてオーベルジュとして再出発を果たしました。

入口で温かく迎えてくれる。

お庭の一角にある茶房は、宿泊客以外の人も予約することができます。茶房の入り口まで辿り着くと「ようこそ、いらっしゃいました」と係の方が中へ案内してくれます。丁寧なおもてなしに一層ワクワクが膨らみます。

茶房内のカウンター席

引き戸を開けると、現れたのはモダンなコの字型のカウンター。真ん中には釜や茶器が並びます。宿泊は1泊34万円〜とかなり高級ですが、茶房でいただく茶請箱は1人7,590円〜と気兼ねなく楽しめる価格設定です。

茶房の奥には8名ほど座れる茶室も。

さらに奥へと進み、茶室に案内してもらいました。ガラスのはめられた雪見障子から歩いてきた美しいお庭を眺めつつ、掘りごたつの席で脚を伸ばして座れるのも嬉しい。

日本の茶文化を再認識。茶を愉しむための“お茶請け”にも創意工夫が。

左からラベンダーと浅煎りほうじ茶、北あかりの揚げ焼き。

お盆に乗ってやってきたのは、ラベンダーと浅煎りほうじ茶の葉。香りを楽しんだら、熱湯で淹れたお茶を氷で急冷した“はじまりのお茶”からスタート。一緒にいただくのは、北海道産の北あかり。2年越冬した冬じゃがいもを揚げ焼きしたもの。上にはバターを添えて。糖度が高くねっとりとした食感はまるでスイーツのよう。美味しい!

上段下段それぞれ5種類の旬の茶葉が並びます。

続いて登場したのは、2段になった細長い木箱。上段からはお食事に合わせる茶葉を、下段からはお菓子に合わせる茶葉をそれぞれ選びます。一つ一つ説明を聞きながら、どれにしようかな?

茶葉によって淹れ方もさまざま。

私が選んだのは宇治の玉露「ごこう」と、徳島の後発酵茶「阿波番茶」。全て説明を聞いてから、どちらも味の想像がつかなかったものを選んでみました。どんなお茶が出てくるのかな?と、ワクワク。

宇治の玉露「ごこう」

まずは京都府宇治の玉露「ごこう」から。分銅を使って目の前で計ってくれます。人肌まで冷ましたぬるめのお湯を少しだけ注いで一煎目を。最後の一滴が落ちるまで丁寧に淹れられていきます。

めっちゃ出汁!

こ、これは…お茶というより、もはや出汁。ぎゅっと凝縮された旨みが舌に触れるたび、脳を駆け巡ります。朝飲んだら鼻血でちゃうかも(笑) 初めて味わうおいしさに感激!

お食事は旬の素材を使った5品。

巨峰のキャロットラペ、昆布出汁の野菜のピクルス、4種のきのこと栗のキッシュ、スモークサーモンとハーブクリームチーズのブリオッシュサンドなど。館内で使われている器は、このオーベルジュを建てたときに伐採した敷地内の木や、掘り起こした土を再利用して作られています。この箸も切り倒した樫の木から作られているんだとか。細部にまで想いが宿っています。

お菓子は和も洋もさまざまな10種類。

〈Auberge TOKTIO〉の茶請箱は、和もあり洋もあり。さまざまな種類のスイーツが1つの漆塗りの箱に並んでいます。本場フランスで地方のお菓子作りを学んできたパティシエが、日本の旬の食材を取り入れながら、型に囚われない自由な発想で作り上げたものばかり。

いただきます

「作り置きはせず、すべて作り立てをお出ししています。席の限られた茶房なので、自然とそうなるんです。食材も何か基準を設けるているわけではないですが、自然と体が美味しいと感じるものを選んで使っています」と話すのは、総料理長の石井義典さん。

お茶との相性やいかに?

お菓子に合わせて選んだのは、徳島県上勝の後発酵茶「阿波番茶」。乳酸菌で発酵した独特な製法が気になりました。ほんのり酸味を感じる香りに、味はプーアル茶に似ている気がする。もっと刺激的な味を想像していたけど、すごくまろやかで飲みやすい。

最後に玉露の出し殻を酢醤油でいただく。

3煎だしたあとの玉露の茶殻には、なんと酢醤油をかけてお浸し風にして頂きます。柔らかなお茶の葉がすっと口に馴染みます。本当の意味で余す所なくお茶を堪能できた時間でした。

〈Auberge TOKTIO〉から発信する、随所に散りばめられた想いとは。

総料理長の石井義典さんにお話を伺う斉藤アリス。

茶房でのひとときを終えて、改めて総料理長の石井さんにお話を聞きました。
「器も食材も廃棄を減らすよう心がけています。たとえば収量の関係で漁では捨てられる魚を買い取って、料理に使う出汁をとることもしています。とはいえ、こちらで使用できる量は微々たるものなので、レシピを漁師さんに渡して、一般にも販売してもらっています。そうすることで、より多くの廃棄を減らしながら、漁師の方々の生活の支えにもなれば、と思って取り組んでいます」

INFORMATION

今回訪れたのは…〈Auberge TOKITO(オーベルジュ ときと)〉

住所:東京都立川市錦町1-24-26
HPhttps://www.aubergetokito.com/
TEL:042-525-8888(代表)(9:00-20:00)
営業時間:茶房は11:00〜17:00(完全予約制。最終入店は14:30)
定休日:第2・4火曜日

40誌以上の美容やファッション雑誌でモデルとして活躍し、現在はライターとしても活動している。趣味は世界のカフェ巡りで、これまで日本全国に加え、15カ国以上のカフェを巡り、著書に『斉藤アリスのときめきカフェめぐり』(枻出版)。

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