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「リンゴ2個とミカン3個を足すと何個?」に「リンゴとミカンは足せません」と答える子に何を教えたらいいか

  • 2023.12.12

足し算の計算はできるのに「リンゴ2個とミカン3個を足すと全部で何個でしょう」という問題に対して「リンゴとミカンは足せません」と答える子どもには、どのように教えたらいいのか。信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授で、同附属病院子どものこころ診療部部長の本田秀夫さんは「自閉スペクトラムの特性があり、暗黙の了解を読み取るのが難しい子どもは『リンゴとミカンは別々のものだから足せない』と考えることがある。大人はまず、子どもの考え方を受け止め、どうしたらその子が学習しやすくなるのかを考えてほしい」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

「含み」がわからないと解けない問題がある
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より

自閉スペクトラムの特性がある子は、会話をしていて「含み」がわからないことがあります。その特徴が、勉強の場面で見られることもあります。その一例を描いたのがこのマンガです。

マンガでは1年生の子どもが算数の文章問題で「リンゴ2ことミカン3こをたすと」と問われて、「リンゴとミカンはたせません」と答えていました。

この子はすでに九九も言えるようになっている子で、2+3の計算ができないわけではありません。算数の考え方がわからないのではなく、文章の「含み」がわからなくて、正解が言えなかったのです。

リンゴとミカンの違いを気にする子
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より

この場面で学校の先生は「ふざけてるわけじゃなさそうだし」と思いながらも、戸惑っています。子どもに算数の問題でこのような答え方をされたら、大人としては困りますよね。「そこは気にしなくていいよ」「2個と3個のたし算として考えて」と説明したくなってしまいます。「そのくらいのことは察してほしい」と思う人もいるかもしれません。

しかし自閉スペクトラムの特性があり、暗黙の了解を読み取るのが難しい子どもは、「リンゴとミカンは別々のものだからたせない」と考えることがあります。「ここでは果物の種類の違いを考慮しない」という前提がわからず、説明されても納得できず、どうしても嫌だと考えてしまう子もいます。

子どもの考え方を受け止め、学習のしやすさを考える

大人はまず、子どもの考え方を受け止めることが大切です。「そんな屁理屈を言わないで、計算しなさい」と言っても子どもは納得できず、ストレスをためてしまうでしょう。問題の出し方をめぐって議論をしていては、子どもが計算を学ぶ機会がなくなってしまいます。それよりも、どうしたらその子が学習しやすくなるのかを一緒に考えていきましょう。

例えば、「文章問題ではリンゴとミカンの違いを考慮しない」という前提を説明すれば理解できるようなら、算数の文章問題の読み取り方を具体的に教えていくことで、問題は解決するかもしれません。説明しても納得できない子には、問題の出し方を変えて、計算に集中できるように配慮するのもいいでしょう。

文章問題に取り組み始めたときには引っかかってしまった子でも、さまざまな問題を経験するなかで算数の文章問題の法則を理解し、ある程度は対応できるようになっていくこともあります。大人の側がその子の学び方を理解しながら、いまどのような形であれば「算数」を学習できるのかを考え、問題の出し方やサポートの仕方を検討しましょう。少人数教室なども活用しながら、子どもに合ったやり方を模索していけるといいですね。

リンゴとミカンの違いは気にしない。果物2こ+果物3こと考える
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)より
子どもが言外のメッセージに気づかなかったら

自転車に乗っている友達が転んだら、自転車に「大丈夫?」と声をかける。ほかにも、公園の砂場でひとり遊びをしているときに、友達から「ひとりなの?」と声をかけられ、「4人家族だよ」と答える。

本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)
本田秀夫・フクチマミ『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』(SBクリエイティブ)

いずれの場合も当人の立場で考えてみると、その子たちなりの筋が通っています。倒れた自転車の損傷を心配してもいいはずですし、「4人家族」と答えるのは、理屈の上では必ずしも不正解ではありません。

しかし、多くの人に「どこか変」と思わせるのは、なぜでしょう?

実は、「ひとりなの?」という質問には「ひとりなら一緒に遊ばない?」というメッセージが込められています。また、「大丈夫?」と声をかけるのは、「私は心配していますよ」というメッセージを伝える目的があるからです。自転車に対しては、そのような目的は不要です。

「普通ならわかるでしょ」がわからないのが自閉スペクトラムの子どもたちの特性です。言外に込められたメッセージに気づかなかったら、そこははっきりと具体的に教えてあげてほしいと思います。

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