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現代も変わらない?『ブギウギ』にみる「子連れへの理解」稽古にきたスズ子(趣里)を救ったりつ子(菊地凛子)のひと言

  • 2024.2.9
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(C)NHK

愛助(水上恒司)との死別を乗り越え、羽鳥(草彅剛)の新曲『東京ブギウギ』を見事に舞台初披露したスズ子(趣里)。第19週『東京ブギウギ』では、歌手・福来スズ子として復帰するまでの過程が描かれる。

戦後を盛り上げた『東京ブギウギ』に込められた決意表明

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愛助を失った悲しみと比例するように大きくなっていく愛情を、生まれてきた娘・愛子に注ぐスズ子。そんな彼女から羽鳥へ、新曲を作ってほしいと申し出があったのは、もはや奇跡のように思える。

スズ子は愛助との結婚のために、一度は歌手を辞め、舞台から去ることを本気で検討していた。愛助との死別、生まれてきた娘・愛子との出会いを経て、彼女がふたたび歌手として舞台に立つ瞬間を目指したのは、決意表明をしたかったから。

スズ子は言う。羽鳥による新曲『東京ブギウギ』は、戦後の暗く貧しい、しかしどこか再起を諦めていない密かな熱がくすぶる日本を根底から励ます歌だ。そして、愛子とともに二人で生きていくことを決意した、スズ子の覚悟を表明した歌でもある、と。

『東京ブギウギ』が発表された1940年代と現代、およそ80年以上の開きがあっても、この歌は廃れていない。どんな世代でも一節を聴けば「あの歌か!」と思う。

テレビやラジオが全国民共通のエンタメを発信するメディアではなくなった令和において、これほど耳馴染みのある曲も少ない。それは、作曲し、歌い広めた先人たちの強い思いが感じられるからだろう。

1940年代と今……育児を取り巻く環境の対比

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生まれたばかりの小さな愛子を連れ、スズ子は『東京ブギウギ』お披露目ワンマンショーの稽古に励む。職場に子どもを連れてきたり、託児所が併設されていたりするケースは、令和の今も多数派ではない。

本編でも、稽古場に赤子を連れてくるスズ子に対し、風当たりがきつかった。子どもが泣いているのを放ったまま、稽古は続けられない。どうしても「稽古の間だけでも誰かに預けられないか」といった打診に繋がってくる。

2019年の調査ではあるが、事業所内に託児所が設置されている企業は全体の1.6%だという。地域や社会で子育てを分担し、協力し合おうという気風が浸透しているとはいえない。

それでも、なるべく人の手を借りずに自分で面倒をみたい、というスズ子の意思を尊重するように、茨田りつ子(菊地凛子)が手を挙げた。なんとも涼やかな声で「みんなで面倒をみればいいじゃない」と言いながら愛子を抱く様子は自然で、いつの間にか、スズ子とりつ子の信頼関係は強固になっていたのだと気付かされる。

2月9日に放送された『東京ブギウギ』披露のシーンも圧巻。まさにスズ子の新しい人生、セカンドステージが開幕した心地にもさせられる。物語の終焉も近いなか、スズ子の目にはどんな未来が見えているのだろう。

出典:株式会社東京商工ポリシー



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_