『ブギウギ』二人の妊娠を知るトミ（小雪）との対峙に苦難…！スズ子（趣里）はジャズカルメンを踊れるのか？

山下の決死の土下座と、トミの家族信仰

スズ子と愛助、二人の結婚を認めてもらうため、山下が一肌脱ぐ。大阪にいるトミの元へ赴き、決死の覚悟で土下座をした。すでに愛助から、スズ子が妊娠した事実を知っていたトミは、これまで以上に頑なな態度を崩さない。

おろすなら金はこちらが持つ、産みたいなら産んでよろしい、うちには一切関わりのないこと……と続けるトミの決意は固い。「家族は一緒に頑張っていくもの」というトミの“家族信仰”は根強そうだ。

なぜ、家族は一緒にいなければならないのか。なぜ、家族というだけで分かりあわねばならないのか。

「家族」という単位に苦しめられるのは、昔も今も変わらない。家族だから、支え合う。家族だから、何かあれば犠牲にもなる。家族で一致団結、協力し合って会社を大きくしてきたトミだからこそ、家族の元から離れていこうとする愛助に対し、愛憎半ばでいるのかもしれない。

振り返れば、2020年に放送された連続テレビ小説『おちょやん』の主人公・千代（杉咲花）も、父・テルヲ（トータス松本）のためにだいぶ苦労していた。それもこれも、二人が「家族」であり「親子」だったからだろう。

トミからの許しは得られないまま、スズ子は愛助との子を産む決意をする。身重でジャズカルメンを踊れるか？と考え、羽鳥（草彅剛）に相談するのが彼女らしい。

麻里（市川実和子）に付き添ってもらい、医師から「身体の様子をみながら」という条件付きで、新しい舞台の準備をすることが決まった。

スズ子がジャズカルメンを踊るのは、羽鳥のたっての願いでもある。一度は、愛助と結婚するために歌手を辞めようとまでしたスズ子。日本の芸能の損失だ、とまで言わしめる才能を潰さないためにも、彼女がふたたび羽鳥の元で新しい舞台を踏むのは、急務だった。

果たして、スズ子の新しい挑戦は、愛助の生きる理由となるか。生きる力となるか。

スズ子の新しい舞台を観るため、そして何よりも、二人の子どもに会うために、愛助は病気を完治させようと奮闘する。彼らが家族となって顔を合わせる日を、誰よりも待っているのは視聴者かもしれない。

ライター：北村有（Kitamura Yuu）
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。Twitter：@yuu_uu_