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元TBSアナ・笹川友里さん「女性のしなやかな働き方を後押ししたい」。キャリア支援会社を設立

  • 2023.12.7

元TBSアナウンサーの笹川友里さんがこのほど、女性のキャリア支援サービスを立ち上げました。笹川さん自身、20代でキャリアや家庭との両立に悩み、新たな生き方へ挑戦しようと30歳で退職。そうした経験から女性の転職や生き方について共に考える場所をと起業しました。12月に第2子出産を控えた今、女性はどのように生き方を選択し、キャリアを形成していけばいいのか、新会社への思いとともに伺いました。

2023年11月、東京・六本木で開かれた「NewMe」のローンチイベント。会場に用意された約200の椅子は、20〜30代前後の女性たちで満席だった。冒頭、笹川友里さんは「自分の人生をハンドリングして、前向きに仕事としっかり向き合う基盤を築きながら、プライベートも含めて人生を楽しむ方をさらに増やしていきたいと思っています」と呼びかけました。

――今年11月、女性のキャリア支援にフォーカスしたサービス「NewMe」をスタートされました。笹川さん自身、キャリアに悩まれた経験が元になっているそうですね。

笹川友里さん(以下、笹川): はい、TBSに8年ほど務めていたのですが、その間で2回、自身のキャリアに悩んだ時期がありました。1回目は、入社5年目の20代半ばの時です。TBSではお子さんがいらっしゃる先輩男女も多く、「子育てと仕事を両立できる環境」との認識はありました。でも、自分を顧みた時、「先輩たちにはできても、私の性格では難しいかもしれない」とうっすらと感じました。

朝日新聞telling,(テリング)

というのも、根本は白黒はっきりさせたいタイプなので、例えば子育てを理由に番組のオファーを断るなど出来るのだろうかと考えてしまったんです。そう考えた時、「“局アナ”という仕事を、一生続けていけるのだろうか」との自分自身への問いかけと、不安を強く抱いたことを覚えています。

そして、2回目に悩んだのは20代後半です。当時、第1子を妊娠中に、朝の帯番組を担当していました。「しっかり働きたい」という自分自身の願望と、体調面と、会社側の妊娠への配慮とでジレンマを少し感じていたように思います。仕事、家庭、自分の時間など全てにおいて高みを目指そうと思うと、全部が中途半端になりそうで、でも何に優先順位をつけていいかわからなくて……。「漠然と全部に悩んでいる」感じでした。とにかく様々な選択肢が机に並んでいて、その選び方がわかりませんでした。

――30歳手前でキャリアについて悩む女性は少なくないと思います。アナウンサーの仕事とプライベート、なかなか選択は難しいですよね。

笹川: アナウンスの技術というのは、一生育てていけるものです。例えば、先輩の堀井美香さんや安住伸一郎さんのレベルを目指すとなったら、生涯磨いていく覚悟を持たないといけない。夫や生まれてくる子どものことを考えた時、「どういうキャリアがサステナブルなのかな」と考えました。

女性アナウンサーの主なキャリアには、そのまま社内に残るか、退社して新たに事務所に所属して活動するか主に二つの流れがあるなと。それ以外に、部署異動や転職を考えたこともあります。でも、取材を通して様々な人と出会い、好奇心が膨らんでいくうちに、「世界は広いぞ」とも思うようになりました。独立したら、何をしてもよいんだという自由さに憧れを持ち、自分の力で何かスモールビジネスに挑戦したいと思ったんです。

11月19日、東京・六本木で開かれたNewMeのローンチイベント「一社で勤め上げる時代が終わった今、キャリアとどう向き合っていくか」。笹川友里さん(左)と共同創業者の篠原さくらさん=筆者撮影

結果的に独立の道を選んだのですが、「退職します」とあいさつ回りをした際、まず聞かれたのが「どこの事務所に入るの?」でした。事務所に入る選択肢は、自分の中にはありませんでした。アナウンサーとして在籍していた際、自分はタレント性があるタイプではないと自覚をしていたので、事務所に所属してタレントとして活動することには自信が持てませんでした。

――TBSアナウンサーのポジションを自ら手放すことは、大きな決断だったのではないでしょうか?

笹川: 大きな決断でしたし、相当悩みました。元々総合職で採用され、人事異動でADからアナウンサーになったので、「チャンスを頂いてその運を無駄にしてしまっては、一生後悔するかもしれない」という覚悟はしていました。でも、思い切って一歩を踏み出してみると、決して退社により全てが0にリセットされる訳ではない。自分の基盤を作り上げてくれたのはTBSとアナウンサーというキャリアなのだと再認識しました。

この間、「独立して何年経ったの?」と前職の先輩に聞かれてカウントしてみたら2年半だったことに自分でびっくりしてしまって。もう4、5年経っていると思っていました(笑)。それほど密度の濃い日々を送っています。

朝日新聞telling,(テリング)

今の時代、「バリキャリ」とは少し違う

――これから思い切って一歩を踏み出す人を後押しすることが、起業した理由なのでしょうか?

笹川: そうですね。私も、共同創業者である篠原さくらさんも、「働き方」や「キャリア」に悩む友人や知人からの相談をよく受けていたというのがきっかけです。200人程の働く女性にヒアリングを進めていくと、多くの方が口にする共通の悩みが「自信がない」、「相談する人がいない」、「社内にロールモデルがいない」の3点でした。そうした課題を解消できないかと考える中で、人事分野で経験が豊富な同世代の篠原さんと出会い、女性のキャリア支援にフォーカスした転職サービスを立ち上げることにしました。

篠原さんも2児の母なのですが、私たちの周りには、仕事に向き合ってキャリアを積み上げながら、子育てを楽しもうとしなやかに生きている女性がいます。「バリキャリ」という言葉がありますが、仕事を優先して、男性と対等に働くイメージがあると思います。私たちが理想としているのは、バリキャリとはまた異なって、キャリアを重ねていく中で、「仕事か家庭か」など1つに絞るのではなく、前向きにしなやかさを持って生きている働き方です。

私たちは、「NewMe」を自分と向き合う場所としての「フォースプレイス(第4の場所)」と位置付けています。主に20〜30代の女性に対して、自身のキャリアについて早い段階で考える機会を提供していきたいと考えています。

朝日新聞telling,(テリング)

「甘えられる」ことも大事な能力

――女性のキャリアは、結婚や出産などのライフステージの変化によって左右されやすいと思います。第2子出産を控えた今、その点についてはどうお考えですか?

笹川: 私は元々、人に頼るのがすごく苦手でした。でも2歳年上で、2人の子育ての真っ盛り中の姉に、「もっと周りを頼った方がいい」と言われたことをきっかけに、「いかに周りに頼るか」を考えるようになりました。姉の家は自宅からそう遠くはないので、何かあった時に娘を預かってもらうこともあります。育児や仕事などで疲れると姉の所にいくのですが、それは姉の家が私にとっての“休息スペース”だからです。

日頃から頑張っている人は、心理的な安全性が担保され、癒される場所が1つでもあると、救いになるのかなと思います。子育て中の人は、いざという時に子どもを預けられる先を用意しておくとことも、安心材料の一つになるのではないでしょうか。そういう人が身近にいない会社員同士のご夫婦の中には、子どもの急な体調不良で休まざるを得ない時、同僚にしわ寄せがいったり、誰かにお願いをしたりすることに申し訳なさを感じてしまう人もいると思います。

「申し訳ない」と思ってしまうことに私も共感するのですが、一方で子どもというのは一瞬で育っちゃうものともよく耳にします。せっかくだから、「楽しむこと」も大切なはずなので、普段から社内や同僚とコミュニケーションを取り、なるべく良い関係を構築しておくのも一つかなと思います。

もし、どうしても理解してもらえない職場だったら、自分の環境を考え直してみる機会なのかもしれません。子育ては10年以上も続くわけですし、必ず、子育ても仕事もどっちも楽しめる環境はあるはずなので。「甘えられる」ことも大事な能力なのかなと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

好きな言葉は「現状維持」から「チャレンジ」に

――現在33歳ですが、今後どういうキャリアの重ね方をしていきたいと考えていますか?

笹川: 30代はたくさん挑戦して、傷ついて、仲間と経験値を増やし、もがきながらチャレンジしていい時だと思っています。そうした挑戦が40代の自分の肥やしになるのかなと。40代は、地に足を着けて、余裕を持ち、“落ち着いたチャレンジ”に移行していきたいですね。

そして50代になった時も、チャレンジを続けていたいですし、周りにも何か還元していける存在になりたいと考えています。各業界で出会う素敵な女性の中には、還暦を迎えても若々しく自分の人生を楽しそうに生きている方が多く、私もそのような生き方をしたいと思っています。

そして、70代を迎えた時に、ようやくゆったりと人生を謳歌したいなと思っています。きっと今の小さなチャレンジの積み重ねが30年先にもつながっていく予感がしているので、コツコツ自分に出来ることを少しずつやってみたいなと思います。

――「チャレンジ」「挑戦」という言葉がキーワードですね。

笹川: 実は会社員時代は、「チャレンジ」なんていう言葉、絶対口にしなかったんです!「現状維持」が大好きな人間だったのですが、昔から順応性だけは高かったのもあり、新たな環境に一歩足を踏み入れるだけで、価値観やマインド、考え方さえ変わることを体感しています。

今回「NewMe」を立ち上げる際、「人材領域に知見がある方募集!」とSNSで募集しました。そうすると、80人ほどの方が応募してくださいました。「何かやりたいけど転職までは踏み込みない」、「子どもがいるけど、やってみたいです」という優秀な方がたくさん集まってくださったことに、驚きました。「何かをやりたい!」というパワーを秘めている方は、副業やボランティアなど何でも良いので、一歩をぜひ踏み出してほしいと思っています。そこから人生が変わるかもしれません。

年齢とチャレンジ度をグラフに(笹川友里さん筆)

■小野ヒデコのプロフィール
1984年東京生まれ横浜育ち。同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。興味あるテーマはアスリートのセカンドキャリア。英語は日常会話に困らない程度できます。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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