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ジャック・ケルアック、ジョン・ミューアetc. 偉人が歩いた山と本 〜海外編〜

  • 2023.12.7
『ジョン・ミューア・トレイルを行く』加藤則芳/著、西田真魚 ジョン・ミューアのイラスト

ジャック・ケルアック/ビートニク作家(1922〜1969)

MOUNTAIN:デソレーション・ピーク(アメリカ)

西田真魚 イラスト_ジャック・ケルアック

ビートニクが辿り着いた悟りへの頂

『ザ・ダルマ・バムズ(旧邦題・禅ヒッピー)』は、シエラ・ネヴァダをはじめとするカリフォルニアの山々など、さまざまな自然に身を浸したケルアック自身の経験が語られる。初期バックパッカー文化の考え方なども細かく描かれている。主人公が最後に向かったのが、ワシントン州にあるデソレーション・ピーク(荒涼峰)。

当時はハイキングを楽しむような場所ではなく、山岳火災の監視小屋があった場所だった。ケルアックは実際に監視員として山頂付近の小屋に一夏滞在している。大自然の中にたった一人で長期間過ごすという特別な体験は彼にさまざまなインスピレーションを与え、その時期に書いた詩や散文なども多い。

特に山に落ちる雷には衝撃を受けたようで、本人いわく「悟りを開いたような体験」だったという。現在でもこの監視小屋は残されていて、8km弱のトレイルもあり、多くのファンがケルアック詣でに訪れている。

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『ザ・ダルマ・バムズ』ジャック・ケルアック/著

『ザ・ダルマ・バムズ』ジャック・ケルアック/著 中井義幸/訳

1958年発表の自伝的作品。主人公レイはケルアックの投影で、相棒のジェフィは詩人ゲーリー・スナイダー。サンフランシスコから、遠くワシントン州の荒野まで、若者たちのロードトリップを描く。講談社文芸文庫。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/詩人(1749〜1832)

MOUNTAIN:ブロッケン山(ドイツ)

西田真魚 イラスト_ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

創作の源として数々の山に登った詩人

詩人として知られるゲーテだが、実は登山好きの顔も持っている。1777年には北ドイツで最も高いブロッケン山(1142m)に登頂。趣味の登山などない時代においては、修行や山仕事以外で山に登る人間は皆無といってよかった。自然の風景などから詩作のヒントを得ていたといわれ、恋多き男代表のゲーテだから、恋人に贈る詩なども山で考えることが多かったようだ。

彼は鉱物も好きで、膨大なコレクションも残している。今で言うところの地質好き。石の収集のために訪れたのはドイツ中東部・チューリンゲンをはじめ、スイス高地、ボヘミア山地などで、温泉好きだった彼はボヘミアのカールスバートという温泉地にも長期滞在している。

山と温泉という組み合わせは、ゲーテがオリジンかもしれない。彼が特に愛し足繁く通ったというチューリンゲンの森には〈ゲーテの散歩道〉という18kmのトレイルも整備されている。

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『ゲーテさん こんばんは』池内紀/著

『ゲーテさん こんばんは』池内紀/著

日本におけるドイツ文学の第一人者による評伝。82歳で大作『ファウスト』を書き上げた偉大なる作家としての顔だけでなく、ブロッケン山に登った話や石に対する情熱など、趣味人としての姿も紹介されている。集英社文庫。

アレクサンダー・フォン・フンボルト/博物学者、探検家(1769〜1859)

MOUNTAIN:チンボラソ山(エクアドル)

西田真魚 イラスト_アレクサンダー・フォン・フンボルト

知の巨人が踏んだ、世界最高地点

ダーウィンのビーグル号での冒険の先達であり、ゲーテとは親友、後年のソローなどにも影響を与えた、ヨーロッパが誇る知の巨人。「生命は相互に影響し合っている」という生命の網という概念を発案した人物。これが、今ではあまりにも常識になっているため、逆に発案者がややマイナーというすごみ。

当時のヨーロッパではナポレオンの次に有名だったといわれる博物学者だ。彼が南米への調査旅行の際に登ったのがチンボラソ山。標高6310mの火山で、当時は世界で一番高い山と思われていた場所。フンボルト一行は、残念ながら6000m付近で吹雪のために撤退するが、実はこの登山で人類最高到達点が更新されたことになる。

登山家という概念がまだない時代の話で、装備も現地調達の毛織りのポンチョなどを借りていたようだ。現在では日本人向けのツアーも組まれていて、6000m峰の中では比較的登りやすい山になっている。

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『フンボルトの冒険』アンドレア・ウルフ/著

『フンボルトの冒険』アンドレア・ウルフ/著 鍛原多惠子/訳

エコロジーという理念を最初に提唱したフンボルトの半生を描く。第2部の南米調査旅行パートは、フンボルトの冒険家としての顔が前面に出ていて、まるで冒険ノンフィクションのようにエキサイティング。NHK出版。

ジョン・ミューア/ナチュラリスト(1838〜1914)

MOUNTAIN:マリポサグローブ(アメリカ)

西田真魚 イラスト_ジョン・ミューア

自然保護の父が生涯守り続けた地

自然保護の父とも呼ばれるジョン・ミューア。第26代大統領セオドア・ルーズヴェルトがヨセミテを訪れた際に案内したのが彼。2人はヨセミテの自然の中を歩き、マリポサグローブで焚き火を囲んで自然保護について語り合った。

ジャイアントセコイアが生い茂る場所でのこのキャンプは、大統領ルーズヴェルトの自然保護の意識に大きな影響を与え、「アメリカ史上最も重要なキャンプ」とも呼ばれている。マリポサグローブは、現在ヨセミテ国立公園内に位置し、クルマなどで簡単にアクセスでき、ヨセミテ国立公園最大のジャイアントセコイア「グリズリー・ジャイアント」を目指して歩くハイカーも多い。

ジョン・ミューアはこの場所だけでなく、ヨセミテ周辺の自然をこよなく愛していて、彼の名を冠した総延長約340kmのジョン・ミューア・トレイルは、世界中のハイカーが憧れる大人気のロングトレイルになっている。

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『ジョン・ミューア・トレイルを行く』加藤則芳/著

『ジョン・ミューア・トレイルを行く』加藤則芳/著

ジョン・ミューアを敬愛し、日本に広く紹介した加藤則芳が、ジョン・ミューア・トレイルを踏破した時のルポルタージュ作品。ガイド的な解説も細かく書かれているので、これから歩いてみたい人にも最適。平凡社。

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