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来年の秋の庭のアイデアを! インディアンサマー(小春日和)に紅葉を楽しもう

  • 2023.12.6

葉色がドラマチックに変化する紅葉は、秋の庭の大きな楽しみ。ぽかぽかと暖かなインディアンサマー(小春日和)にゆっくり紅葉を眺めることは、この季節ならではの贅沢な時間です。この記事ではドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、日本の秋のエピソードを交えながら、紅葉が楽しめる庭木をご紹介します。来年の秋に向けた美しい庭づくりの参考にしてみましょう。

秋の庭の落ち葉

秋の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

11月の庭を思うと、こんな歌詞が頭に浮かんできます。

「CLEAN UP CLEAN UP EVERYBODY EVERYWHERE…(掃除して、みんなどこでも掃除して……)」

その理由は、もちろん落ち葉です。

先日も、ホテルの前で早朝から数人のホテルスタッフが、車道を掃除しているのを見かけました。風の強い日だったので、高く伸びたイチョウから絶えず美しい黄色の葉が舞い落ち、そのたびに落ち葉を追いかけていました。まるで、どうしても追い払わなければいけない敵のようです。スタッフは一生懸命に頑張っていましたが、あまりにたくさんの葉が落ちてくるので、私の目にはほとんど意味のない作業のように映りました。私にとって落ち葉は快いもので、目にも美しく、落ち葉が散り敷く地面を歩くのも楽しいものなので、余計にそう思ったのかもしれません。

秋の落ち葉
Stanislav71/Shutterstock.com

もちろん、上を歩く人にとってリスクがないかなど、危険性やデメリットは常に考えなければなりません。濡れた落ち葉は滑りやすく、転んで骨折など大けがをしてしまう可能性もあります。道路以外の場所でも、濡れて滑りやすい落ち葉があるスロープなどでは問題になります。

例えば、ある友人の家に車で向かう際に通る、丘の中の竹林を抜ける道。曲がりくねった細いこの小道沿いには、よく笹の葉が山積みになっているため、雨の日の後に彼女を訪ねた際はとても苦労しました。まるで凍結した道路を走っているかのようで、登る際も大変なのですが、真の難関は下り坂。小道の突き当りにある田んぼに飛び込まないよう、思わず祈ってしまうほどでした。ブレーキの効きが悪く、本当に怖かったですが、何とか無事にたどり着くことができてよかったです。

一年の終わりへ向かう秋の庭

秋の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / NouN

庭やその周囲の風景は変化についていけないほどあっという間に季節を進め、木々は次第に一年の終わりを迎える…それが秋です。私が寒い季節が好きで、冬には雪も楽しみにしています。その理由の一つが、冬は少なくとも屋外ではガーデナーには休息の期間となり、新しい年に向けてクリエイティブな感性を発揮するための時間を与えてくれることです。

植物のほとんどが葉を落とすと、景色は様変わりします。しかし、その前のひと時、素晴らしい「紅葉の季節」が訪れます。

紅葉の季節

紅葉
Jan Krava/Shutterstock.com

私の住む神奈川の湘南地域は、比較的穏やかで温暖な気候で、特別な紅葉の名所はありません。箱根や長野、山梨といった冷涼な地域へ観光に行く人がほとんどです。私の場合は、東京に出かけた際にカラフルな秋景色を楽しみます。あちらこちらにある路地には、黄色、金色、赤、さらには紫までの色を見せるさまざまな木々があります。道沿いに植わる木々には、まだ緑のものから黄色く色づいたもの、すでに葉がほとんどなくなっているものもあります。この季節は美しい「HABITUS」(木の枝ぶりや構造)を見ることができるのも嬉しいですね。

落ち葉
カラフルな秋の葉。Tijana Simic/Shutterstock.com

日本では紅葉というと、主にカエデやモミジの木をイメージすることが多いと思いますが、秋はいろいろな木々がさまざまな色彩を見せてくれます。代表的な樹木をいくつかご紹介しましょう。

紅葉(赤)
カエデ、モミジ、ウルシ、ツツジ、ブドウ、ヤマザクラ

黄葉(黄)
イチョウ、ヤナギ、ポプラ

褐葉(茶)
メタセコイア、ブナ、トチ、ケヤキ

ヨーロッパでも、イロハモミジやハウチワカエデ、オオイタヤメイゲツなどのさまざまなカエデ類の紅葉が見られますが、比較的高価な庭木なので、植栽には単独で使われることが多いです。日本の紅葉では、全国でさまざまな樹種、かつ膨大なモミジやカエデを観賞できるとあって、近年海外でも知名度が高まり、秋に日本を訪れるきっかけの一つになっています。

秋に美しい、ダイナミックな景色を作る高木

イチョウ

イチョウ
Pelle Zoltan/Shutterstock.com

秋に見事な黄色に染まるイチョウは、高木になるため、一般に公園や大きな庭で植栽されています。ドイツの庭に植えたことがありますが、成長していく過程を見るのは本当に楽しいもので、数年後には木の周囲のエリアを模様替えし、クリスマスローズ、アスチルベ、イカリソウ、シュウメイギクを植えたシェードガーデンもつくりました。私がガーデニングを学んだトライアルガーデンにも大きなイチョウがあり、広大なエリアに1本しかなかったのですが、秋には圧倒的な存在感を放っていました。

モミジバフウ

モミジバフウ
Donna Gibbs-Williams/Shutterstock.com

北アメリカ原産でトゲトゲの実をつけるモミジバフウも高木に成長する樹種で、植物園や広大な敷地のある庭によく植えられています。アメリカでの滞在期間中に、あちこちで育っていたこの木の見事さに触れ、また黄、オレンジ、赤から深い紫まで美しい秋の色彩が1本の木の中に現れることを知りました。日本での職場の隣、子どもたちの遊ぶグラウンドの端にこの木が植えてありますが、素晴らしいチョイスだと思います! ちなみに、モミジバフウは葉を揉むといい香りがしますよ。

秋に美しい、ややコンパクトに育つ植物たち

アメリカハゼノキ

アメリカハゼノキ
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

アメリカハゼノキは鮮やかなオレンジや赤の紅葉が楽しめます。近隣にも3本植栽している家があり、キッチンの窓からその色彩のお裾分けをいただいていますが、裏庭をカバーし、時に野鳥が遊んでいる、魅力的な庭木です。ただしウルシの仲間なので、かぶれに注意しましょう。

アメリカマンサク

アメリカマンサク
Anna Gratys/Shutterstock.com

英語でウィッチヘーゼルとも呼ばれるアメリカマンサクは、黄やオレンジの細いリボン状の花弁を持つ花を、葉を出す前の早春から咲かせる美しい花木です。秋には黄、オレンジ、赤などの鮮やかな紅葉が、遠目からでもよく目立ちます。

ツタ

ツタ
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

ツタはコンクリートや石の壁を覆い、非常に装飾的です。納屋や収納小屋もツタに覆われていることがありますが、秋には真っ赤な葉がとても美しく、ドイツでも人気があります。ただし、ツタを這わせると建物などが傷むこともあるので気をつけましょう。

アロニア・メラノカルパ

アロニア・メラノカルパ
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

チョコベリーとも呼ばれるアロニア・メラノカルパ。艶やかな黒い実にはビタミンCが豊富に含まれ、ジュースやマーマレード、果実酒などに使われます。秋には赤く紅葉します。

カツラ

カツラ
Alex Manders/Shutterstock.com

カツラは、ドイツ語では、ジンジャーブレッドツリーという意味の「Lebkuchenbaum」や、日本のお菓子の木を意味する「Der Japanische Kuchenbaum」などと呼ばれます。秋の濡れた葉からは、キャラメルやジンジャーブレッドを想起させる香りがします。植物の特徴が名前になって現れるのは面白いですね。

秋にだけ楽しめる紅葉の季節

紅葉の庭
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

以前、ハワイ島のB&Bに宿泊したことがあります。ワシントンD.C.出身のオーナー一家が経営していました。訪れた私は、温暖で快適な気候、美しい海、そして刺激的な環境に魅了されたのですが、オーナーは秋へと移ろう葉色の変化と涼やかな気温が恋しいのだと言っていました。当時はハワイでの優雅な暮らしに若干の羨ましさもありましたが、一方で彼らの気持ちもよく分かりました。結局彼らは、数年以内にこの素敵なB&Bを手放して、もともと暮らしていたアメリカ本土の寒冷な気候の州に戻る計画を立てていました。

雪や凍えるほどの気温が恋しくなるのは、私も同じ。私にとって、雪のない冬は冬ではありません。少なくとも、シーズンに一度は本当の冬を感じたいと願っています。

秋も残りわずか。ぜひゆっくりと時間を取って、この季節だけの紅葉を満喫してください。目だけでなく、他の感覚も使ってみましょう。「ジンジャーブレッドの香り」も味わってくださいね。

紅葉
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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