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大学生の12人に1人は「薬物使用者を実際に見たことがある」大人が知らない恐るべき薬物蔓延の実態

  • 2023.12.5
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日大アメフト部の事件など、親元を離れて一人暮らしをする大学生は、薬物へのアクセスがしやすい。元マトリ(厚生労働省麻薬取締部)の瀬戸晴海さんは「スマホがあれば簡単に大麻などは買えるが、今、大学生の間で注目されているのが、自分で大麻を育てるという方法。罪の意識もなく、通常の植物栽培のようにハマってしまう」という――。

「関関同立」での調査で判明した恐るべき薬物蔓延の実情

関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の関西4大学は、2009年から、薬物乱用防止の取り組みとして「薬物に関する意識調査」を行ってきたが、2022年度の調査で、大学生のおよそ12人に1人が「大麻や危険ドラッグ等の危険な薬物を使用している人を直接見た経験がある」と答えている。

【図表】関西四大学「薬物に関する意識調査」
出典=2022年度 関西四大学「薬物に関する意識調査」

88.9%が「どのような理由であれ、絶対に使うべきではない」と回答しているものの、「使うかどうかは個人の自由」「使ってもかまわない」と答える人が一定数いる。さらに薬物入手に関しては「難しいが手に入る」「手に入る」と、38.3%が入手できると考えていた。その理由としては大半の学生が「インターネットで探せば見つけられると思うから」としている。

いま売人から買うよりも安全だとして注目を浴びているのが、大麻の栽培だ。栽培しているとの情報で内偵をすると、LEDで照らされたテントの中で大麻が40株以上も栽培されており、検挙された事犯もあった。また、ある大学のラグビー部の合宿所内のマンションでも栽培されており、部屋の押し入れの中で鉢植え栽培し、計16株が見つかった。

売人から買うより安全だと下宿先で大麻を栽培する大学生

元マトリ(厚生労働省麻薬取締部)の瀬戸晴海さんは大麻の栽培についてこのように語る。

「大麻の栽培は、ここ4、5年で大規模化しています。最初はネットで購入し、そのうちに大麻そのものに興味を持ちます。『大麻の世界は深いな』と……。栽培器具は専用のモノもありますが、ホームセンターで購入できるし、苗床を作って太陽光の代わりに蛍光灯や水銀ランプ、LEDライトなどを置き、温度調整し、扇風機で風を送るなどして育てています。まずは大型農家から種を購入し、そのマザーの木を栽培し、それを挿し木で増やしているのです。

他の薬物事犯とは違うのは、栽培していると、植物を育てるのと一緒で、思いが深まるのか、本当に丹精込めて育てているのがわかります。特に一人暮らしの大学生は、誰に監視されることもなく、抑止力が働かないので、どんどんのめり込んでいくようです。インドアのみならず、家の近くの空き地で大麻を栽培していた学生もいました」

断っておくが、大麻そのものは悪いものではない。古来から神聖なものとして、しめ縄などにも使われてきたし、織物としては「麻」「ヘンプ」として使われている。鳥のエサ、飼料や肥料、医療にも有効利用されているのだ。

脳の中枢神経を狂わせる大麻や強い市販薬のリスク

しかし大麻がなぜいけないのかというと、まずは大麻取締法で禁止されているからだ。薬物として使用すると、心身に有害で、自分一人では止められない依存性がある。大麻に含まれるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が、脳の中枢神経系に作用し、知覚の変化、学習能力の低下、運動失調、精神障害が現れる。

使用すれば、酩酊めいてい感や陶酔感、幻覚をもたらすため、使用を繰り返すうちに自分の意思では止められなくなる。結果的に社会生活にも悪影響を及ぼすようになってしまう。

「大麻のありかたについては、世界でも議論されているところで、合法化している国や州もあるが、けっして自由化ではなく、アメリカでは幼児の誤飲などの問題もある」(瀬戸さん)

日本政府は、大麻取締法などの改正案として大麻の「使用」を禁止したが、大麻草が原料の医薬品の容認を閣議決定した。

一方、市販薬も一緒だ。法で規制されている、されていないはさほど関係ない。風邪薬の「金パブ」には興奮系と抑制系の物質が含まれており、興奮系のエフェドリンは覚せい剤の原料でもあり、副作用がある。

これまで大麻の売買などは、非公式にアンダーグラウンドでやっていたが、今では売人がネットで堂々と「大麻の農家さんとお付き合いさせてもらっている。皆様に良い品物を届けられるように精進します」と広告まで出しているのだという。広告に書かれた文言につられ、錠剤などに印字されたキャラクターは身近に感じられるため、若年層も犯罪の意識なく購入してしまう。

ナトリウムランプを使用して栽培された大麻
ナトリウムランプを使用して栽培された大麻
もし子どもが薬物に手を出したらどうなるのか

しかし、摘発やタタキ(売人を狙った強盗)を恐れて、売人も場所を指定してくるようになったという。

「売人が逃げやすいように、駅前やコンビニなどを指定し、そこで売買が行われているケースが多くなってきました。家への直接送付ならば、レターパックか、宅配便で。大麻だとバレないように『ヤフオク商品』などと書かれていることが多いようです。

いまや誰でも売人になれるし、お金がなくなったら、ちょっと売ってみようかと考える若者も多いです。『1日1万円』のバイト感覚で薬物を売る。SNSに入ってみると、そんなバイト情報はあふれており、ネットと薬物が共犯関係になっているのが現状です。薬物問題は東京、大阪が主要ですが、地方のほうが栽培もでき、密輸もしやすい。全国どこでも販売は行われています。

警察やマトリでも積極的に相談を行っています。また地域の精神保健福祉センター、自治体の薬事課、保健所でも相談にのってくれるので、どうしたらいいかを相談することです。まずは治療の相談になります。相談しても、事件にはなりません。たいていの場合、逮捕されることはありません。逮捕はまた別問題なので、依存症にしないためにも、もし子どもの薬物使用に気づいたら、まずは治療に専念させることです」(瀬戸さん)

薬物依存症にならないため、まず治療に専念させる

病院に入り治療をし、施設に入って薬をやめる。出てきたときに生活環境を整えることが先決だ。交友関係を変え、薬物の危険がある繁華街に行かないようにするのは当たり前のこと。

「しかし、一人暮らしだった場合、手元にあるスマホを見たら、また薬物をやりたくなるのです。再犯再乱用につながりやすいリスクがスマホによって増えたと言っていいと思います」(瀬戸さん)

瀬戸さんが扱ったケースでは、まじめな女子大生が、友人からすすめられて旅先で大麻を体験。家に戻ってから「野菜、手押し」と検索してネットで購入していった。友人宅でマトリの捜索にも遭い、事情聴取も受け、いったんは依存症から脱却できたかにも見えた。ところが次に手を出したのは、市販薬だった。

「いったん薬物に依存してしまうと、繰り返すのには訳があります。脳の報酬系(欲求が満たされたときや、満たされるとわかったときに活性化し、快感、幸福感などを引き起こす脳内のシステムのこと)がダメージを受け、物質に対して依存してしまうのです。

渇望があって欲しがる依存と、渇望はなくなったけれど、誰かや何かに頼るところがない不安。薬物とは切れることができても、行動依存は残っています。心のよりどころがないと不安に陥り、ネットを見たら『金パブ50錠飲んだら、悲しいことから救われた』などという記述があるので、『規制されてない市販品なら悪いことではない』と思い込んでしまうのです」(瀬戸さん)

大量の錠剤、カプセル錠などの薬
※写真はイメージです
大学主催の啓発活動だけでは薬物の蔓延を防げない

依存症は、プログラムを組んでリハビリしていかなければ治せない。「グループミーティングに行って仲間と話し合い、いろんな認知行動療法を繰り返しやっていかなければ治らない」と瀬戸さんは言う。

薬物はしない、させない。不幸にも手を出してしまったら早期に発見し、早期に治療を施す。そして薬物教育を徹底して伝授し、社会復帰させて支援する。その仕組みの構築が望まれる。

「結局、社会の問題なので、地域で協議会を作って行政的に進めてもらい、関係者に全部入ってもらって問題を共有しなければ薬物乱用防止にはなりません。地域の警察やサポートセンター、または大学生や高校生の同世代の子どもたちが、子どもたちを教えるようなサポーターづくりをしなけれなりません。

大学側は、薬物乱用防止のための説明会などをしますが、薬物乱用や薬物事犯がどんなに大変なことかという重要性を知りません。薬物をなめていると言ってもいいと思います。講義するだけではなく、学生や中高生にグループミーティングさせて、なぜいけないのかということを考えさせなければいけないと考えます」(瀬戸さん)

「薬物=SNS=性犯罪」という負のサイクルに陥る場合も

今や薬物=SNS=性犯罪という図式が成立するところまできているのだという。大人たちも問題意識を持って本質を知り、リスクを知ることが大事だ。同時にネットリテラシー、SNSとの付き合い方を子どもにも教え、家族でスマホの扱い方を考えなければいけない。

「薬物問題に関しては、家族で話し合うことです。子どもの年齢が若ければ若いほどいい。薬物は単にダメと言うのではなく、『なぜだめなのか』ということを議論しなければいけません。高校に行ってからも話し合いを継続する。それとともに、一般的な薬、市販薬の教育も入れましょう。薬は人を助けるもの、乱用するものではないということです。

通常の市販薬であっても家の中では、簡単にテーブルに置くなどしない。危険なものだから子どもが見えないところに置くといった習慣をつけてほしいです。小さい頃から危険性を話していれば、刷り込まれるはずです」(瀬戸さん)

最初は被害者でも薬ほしさに犯罪に走るパターンが怖い

薬物使用者は、はじめは被害者。それが転じて犯罪者になるときが怖いという。現実には薬ほしさに詐欺などの罪を犯す。そして人を殺傷させる犯罪まで起きているのだ。大学生を被害者にも加害者にもしてはいけない。家族で、地域で、大人たちが守っていかないといけないところまできている。

日大アメフト部の事件では、検挙された大学生の名前も顔写真もさらされているが、もしそんな前歴のある若者が就活や婚活をしたら、周囲はどう対処するだろうか――。瀬戸さんが話す。

日本大学会館(本部)=2023年11月29日、東京都千代田区
日本大学会館(本部)=2023年11月29日、東京都千代田区

「日本の社会は、薬物逮捕となると厳しい視線でその学生を阻害するかもしれません。しかし、薬物さえやめたら問題ないのです。薬物は危険であるということを社会全体で共有し、本人の立ち直りを支援する方向で、社会復帰できるように私たち自身が変わらなければいけないと思います」

ネットで薬物などの検索をさせないように、家族が目を配る。特にこれからはクリスマスパーティーや忘年会など、一年でいちばんにぎやかなシーズンになる。知識がないために、大麻グミやクッキーなどを誤って食べ被害に遭わないように、子どもにも正しく警告する必要がありそうだ。

樋田 敦子(ひだ・あつこ)
ルポライター
明治大学法学部卒業後、新聞記者に。10年の記者生活を経てフリーランスに。女性や子どもたちの問題を中心に取材活動を行う。著書に『コロナと女性の貧困2020-2022~サバイブする彼女たちの声を聞いた』『女性と子どもの貧困』『東大を出たあの子は幸せになったのか』(すべ大和書房)がある。NPO法人「CAPセンターJAPAN」理事。

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