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スキルも上達?ゴルフ漫画で巡る18ホール

  • 2023.12.5
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『KING GOLF』佐々木健/画、『プロゴルファー猿』藤子不二雄A/作、『オーイ! とんぼ』かわさき健/作、古沢優/画、『ROBOT×LASERBEAM』藤巻忠俊/作

加山竜司

そもそも、コースの造りには決まり事があるのでしょうか?

笠原誠

絶対ではありませんが、18ホールにパー3、パー5が4つずつあるのが一般的ですね。

加山

ではロングホールになぞらえて、長く愛され続けるクラシックな作品をパー5としましょうか。反対にパー3は新しめのものに。

笠原

では早速ラウンドへ。1番は初心者も楽しめる作品として『あした天気になあれ』を挙げたいです。

加山

“チャーシューメン”ですね。

笠原

スイングするときの掛け声に使われた名言ですね。ゴルフのルールには注釈が付いていて勉強にもなります。主人公の向太陽(むかいたいよう)がラウンドの合間にたっぷりサンドイッチを食べたりと、自身もゴルファーであるちばてつやさんならではの描写も楽しい。

加山

古典的な作品ということで、パー5ですね。

笠原

最近だと、渋野日向子さんがモデルの『バウンスバック』は親しみやすいはず。バウンスバックとは、ボギーかそれより悪かった直後のホールでバーディ以上の結果を収めること。彼女の強さの特徴でもある立ち直りの早さを主題にした物語です。

『あした天気になあれ』ちばてつや/作
『あした天気になあれ』ちばてつや/作プロゴルファーを目指す中学生、向太陽の物語。本作をきっかけにスイングのリズムを取る掛け声「チャーシューメン」が広く知られた。1981年から91年まで『週刊少年マガジン』で連載。全58巻。講談社。
『バウンスバック』こしのりょう/著
『バウンスバック』こしのりょう/著 鶴見功樹/監修20歳の新人プロゴルファーひよここと日向みよこが、祖父である銀次郎とともに歩むゴルフ人生を描く。『週刊現代』で連載中。既刊8巻。講談社。

加山

同じく連載中の『KING GOLF』は、不良がゴルフに目覚めていく話。素人目線なので学びもある。今も新しいゴルフ漫画はあるけれど、漫画史的には1989年から90年が特に熱かったんです。ジャンプで『隼人18番勝負』、チャンピオンで『激闘!荒鷲高校ゴルフ部』、サンデーで『青空しょって』、そしてマガジンで『あした天気になあれ』と、四大週刊少年誌すべてにゴルフ漫画が載っていたんですよ。

笠原

すごい!当時のゴルフ人気を裏づける盛り上がりですね。日本を代表するゴルファーたち、青木功さん、ジャンボ尾崎こと尾崎将司さん、中嶋常幸さんの「AON」が注目されていた頃とも重なります。

『KING GOLF』佐々木健/画
『KING GOLF』佐々木健/画 谷将貴/技術指導・監修「プレデター」の異名を持つ不良高校生、優木蒼甫がゴルフ界の王になるべく奮闘する。『週刊少年サンデーS』で連載中。既刊40巻。小学館。
『隼人18番勝負』次原隆二/作
『隼人18番勝負』次原隆二/作佐々木小次郎の末裔・佐々木隼人が復讐すべく、ゴルフ界で活躍する宮本一族に挑む。1989年に『週刊少年ジャンプ』で連載。全2巻。集英社。
『激闘! 荒鷲高校ゴルフ部』沼よしのぶ/作
『激闘!荒鷲高校ゴルフ部』沼よしのぶ/作岩をも砕くパワーショットを放つ高校1年生羽生雷太(はにゅうらいた)の活躍を描く。1988年から92年まで『週刊少年チャンピオン』で連載。全16巻。秋田書店。
『青空しょって』森秀樹/作
『青空しょって』森秀樹/作世界を渡り歩くゴルファー飛田一八(とびたかずや)を描く。実在する大会や選手も登場。1987年から91年まで『週刊少年サンデー』で連載。全24巻。小学館。

加山

2017年まで、30年以上続いたゴルフ漫画専門誌『GOLFコミック』もありました。ゴルフ体験記『髙橋ヒロシの暫定球いきまっす!』や、クラブ作りをテーマにした『(有)斉木ゴルフ製作所物語 プライド』など、ユニークな作品を残しています。

笠原

裾野が広いですね。これらを加えていたら、もう前半戦最後の9番ホールです(笑)。パー5で『プロゴルファー猿』を入れませんか?

『髙橋ヒロシの暫定球いきまっす!』髙橋ヒロシ/原案、北原健世/漫画
『髙橋ヒロシの暫定球いきまっす!』髙橋ヒロシ/原案 北原健世/漫画『クローズ』などの漫画家、髙橋ヒロシがゴルフに挑戦。暫定球=打ち直した球。2013年から17年まで『GOLFコミック』に連載。全4巻。秋田書店。
『(有)斉木ゴルフ 製作所物語 プライド』千葉俊彦/作、那須輝一郎/画
『(有)斉木ゴルフ製作所物語 プライド』千葉俊彦/作 那須輝一郎/画ゴルファー荒木ジュンと、地クラブメーカー斉木ゴルフ製作所の物語。2012年から17年まで『GOLFコミック』に連載。全10巻。秋田書店。
『プロゴルファー猿』藤子不二雄A/作
『プロゴルファー猿』藤子不二雄A/作「わいはプロや」が口癖の賭けゴルフを生業(なりわい)とする野生児、猿谷猿丸の破天荒な物語。少年漫画初のゴルフ漫画で、続編が3作品ある。1974年から80年に、主に『週刊少年サンデー』で連載。全22巻。小学館。

ラウンドを折り返し、肝となる“坂田コーナー”へ!

加山

ゴルフ漫画というジャンルを切り拓(ひら)いた名作ですね。手作りの木製クラブでスーパーショットを連発しまくる荒唐無稽なキャラクターは少年漫画の延長として楽しめる。後半戦スタートの10番ホールは、これまた入門にぴったりな『オーイ!とんぼ』から。ゴルフに欠かせない、プレーヤーとキャディの関係性を丁寧に描いていますね。

笠原

原作のかわさき健さんは、もともとプロを目指し研修生として学んだ方。技術はもちろん、経験者だからこそ知る選手の精神面なども作品に落とし込んでくださいます。

加山

ゴルフ漫画に原作があるものが多いのにも納得です。

『オーイ! とんぼ』かわさき健/作、古沢優/画
『オーイ!とんぼ』かわさき健/作 古沢優/画元プロゴルファー五十嵐一賀(いがらしかずよし)と天才ゴルフ少女、大井とんぼの物語。2014年から『週刊ゴルフダイジェスト』で連載中。既刊45巻。ゴルフダイジェスト社。

笠原

プロとして活躍した坂田信弘さんも数々の漫画原作を手がけられました。のちにアニメにもなった『DAN DOH!!』、変名で書かれた『天才伝説』、30年以上連載されたプロゴルファーの一代記『風の大地』など。これらをマスターズが行われるオーガスタ・ナショナルGCで最難関と呼ばれるアーメン・コーナーになぞらえて「坂田コーナー」としませんか?

加山

ぜひ!全84巻になる巨編『風の大地』はパー5ですね。

『DAN DOH!!』坂田信弘/作、万乗大智/画
『DAN DOH!!』坂田信弘/作 万乗大智/画プロと出会い、ゴルファーを志す野球少年・青葉弾道(あおばただみち)の成長を描く。1995年から2000年まで『週刊少年サンデー』で連載。全29巻。小学館。
『天才伝説』張傘/作、みのもけんじ/画
『天才伝説』張傘/作 みのもけんじ/画カナダの秘境で拾われた赤ん坊が、すくすく育ち天才ゴルファーに。作者の「張傘(サン・チアン)」は、坂田信弘の変名。全28巻。ゴルフダイジェスト社。
『風の大地』坂田信弘/作、かざま鋭二/画
『風の大地』坂田信弘/作 かざま鋭二/画主人公、沖田圭介の一代記。研修生として登場し、のちプロに。1990年に『ビッグコミックオリジナル』で連載がスタートし、22年かざま鋭二の死により終了。全84巻。小学館。

笠原

続く14番は一風変わった『ゴルフの微笑み。』に。古今東西の実在するゴルファーの逸話が紹介されています。全2巻で読みやすい。

加山

では15番、16番も趣向を変えた少年漫画を。主人公が450ヤードも飛ばす『ライジングインパクト』に、正確なショットを操る『ROBOT×LASERBEAM』も。

笠原

450は世界記録級(笑)。

『ゴルフの微笑み。』夏坂健/原案、かざま鋭二/構成・画
『ゴルフの微笑み。』夏坂健/原案 かざま鋭二/構成・画作家・夏坂健のエッセイをもとに、古今東西のゴルフにまつわる知られざるエピソードを紹介する短編集。全2巻。ゴルフダイジェスト社。
『ライジングインパクト』鈴木央/作
『ライジングインパクト』鈴木央/作小学4年の飛ばし屋、ガウェインの物語。1998年から2002年まで『週刊少年ジャンプ』で1度の終了を挟んで連載。全17巻。集英社。
『ROBOT×LASERBEAM』藤巻忠俊/作
『ROBOT×LASERBEAM』藤巻忠俊/作『黒子のバスケ』の作者による高校生のゴルフ漫画。武器はパワーではなくコントロール。2017年から18年に『週刊少年ジャンプ』で連載。全7巻。集英社。

加山

『わたるがぴゅん!』をはじめスポーツ漫画の名手である、なかいま強さんは『黄金のラフ』でゴルフをチームプレーとして描いたのが新鮮でした。

笠原

漫画家視点でも、ゴルフは様々に描かれてきたんですね。

『黄金のラフ ~草太のスタンス~』なかいま強/作
『黄金のラフ〜草太のスタンス〜』なかいま強/作筋肉自慢の藤本草太をはじめとする3人のプロゴルファーが一つのチームとなって、国内外の強敵に挑む。1999年から2011年まで『ビッグコミック』で連載。全33巻。小学館。

加山

ラストの18番ホールはパー5で『千里の道も』に。原作ありで、1人のゴルファーを丁寧に描く、ゴルフ漫画らしさが詰まった一作です。

笠原

ここまで回れば、知識だけでも相当なレベルでしょうね!

『千里の道も』大原一歩/作、渡辺敏/画
『千里の道も』大原一歩/作 渡辺敏/画プロゴルファーになる夢を抱く青年、坂本遼の半生を通してプロの世界の厳しさを描く。1989年から2014年まで『週刊ゴルフダイジェスト』に連載。全106巻。ゴルフダイジェスト社。

profile

フリーライター・加山竜司

加山竜司(フリーライター)

かやま・りゅうじ/1976年生まれ。文春オンラインなどで執筆。ゴルフ漫画に詳しいが、競技自体は未経験。編著に『「この世界の片隅に」こうの史代 片渕須直 対談集 さらにいくつもの映画のこと』(文藝春秋)など。
Twitter:@1976Kayama

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編集者・笠原誠

笠原誠(編集者)

かさはら・まこと/1982年生まれ。会員制サイト「Myゴルフダイジェスト」責任者。『週刊ゴルフダイジェスト』で連載中の『オーイ!とんぼ』担当編集者。
ゴルフ歴:22年、平均スコア:90、ベストスコア:78、ホームコース:寄居カントリークラブ

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