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「宮崎駿監督と高畑勲監督との時間は素晴らしかった」ブラジルの注目アニメーターが語る日本からの影響

  • 2023.11.29
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世界的な人気を誇るアニメーションのなかで、“新潮流”として注目が高まっているのは、欧州及び中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成される「イベロアメリカ」。そこで、ブラジルから届いたオススメの新作をご紹介します。

『ペルリンプスと秘密の森』

【映画、ときどき私】 vol. 618

テクノロジーを駆使する太陽の王国から来たクラエと、自然との結びつきを大切にする月の王国から来たブルーオ。2人の秘密エージェントは、巨人によって存在を脅かされている魔法の森に派遣されていた。クラエはオオカミにキツネのしっぽを持ち、ブルーオはクマにライオンのしっぽとホタルの目を持つ不思議な姿をしている。

正反対の世界からやってきた2人は、まったく異なる文化を持っており、一世紀にわたって対立を続けていた。そんな彼らが探しているのは、森を救うという「ペルリンプス」。光として森に入り込み、さまざまなエネルギーをもたらしていたが、巨人の支配が始まり、その存在は忘れられていた。反発しながらもペルリンプスの手がかりを探すために協力し合う2人だったが、物語は思いがけない結末にたどり着くことに…。

2022年のアヌシー国際アニメーション映画祭でオフィシャル・セレクションに選出され、「純粋な宝石」とも評された冒険ファンタジー。そこで、その魅力についてこちらの方にお話をうかがってきました。

アレ・アブレウ監督

「イベロアメリカ」のアニメーション業界において、もっとも重要な作家のひとりとされているブラジル出身のアブレウ監督。前作『父を探して』では、2016年アカデミー賞長編アニメ賞に南米の長編アニメ作品として初ノミネートを果たしています。今回は、最新作にかける思いや日本のアニメーションから受けている影響、スタジオジブリを訪問した際の忘れられない思い出などについて語っていただきました。

―タイトルにある「ペルリンプス」とは、ポルトガル語でホタルを意味する「ピリランポス」にヒントを得た造語ということですが、どのようにしてその言葉が生まれたのかを教えてください。

監督 過去にあった映画『グレムリン』や『グーニーズ』みたいな感じで、「いままでにない生き物の名前を作ろう」とみんなで打ち合わせをしていたんです。そのときに「ピリランポス…ペルリンプスはどう?」とあるスタッフが言い出し、「それにしよう!」とすぐに決まりました。

―直感的に音の響きがいいなと思われたのでしょうか。

監督 そうですね。一番は音が気に入ったというのがありますが、この言葉を聞いたときにみなさんが「なんだろう?」と思えるようなオープンな言葉でもあると思ったので、それで決めました。

問題に対して目をつぶることはできない

―確かに、日本人の私たちにとっても、気になる言葉ですし、劇中で意味を明確にしていない部分も含めて想像力をかき立てられます。

監督 まさにそれがこの映画のコンセプトでもあります。

―では、主人公のクラエとブルーオのキャラクター造形については、どのようにして誕生したのかをお聞かせください。

監督 最初に浮かんだのは、クラエのイメージ。衣装を身に付けていて、お化粧をしている男の子が森と水のあるところから出てくる様子が自分のなかに湧いてきました。そのあとに、ブルーオのキャラクターを思い付いたので、そこから彼らの関係性を考えることに。そして、2人のことをいつも見守っている第三の存在というのを作り上げていくうちに、今回のような物語になりました。

―なるほど。「本作ではエコロジーのメッセージを強調しているわけではない」とのことですが、それでもご自身のなかで森林伐採や先住民の問題への危機感が高まっていたからこそ、こういった作品になったのではないかなと。

監督 確かに、その通りですね。こういったことに対して目をつぶることができないというのはありますが、たとえ直接的に語らなくても、作品のどこかに環境や政治というものがかかわってきてしまうように感じています。特にアーティストというのは、外から受けたものを自分のフィルターを通して外に出すことが多いので、こういった緊急性の高い課題が作品に混ざってくるのは当然かもしれません。

子どもたちの信じる力が世界をよくしてくれる

―そのうえで、問題改善に必要だと考えていることはありますか?

監督 それは、子どもたちの信じる力です。だからこそ、映画を通して「世界には美しいものがある」と子どもたちに伝えるのは大切なことだと考えています。なぜなら、子どもたちの持つ信じる力が希望へと繋がり、世界をよりよくしてくれるからです。

子どもたちのなかにある“希望の光”は、大人になっても宿り続けると思いますし、それこそが困難に直面したり、闇のなかにいると感じたりしているときに、灯台の光のように私たちを導き、道を照らしてくれるものになると思っています。

―素晴らしいですね。実際、観客からはどのような反応がありましたか?

監督 ブラジルやフランスで上映した際には、多方面からいろんな反響があり、いい感想をたくさんいただきました。ただ、この映画は観客にとっては簡単な映画ではないというか、何も考えずにリラックスして観られる作品ではないかもしれません。

というのも、とてもオープンに作った映画なので、観ている人たちが考えながら自分に合わせて映画を完成させていくような側面があると考えているからです。受動的な作品ではなく、課題や心に残ったものをみなさんに持ち帰っていただき、それぞれの映画にしてもらいたいなと。もともと僕の映画はすべてが解決しない作品が多いほうですが、あとはみなさんの考え方や問題に合わせて観ていただけたらと思っています。

日本のアニメーションからは、多くのことを学んだ

―監督を筆頭に「イベロアメリカ」に対する注目も高まっていくと思いますが、ブラジルのアニメーション業界の現状についても教えてください。

監督 おそらく、いまブラジルで活躍しているアニメーション作家は、ブラジルのアニメーション業界においては、最初の世代と言えるかもしれません。なので、まだまだこれからですが、最近はアニメーション作家を目指す人も多くなってきました。

その背景としては、国際映画祭などで作品を発表する機会が増えてきたことやブラジル政府が映画制作に対して資金援助をしてくれる制度ができたことも大きいと感じています。

―今後の発展が楽しみなところですね。監督はジブリや手塚治虫さんなどがお好きなようですが、ご自身にとって日本のアニメーションというのはどんな存在ですか?

監督 子どもの頃から日本のアニメーションを見ていたので、ものすごく影響を受けていますし、多くのことを学びました。これは僕だけでなく、ブラジルにいるほかのアニメーション作家たちもみんな同じではないかなと。なので、僕が思う世界的な監督といえば、いつも日本の方が浮かびますね。最近も、7歳の息子と一緒に新海誠監督の『すずめの戸締まり』と細田守監督の『竜とそばかすの姫』を観て気に入りました。

今回の作品に関しても、直接的ではなくても間接的に日本のアニメーションから影響を受けているのは間違いないと言えるかもしれませんね。もちろん、自分のフィルターを通して表現していますが、これまでに外から自分のなかに入ってきたものを出している部分があるので、そういう意味で日本の要素が随所に見られるのではないかなと思っています。

正直さや友情の絆が持つ強さを感じてほしい

―過去に、スタジオジブリを訪問されたこともあるそうですが、印象に残っていることはありますか?

監督 僕にとって絶対に避けて通れないのがジブリですが、宮崎駿監督と高畑勲監督のおふたりとお会いできたことは、名誉なことだと感じています。そのなかでもうれしかったのは、おふたりから僕の作品である『父を探して』に関して、「白という色を映画に多用するのはすごく勇気がいることだよね」と評価していただいたことです。彼らのような巨匠と呼ばれる存在の方々と同席し、コーヒーを飲みながら彼らの作品や僕の作品について話せるなんて、本当に素晴らしい機会でした。

―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージとしてお願いします。

監督 いま、世界では戦争が起きている地域がありますが、この映画はそういった争いについても考えるきっかけになると思っています。特に、正直さや友情の絆が持つ強さといったことについて、ぜひみなさんで話し合っていただきたいです。

見たこともない景色が広がる!

監督独自の豊かな色彩表現に、目も心を奪われる本作。ふたりのかわいい主人公たちに誘われるカラフルで美しい世界のなかで、希望の光と現代が抱える闇に触れることよって、人間にとって大切なものは何かを改めて考える時間と向き合うことができるはずです。

取材、文・志村昌美

引き込まれる予告編はこちら!

作品情報

『ペルリンプスと秘密の森』
12月1日(金)YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー
配給:チャイルド・フィルム/ニューディア―

(C) Buriti Filmes, 2022

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