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しいたけ.さん流、夢や希望との出合い方 「夢を掴むには“信用貯金”も有効です」

  • 2023.11.26

「夢や希望が持てない」という悩みは普遍的。でも現代は多様化やネット社会により、苦悩が複雑に。作家、占い師のしいたけ.さんが、夢と縁を繋ぐ方法をお伝えします。

夢や目標は必要なのか

闘争型で上昇志向の夢から箱庭的で朗らかな夢へ。

昔、お酒を飲んでいる席で「もっと夢を持たなきゃ」と、ギラギラした目つきの人たちに迫られたことがあります。彼らは「お金を稼いでもっと有名になれ」という趣旨の話をしていたけど、僕はそれによって占いが雑になってしまったら失うものが大きいと思い、納得できなかったんですね。それ以来、夢ってなんだろうとずっと考えていて。

夢っておそらく、自分のパワーや速度を増大させてくれるものだと思うんです。たとえば今、頑張って50の成果を出したとして、来年また頑張れば100になるところを、夢のチューニングをすることで1000に伸ばせるかも、というような。だから自分が知らなかった世界にたどり着くための“エンジン”としてはすごく優秀で、尊いものなんだと思います。

かつてはその夢作用に後押しされた時代があって、それこそ「クリスマスまでに恋人を!」みたいにハングリー精神を駆り立てる闘争型の世界ですね。でも今はもっと内面の平和を求めるようになり、自分だけの箱庭的な世界に“推しの石”を飾って紹介し合うような文化に移行した。僕はそういう朗らかな夢のあり方があってもいいのではと思っています。

若い世代がいわゆる闘争型の夢を持ちにくくなったのは、いくつか理由があります。ひとつは多様化社会です。というのも、遊びもエンタメもみんなが同じものを味わって友達同士の話題がほぼ共通だった時代は、「俺は将来アーティストになるぜ」みたいな目標を定めることで差別化をはかろうとした部分もある気がします。でも今はコンテンツも多様で、それぞれが生まれながらにオリジナルの世界を持っている。差別化する必要がなくなっちゃったんですよね。そして、やっぱりネット社会の影響は大きいです。知らない世界を確かめに行くことは、夢を持つ原動力のひとつになるけど、今は情報量が多すぎて、だいたいのことを知って、経験した気になってしまう。常に“答え”らしきものに触れている状態ともいえる。だから、何もしないで焚き火を眺める時間を持つとか、夢や希望を抱くための空きスペースを確保する下準備が必要な時代なんだと思います。

待っているだけでは夢や希望とは出合えない。

箱庭的な夢もいいけど、もう少し推進力のある夢や希望を得たいと思った時に何が大切か。それは、自分を変えていく姿勢や行動です。「こういう価値観を大事にして日々生きてきました」という自己紹介がない限り、夢は姿を現さないから。毎日未熟さを痛感しながら必死に食らいついた期間の先に、「やあ、おまたせ」と出てきてくれる。この夢はチャンスと言い換えてもいいものです。僕の例でお話しすると、アルバイト時代に時給以上の働きをしようと決め、頼まれない掃除や手伝いを率先してやり続けました。その差額が“信用ポイント”として見えない口座に貯まり、将来に繋がると信じ込んで(笑)。実際、それは間違ってなかったです。意地や信念を持って何かに取り組んできた人は、「これをあなたにやってほしい」と感じてくれた人や運命から、夢を託されることが不思議とあるんです。夢のために何をしたらいいかわからなかったら、信用ポイントを稼ぐ活動から始めるのもいいかもしれません。

しいたけ.さん 作家、占い師。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強する。『しいたけ.の小さな開運BOOK』『しいたけ.のやさしいお守りBOOK』(共に小社刊)が好評発売中。

※『anan』2023年11月29日号より。イラスト・100%ORANGE 取材、文・熊坂麻美

(by anan編集部)

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