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しいたけ.さん「時間が動かないところが地元のありがたさであり、窮屈なところ」 読者の悩みに助言

  • 2023.11.25

「地元に帰りたくない!」や「共同生活が苦手だけれど、結婚できますか」など、読者の“日々の暮らしの悩み”に、作家、占い師のしいたけ.さんが回答します。

地元に帰りたくない!

地元が苦手です。はっきり言って地元の同級生より今の友達の方が大事だし、近所の人が全員緩く繋がっている感じとか独特の価値観も窮屈でイヤ。なるべく帰らないようにしているけど、一人っ子だし、ゆくゆくは実家で暮らすことになるのかな…。考えるだけで憂うつです。

物理的に距離を置くか“茶番”に付き合う感覚で。

これは僕も共感します。地元って、自分が小中学生くらいまでに備えていた性格や特性、友達とのヒエラルキーが永遠に続いている世界です。幼い頃にぼんやりしてちょっと馬鹿にされていた人が、大人になって多くの部下を率いるリーダーになったとしても、地元に戻れば、“あのぼんやりした子”以外の何者でもないというか。その時間が動かないところが地元のありがたさであり、窮屈なところでもあるんですよね。だから地元の居心地がいい人はぜひ頻繁に帰るといいし、そこにいることのメリットを感じない、むしろ苦痛を感じる人は、帰らない生き方を本気で模索していった方がいいのかなと。で、地元で暮らさざるを得なくなった時の対処法は、茶番に付き合う意識を持つことだと思います。「なんでこの人たちはいつまでも変わらないんだろう」みたいなマイナス面ばかり見てしまうと、お互い不幸な関係になってしまう。人は価値観や文化が違って当然ですよね。そこで反発したり、逆に馴染もうとしたりすると息苦しいだけ。同じ価値観で語り合える人はもう人間国宝のように大事にして、それ以外の人とは、たとえ親でも「半分茶番」と思って付き合う。これって、けっこう大事な気がします。

共同生活が苦手だけれど、結婚できますか。

昔から団体行動が苦手です。友達と旅行する時も緊張してしまい、ひとりになるとホッとします。このままでは結婚して共同生活が営めないかもしれない。だからといって、生涯ひとりというのも寂しい。どうしたら他人と緊張せずに過ごしたり暮らしたりできるでしょうか。

自分の流儀を少しだけ変えられれば大丈夫!

僕も団体行動が苦手ですが、意外となんとかなります。方法としてまず、友達の定義を1万分の1くらいまで薄めてみて。そうすると、近所のコンビニの店員さんや駅員さんがうっすら友達になって、顔を見かければ「今日も元気そうだな」みたいに親しい感覚を持つようになります。それを続けていくと徐々に人と向き合うことへの苦手意識が和らいでいったりします。あと団体行動が苦手な人は、人に丁寧に対応しようとしすぎたり、爪痕を残そうとする野心が意外とあって。だから、引退した隠居として人に接するとラクになるはず。相手が「奈良に行ってきた」と話したら、奈良の特産物や奈良出身のスターを探して“上手い返し”をしようとしないで「私も行きたいんですよ~」と穏やかな隠居の空気感を出す。すると相手は安心して会話が弾んでいき、あなたも緊張がほどけていきます。それから誰かと共同生活を望む場合は、自分の流儀や価値観を5分の1くらい相手の望みに合わせることが大切です。「日曜は一緒に出かけたい」と言われたら、「毎週は無理だけど1か月に1回は大丈夫です」とか。相手の話をよく聞き、要望を受け止めて改善する意識を持つと、だんだん共同生活向きになっていきますよ。

世界情勢が不安で落ち込んでしまいます。

コロナ禍が落ち着いたと思ったら、世界では戦争や衝突が絶えず、すごく不安です。でも日々を生きるしかないから、とりあえずスキルアップに繋がる努力をしているけど、この先世界が大きく崩れてしまう可能性だってある。頑張る意味はあるのかなとも考えてしまいます。

ささやかな願いや思い出が不安な世界を生きる支えに。

この不安は、僕も含めて皆さんが抱えていると思います。世の中は相変わらず先が見えなくて、世界情勢の影響を少なからず受けてしまう状況だから。こうした大きな不安に対抗する手段は何か。僕は「思い出作り」だと思っています。人はなぜ生きるのかを突き詰めていくと、立派なことをやり遂げる、成功する、そういうことよりも、「いつかまたあの子と深夜までお喋りしたいな」とか「とっておきの肉まんで彼を喜ばせよう」とか「またこのメンバーでラーメン食べに行こうね!」みたいな小さな願いのために生きている気がしていて。不安に引きずられそうな時、そういうささやかな日常のひとコマが大きな錨となって自分を繋ぎ留め、次の目標にもなってくれると思うんです。それから今って、今後の備えや成長のための活動が重視されがちだけど、それだけをやり続けると、気持ちが枯れる「気枯れ」現象が起きやすいです。それこそ、人生ってあっという間に終わってしまうかもしれないからこそ、自分だけの思い出を大切に作っていく義務がある気がしています。「頑張ったり、生きている意味あるのかなぁ」と思ってしまったら、「思い出作り」に本気になってみて。人生が変わってくるはずです。

しいたけ.さん 作家、占い師。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強する。『しいたけ.の小さな開運BOOK』『しいたけ.のやさしいお守りBOOK』(共に小社刊)が好評発売中。

※『anan』2023年11月29日号より。イラスト・100%ORANGE 取材、文・熊坂麻美

(by anan編集部)

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