1. トップ
  2. お仕事
  3. 令和のカリスマ店員に選ばれたのは、3児の母で時短勤務。ユナイテッドアローズ 新宿店の仲 希望さんが見つけた、店頭以外でもパフォーマンスできる場

令和のカリスマ店員に選ばれたのは、3児の母で時短勤務。ユナイテッドアローズ 新宿店の仲 希望さんが見つけた、店頭以外でもパフォーマンスできる場

  • 2023.11.23

“令和のカリスマ店員を決める”をテーマにしたコンテスト「STAFF OF THE YEAR 2023」で全国8万人以上の販売員の中から、見事グランプリに輝いたユナイテッドアローズ 新宿店の仲 希望(なか・のぞみ)さん。中1、小5、小2の3兄妹の母でもあり、6年ほど時短勤務を続けています。制約がある中、どうしてグランプリを受賞できたのか、時短勤務に対しどんな思いを抱いているのか、時短勤務者としてオンラインストアにどんな可能性を感じているのか。新しいアパレル販売員の働き方を体現する仲さんにお話を伺いました。

新卒でユナイテッドアローズ社に入社し、販売員一筋

仲さんは新卒でユナイテッドアローズ社に入社して以来、20年間、販売員一筋のスペシャリスト。そもそも客層が幅広いユナイテッドアローズで「40代、50代の母親世代の方々を20歳の自分が接客をして、ご納得していただくのはすごく大変だった」と仲さんは振り返ります。

画像: ユナイテッドアローズ 新宿店の仲 希望さん。 出典:ユナイテッドアローズ

「お客様と私の考える可愛いが違っていて、自分の感覚で伝えると失礼に当たってしまうなど、世代間ギャップを感じることもありました。説得力がなかったのは自覚していたので、商品知識を身に着け、なぜこの商品が可愛いのか、お客様にご納得いただける理由を伝えるようにしました。しっかり説明ができるようになったことで、お客様との距離を縮められた気がしました」

つわりが重く、思うように店頭に立てないことが負い目に

最初の大きな転機は27歳で第1子を妊娠したこと。

「20歳から風邪も引かず、ずっと仕事をがんばってきました。だから妊娠したら少しマイペースに働こう、と思っていたんですね。だけど、つわりが重く、妊娠5週目くらいから立っているのもしんどくなってしまって。早めに産休に入ることになり、働けない自分に負い目を感じていました」

第1子の育児に追われている頃は、SNSが普及し始めたばかり。

「Facebookで仕事をがんばる同僚の投稿を見るたび、置いていかれている感じがあって落ち込みました」

画像: 仲さんが勤務するユナイテッドアローズ 新宿店の店内。 出典:ユナイテッドアローズ

「みんなに迷惑をかけたぶん、復帰したら会社への恩返しも含めて一生懸命働きたい」と考えていたものの、第2子の時もつわりがひどく、働けませんでした。

妊娠や出産をきっかけに仕事を辞める人はいます。特に仲さんのように妊娠中に体調が優れないタイプなら、その選択をなおさらしそうに感じます。それでも彼女の中に仕事を手放す選択肢はなく、必ず戻ってきたいとの思いから第2子の育休後は時短勤務で復帰。

画像: ラベンダー色がきれいなニットは、仲さんのこの冬のイチオシ。「フォックス カシミヤ クルーネックニット」各¥24,200すべて【ユナイテッドアローズ】 出典:ユナイテッドアローズ

ユナイテッドアローズ社の育児休業復職率は91.4%(2022年度)。親になっても働きやすい環境が整えられ、育児を理由に時短勤務をする人は多くいます。それでも時短勤務に罪悪感を覚えたそう。

「時短勤務だからって同僚がプレッシャーをかけてくるわけではないんです。逆に気遣ってくれるくらいで。でも、それが申し訳なくて」

そして第3子の妊娠。やはりつわりがあったため休職しますが、妊娠後期に差し掛かる頃には少し復調したように感じ、一時的に復帰します。

「完全につわりがなくなったわけではありませんでしたが、勤務中は気を張っていたせいか、働けたんです。今となってみればそこまで無理しなくてもよかったかもしれないのに、第3子は出産予定日の2週間前まで働いていました」

画像: アパレルの販売員という職業があまり身近でなiかったという仲さんのご両親。知名度のあるユナイテッドアローズ社なら安心してもらえるかも、と入社。 出典:ユナイテッドアローズ

第3子の育休を終えた2017年に復帰。当初は少しでも早く仕事を終えるため、昼の休憩なしで10時〜15時の勤務。それでもやはり申し訳ない気持ちがあったそう。

「お店が忙しくなる時間に帰るので、申し訳なくて眠れなくなった時期もありました。それに独身時代と同じ仕事量ができないので、任せてもらえなくもあって。がんばりたいのにがんばれない、そんなもどかしい気持ちでいっぱいでした」

毎朝早めに出社してスタイリングを自撮りするのが日課に

コロナ禍の緊急事態宣言により、お店が開けられない日々が続く2020年に再び転機が。多くのアパレルメーカーがそうであったように、ユナイテッドアローズ社もデジタルシフトが進み、全社をあげてECサイト「ユナイテッドアローズ オンライン」により注力し始めます。そんな時、時短勤務による制約に悩んでいた仲さんに、オンラインストアでスタイリング投稿をしてほしいと、当時の店長から打診があります。

「店長から熱心に言われて。仕事をお願いされる機会が減っていた私には嬉しかったですし、そこまで言ってくれるならやろう、と決意しました」

画像: 「ユナイテッドアローズ オンライン」の仲さんのスタイリングページ。 出典:ユナイテッドアローズ

今でこそ毎日スタイリング投稿をしていますが、開始した当初は戸惑いばかり。

「撮られるのが恥ずかしかったし、どう撮っていいのかもわからなくて、まず撮影に抵抗がありました。スタッフ同士で撮りあったりとか、励まし合いながら取り組んでいましたね」

更新頻度が高い方が、閲覧が増える傾向にあるのがスナップのコンテンツ。仲さんもできるだけ毎日更新を目指していたものの、忙しい店舗のため、他のスタッフに撮影をお願いしづらく投稿できない日もあったそう。そこで閃いたのが自撮り。2022年からは朝早めに出勤して、カメラを三脚に据えて一人での撮影を始めます。

画像: この秋冬、仲さんがおすすめするスタイリング。黒〜グレーでシックにまとめながらも、ニットのラメがさりげない輝きを加えます。コート¥63,800、中に着たニット¥20,900、パンツ¥25,300、パンプス¥25,300すべて【ユナイテッドアローズ】 バッグ¥19,800【ザ・リラクス】 出典:ユナイテッドアローズ

現在では1日に3〜4点投稿することも珍しくなく、ユナイテッドアローズ社の全国のスタッフが参加するスタイリング投稿でもフォロワー数はトップクラスを誇ります。毎日投稿を始めることで、仲さん自身にも変化が。

「店頭接客と違ってお客様が見えないので、投稿してみないと着用している洋服への反応がいいか悪いかわからないんですね。投稿数が少ない頃は反応が少ないと凹むことがありました。今も反応の悪い写真はあるんでしょうけど、それ以上に投稿数が多いぶん、反響があるので個人的に凹むことは少なくなりました」

出場するからには優勝! ストイックに取り組んだ「STAFF OF THE YEAR 2023」

さらに新たな挑戦として「STAFF OF THE YEAR 2023」への出場を決心。これに関しても並々ならぬストイックさが垣間見えます。

「昨年大会は出場する勇気がなく、見送りました。でも昨年の模様を見て、自分の実力がどのくらいなのか、挑戦したいと思うようになって。負けず嫌いなのでしっかり備えたい。だから1年かけて準備しました」

「STAFF OF THE YEAR」では店頭だけでなく、オンライン接客も評価の対象。出場に当たってはInstagramのアカウントが必須だったため、発信が苦手と言いながらも2022年7月にはInstagramも始めます。

「スタイリング投稿の実績が出始めていたので、会社からインスタもしてほしいと言われていました。インスタってプライベートな部分も発信するじゃないですか。それが苦手で、1年ほど断り続けていたんです。今でも、どういう投稿が喜ばれるのか、模索している最中です(笑)」

画像: 仲さんのInstagramのページ。「ユナイテッドアローズ オンライン」よりも普段着に近い仲さんの写真がアップされています。 出典:ユナイテッドアローズ

「STAFF OF THE YEAR 2023」では、まず全国の様々なショップから参加した8万人による第一次審査が行われます。ユナイテッドアローズ社では独自に第一次審査の社内ランキングを算出。そこで「1位通過できなければ、本選は諦めよう」と思うほど真剣に取り組みます。そして社内で1位を獲得し、本選へ。

「特に言われたわけではないのですが、会社の代表として出場しているので、全国ではまったく通用しなかったとなると、同僚や会社の人は残念に思うだろうなって。だから絶対に優勝しないと、と自らにプレッシャーを課していました」

画像: 「STAFF OF THE YEAR 2023」で栄冠に輝いた仲さん。 出典:ユナイテッドアローズ

そう考えていたからこそ、優勝したのがわかった瞬間、まず見えたのは応援席で喜ぶ上司や同僚たちの姿。そこで喜びと同時に安心感が沸いてきたというから、なんとも仲さんらしい。受賞から約2カ月、大きな変化としては、より真摯な接客を心がけるようになったこと。

「大会のことを知ってくださっているお客様からお声がけいただくことがあります。がっかりされないようしっかりご案内しないと、と襟を正す思いです」

オンラインストアは年中無休のお店。時短勤務者が時間を気にせず接客できる場

その後、仲さんは、ユナイテッドアローズ社内で創設された「DXセールスマスター」初代認定者に。これは店頭での実績に加え、「ユナイテッドアローズ オンライン」のスタイリング投稿の本数やそれに係る売上、PV、お気に入り登録数が社内最上位ランクであるといったオンライン接客を含めた実績基準を満たすのが認定条件。「DXセールスマスター」に選ばれたということは、DXを推進するユナイテッドアローズ社の模範的販売員として認められた証でもあります。

「特に以前からすることが増えたわけではないんですけども、これはこれでプレッシャーなんです(笑)。以前は簡単にオンライン投稿をやめたいって言えてたんですが、そうとも言えなくなり……(笑)。責任を感じています」

画像: 「長女だからか、怒られるのが苦手ですっごい凹むんですよ。何も言われないよう気をつけています(笑)」という言葉からも完璧主義な一面がうかがえる仲さん。 出典:ユナイテッドアローズ

初代「DXセールスマスター」に選ばれたのは3人。そのうち時短勤務は仲さんだけ。

「大会に出たことで同じ時短勤務の人から励ましや共感のお言葉をいただきました。夜に仕事ができない負い目を感じているのは私だけでなく、たくさんいらっしゃるんですよね」

当初は苦手意識を持っていたスタイリング投稿も、視点を変えれば店頭に立てる時間の短さをカバーできるもう一つのショップである、と思い至ります。

「オンラインストアは365日24時間オープンのお店。夜に私が紹介した商品が売れると、自分はこの時間店頭には立てないけれど、役に立てているとすごく嬉しくなりますし、時短勤務の負い目も少し軽くなります。これからは店頭じゃない場所でもパフォーマンスができること、時短勤務でもいろんな働き方があることを、伝えられればいいな、と考えています」

※価格はすべて税込みです

Photograph:細谷悠美
Senior Writer:津島千佳

元記事で読む
の記事をもっとみる