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生まれてこなければよかった? 「親ガチャ」問題をワンピ、ポケモンから考える

  • 2023.11.23

「親ガチャ」という言葉がすっかり定着した。子は生まれてくる親を選べず、貧困や"毒親"などで苦しむこともある。

人生は本当にガチャ=運で決まってしまうのだろうか? それとも、努力次第でガチャを乗り越えられるのだろうか?

「100分de名著」などでも活躍する哲学者の戸谷洋志さんが、親ガチャを哲学と社会から考えた本『親ガチャの哲学』(新潮社)を2023年12月17日に上梓する。

本書では、人気アニメやネット上で話題となった事件など、身近な切り口から親ガチャを考察している。「親ガチャで不幸になるなら生まれてこない方がよかった」という反出生主義は『ONE PIECE』や『進撃の巨人』の登場人物から、「全ての出生を"当たり"にすればいい」という優生思想の問題は『ポケットモンスター』のミュウツーから考えている。

さらに、2016年にインターネット上で話題となった投稿「保育園落ちた日本死ね!!!」や、「無敵の人」が起こす凶悪事件なども題材に。多くの人が自分の価値観を見つめなおした出来事を、哲学者はどう見たのだろうか。

親ガチャを中心とするさまざまな社会問題を通して、「自分の人生を生きるとはどういうことか」を考える一冊だ。

■目次
序章 運vs努力――人生を決めるのはどちらか

第1章「親ガチャ」とは何か
誰も生まれる環境を選べない 若者を蝕む絶望感 松本人志「人生は全部ガチャ」 若者の宿命論 すべての人生を「当たり」に? どんなガチャを引いても豊かに生きられる社会 社会に連帯を作り出すには

第2章「無敵の人」の自暴自棄
秋葉原通り魔事件 「無敵の人」の二つの側面 自暴自棄型犯罪の増加 自分の人生を引き受けられない 無力感が責任を失わせる 「自分はどうでもいい人間」という嘆き 親ガチャと自己効力感 保障か、包摂か

第3章 反出生主義の衝撃
「生まれてこない方がよかった」――『ONE PIECE』の場合 「生まれてこない方がよかった」――『進撃の巨人』の場合 ベネターの「反出生主義」 食後のケーキを食べられなかったから 生まれなければ快楽も苦痛もない 反出生主義を論破できるか? なぜ人々は反出生主義を求めるのか

第4章 ゲノム編集で幸せになれるか
ゲノム編集の衝撃 デザイナー・ベイビーと生命倫理 ミュウツーの苦悩 ナチスと優生思想 ゲノム編集が孕む危険性 「リベラルな優生学」の問題 責任と人生の物語 遺伝子操作では解決出来ない

第5章 自分の人生を引き受ける──決定論と責任
決定論とは何か 人間の行為も決定されている? 飛ぶ石の比喩 責任はどこへ行くのか 自由意志を前提としない責任 生き残った者の罪悪感 人間は自分以外ではありえない 「良心の呼び声」 自分自身を引き受ける

第6章 親ガチャを越えて
苦境のなかで責任の主体にはなれない 他者の声に耳を傾ける 「保育園落ちた日本死ね!!!」が意味すること 〈われわれ〉の空洞化 新しい中間共同体 ロールズの思考実験「無知のヴェール」 最も弱い立場から社会を考える 社会 as a service ナショナリズムの限界 〈われわれ〉を拡げていく 偶然と連帯

終章 自己肯定感――私が私であるという感覚

あとがき

■戸谷洋志さんプロフィール

とや・ひろし/1988年、東京都生まれ。関西外国語大学准教授。専門は哲学・倫理学。法政大学文学部哲学科卒業、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。『ハンス・ヨナス 未来への責任 やがて来たる子どもたちのための倫理学』『未来倫理』『友情を哲学する 七人の哲学者たちの友情観』など著書多数。

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