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「お母さんの作文は書けない…」母がいない私に祖母がかけてくれた予想外の言葉<わたしの3人の母>

  • 2023.11.22

10代で結婚した両親のもとに生まれ、2人姉妹の次女のこだころ.さんは4人家族と父方の両親の6人暮らし。3歳の時に両親が離婚し、おばあちゃん子として育ちます。無職の父は、りーと名乗る18歳の女性と再婚。継母となる彼女は気性が激しく嫉妬深い性格で、実母の写真を燃やしたり子どもに容赦なく手をあげたりしますが、母の実家のお金目的で月1の面会が許されるように。しかし母にも新しい男性の存在ができ、子どもの妊娠を機に実母との面会は途絶えます。母と会えなくなっても祖母がいつも支えてくれました。しかし、中学になるとこだころ.さんも反抗期を迎え、祖母を遠ざけるように。ほとんど家に帰らなくなり、高校も受験せず通信に通いながらバイト生活。ある日、預けていた免許の貯金にまつわるトラブルでイライラしていたこだころ.さんは、心配してくれる祖母に辛く当たってしまうのですが、祖母はその後脳梗塞で倒れて植物人間となってしまうのでした。

半年後、車の免許を取得したこだころ.さんは家を出ます。月に何度か祖母に会いに病院に行き、いろんな報告をして以前よりも祖母といる時間が増えました。

ある日、仲の良い友人に祖母のことを話して共感してもらうも心にモヤモヤを抱えてしまい、気づけば祖母のいる病院へ。友人に対して卑屈な反応をしてしまった自分を責め、祖母の隣で泣いていると話せない祖母が大きな声を出して目には涙を浮かべていました。

その後、入院費が払えなくなったため祖母は自宅看病に。こだころ.さんは付き合っていた彼氏について行き県外暮らしとなり、2年が過ぎていました。そこへ叔母からのメールが届きーー。

いつか来ると思っていたお別れでも、すぐには受けいれられない……

叔母からのメールには、祖母が前日息を引き取り、葬式があるから帰ってくるようにというメッセージが。

いつかはお迎えがくるとはわかっていたものの、それを受け入れることができないまま実家へ。お葬式が終わった夜は祖母の隣で寝て、最後のお別れをすることに。自分の結婚式を見るって約束したのにと話しかけながら、こんな約束をしました。

「私、絶対幸せになるって約束するね」

翌日、火葬場で待っている間、家族が泣くなか自分だけ泣けず、冷たい人間なのかと思っているうちに火葬炉が開けられると、そこには祖母のお骨と機械の心臓弁がありました。

カチカチと鳴る祖母の心臓の音、大好きだった祖母の音。その音とともに祖母とのいろんな想い出が一気によみがえり、涙が流れるのでした。

生前、祖母はマンガを描いているこだころ.さんに大きくなったら自分のことを描いてねと話していましたが、こだころ.さんはこうして祖母のマンガを描き上げその約束を果たすことができました。

その後、父の暴力が原因で父とりーは離婚し、父と祖父は2人暮らしに。こだころ.さんはいろんな別れや出会いを経験し結婚、子どもを授かり幸せに暮らしていると言います。
ある日、昔の思い出が夢に。お母さんについての作文が宿題ですが、自分にはお母さんがいないから書けないと悩んでいると、祖母がこう言いました。

「あなたには2人もお母さんがいるんだよ。それって他の誰よりもすごいことなんだよ」

「他の誰よりも幸せものなんだよ」

そこで目が覚めました。

昔のやり取りを思い出し、横で寝ているわが子に目をやり心の中で話しかけます。

「おばあちゃん違うよ」

1人目の母は実母、この世に自分を産んでくれました。

2人目の母は継母、18歳から家計を支えてくれ中学も卒業させてくれました。

そして、

3人目の母は祖母、こうして今自分が幸せなのはすべて祖母のおかげ。

こだころ.さんはそれぞれの母に感謝し、大好きな祖母にお母さんになってくれてありがとうとあたたかい気持ちでいっぱいでした。

◇ ◇ ◇

祖母が病院から自宅看病になり2年。いつか別れのときがくることはわかっていましたがすぐには受け入れられず、お葬式はあっという間に終わり火葬場でみんなが泣いているときには涙が出なかったこだころ.さん。ですが、火葬炉から出てきた機械の心臓弁を見ると一気に現実に引き戻されると同時に、祖母との思い出も一緒にあふれ出して涙が流れました。

祖母はこだころ.さんの結婚式を見るという約束は叶いませんでしたが、大きくなったら祖母のマンガを描くという約束と、絶対幸せになるという約束は、こだころ.さんがしっかり果たすことができました。

それは、この夜に産んでくれた実母がいて、10代という若さで家計を支え学校を卒業させてくれた継母がいて、そばにいて愛情を与えてくれた祖母がいて。大切な3人の母がいたおかげで叶えることができたのです。

一時は人を恨んだり、愛情が疎ましくなったりして道を外れそうになったこともありましたが、こだころ.さん自身もわが子という愛しい存在ができて、それぞれの母の気持ちも深く理解できるようになったのではないでしょうか。今のこだころ.さんの幸せを天国の祖母もきっと喜んでくれているはずです。


著者:マンガ家・イラストレーター こだころ.

ベビーカレンダー編集部

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