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オレならこうするね!〜高橋ヨシキ、スター・ウォーズに捧ぐ偉大なる妄想〜

  • 2023.11.21
スターウォーズ イラスト

最新のドラマシリーズ『スター・ウォーズ:アソーカ』のシーズン1が終了。今後に発表される予定の新しい映画3部作やドラマの制作がアナウンスされ、増長を続ける『スター・ウォーズ』の世界。しかし、ここで気になるのが、ちょっと右往左往しがちな「遠い昔 はるかかなたの銀河系」の行く末だ。

楽しみながらも、少しモヤモヤした気持ちがあるのは、『スター・ウォーズ』を追いかけ続けている高橋ヨシキさんも同じこと。まずは、ドラマシリーズの感想を聞いてみた。

混沌か、希望か。『スター・ウォーズ』ドラマシリーズの行く末

一番の問題は『スター・ウォーズ』がどういう方向に向かうのか、決まっていないということにあると思います。ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1978年日本公開)から始まったオリジナル・トリロジーや、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)からなるプリクエル・トリロジーの脚本を書いたときには、物語がどこに向かうのか、大まかな方向性が頭の中にありました。

全体の設計図があるから、オリジナルもプリクエルも「トリロジー」として成立している。ところが、『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』(2015年)から始まったシークエル・トリロジー、特に『エピソード8/最後のジェダイ』(2017)が示した方向性がファンに不評だったことから、あわてて『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)で軌道修正をしましたが、そのことで『スター・ウォーズ』世界全体の方向性がよく分からなくなってしまった。シークエルをそのまま継いでうまくいくのか自信がないので、ファンの評判など様子を見つつも、決定的な方向性を示せずにいる。

例えば『ボバ・フェット』のドラマシリーズは、予告編の段階では『ゴッドファーザー』や『スカーフェイス』的な、マフィアの世界やギャングの抗争を描く作品になるのでは、と期待していました。そういう要素は本編にもありましたが、シリーズ終盤に突如『マンダロリアン』のクロスオーバーが始まってしまいました。

途中でいわばテコ入れのような形で人気キャラクターを投入するということが行われているわけで、全7話しかないシリーズなのに、もしや行き当たりばったりなのか?と驚かされました。タスケン・レイダーとの交流シーンなど、いいところもあったのに……。そういう行き当たりばったりな感じは、残念ながら『オビ=ワン・ケノービ』を観ても思ったことです。

『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のスピンオフドラマ『キャシアン・アンドー』は、物語の進行はスローペースだったものの、意欲的な作品で、着地点も良かったと思います。

これは『エピソード4/新たなる希望』より少し前の話で、帝国軍の目をかいくぐってレジスタンスが活躍するわけですが、これは第二次世界大戦中、フランスをはじめナチスの占領下にあった地域をイメージしています。もともとオリジナル・トリロジーは第二次世界大戦の要素を多く取り込んだ作品だったので、そこを広げて「帝国が支配する時代」のディストピア感をうまく表現したと思います。

『アソーカ』は、アニメ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』『スター・ウォーズ 反乱者たち』から続く物語ですが、アニメから違和感なく実写に移行できていて嬉しかったです(笑)。こちらは『キャシアン・アンドー』とは逆に、『スター・ウォーズ』のもう一つの面、すなわち魔法とチャンバラの世界をメインに描いていて、ヤドカリ種族やキャプテン・イーノック、女性同士の激しいライトセーバー戦など見せ場も多い。

気になったのは『反乱者たち』に出てきた、時空を超越するポータル「世界の狭間の世界」が実写で出てきたにもかかわらず、活用されずじまいに終わったことです。「あれを使えばタイムラインを分岐させて『スター・ウォーズ』を立て直せるのでは?」と世界中のファンが思っていましたが、そこはやっぱり先送りなのか、という。

『アソーカ』のファーストシーズンは、散り散りになった仲間がいろいろな苦難を経たのちに再会する、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』の構成を大まかに踏襲したものです。だから言ってみれば「中継ぎ」ではあるんです(笑)。

大きな方向性が示されるかと思ったら、回答はやっぱり出していない。スローン大提督がスター・デストロイヤーに積み込ませていた荷物がクローン技術に関連するものだという説もあって、つまり『マンダロリアン』同様、シークエルへと繋げる道も確保しているのがやきもきさせられます(笑)。でもそうでない方向性に行くことも「まだ」可能ではある。いい加減、腹をくくってほしいものです。

オレの考えた『スター・ウォーズ』のスピンオフ!

ドラマシリーズとしても楽しめるスター・ウォーズの世界。ヨシキさんは、今後どんな作品が観てみたいのだろうか?まずは、小説やヘイム作品はあるものの、まだ映像作品になっていない物語を挙げてもらった。

妄想1『スローン大提督』

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スローン大提督はもともとティモシイ・ザーンが1991年から1993年にかけて発表した、通称「スローン3部作」と呼ばれる小説(『帝国の後継者』『暗黒の艦隊』『最後の指令』)で初登場した、帝国軍きっての軍師。『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』の後、反乱軍が新共和国を樹立した時代に帝国再興のため暗躍した重要人物で、インペリアルI級スター・デストロイヤー「キメラ」を指揮官に、帝国軍第7艦隊を率いる。チスという青い顔の種族にもかかわらず、エイリアン差別の横行する銀河帝国内で大提督に上り詰めた実力派で、豊かな知識と教養を誇る魅力的なキャラクターである。小説だけでなくコミックやゲームにも登場しているが、その印象を決定づけたのはアニメシリーズ『反乱者たち』で、このときスローン大提督の声を担当した俳優ラース・ミケルセンが実写版『アソーカ』でも続投している。

「今回『アソーカ』でついに実写で登場したスローン大提督は人気の高いキャラクターで、実力も見た目のインパクトも『スター・ウォーズ』世界の名ヴィランに引けを取りません。『アソーカ』に出てきた彼の側近で、黄金のマスクをつけたストームトルーパーのキャプテン・イーノックもインパクト満点だったし、そのあたりも含め実写でいくらでも掘り下げることができるのではないかと思います。キャプテン・イーノックはさっそくコスプレイヤーやフィギュア製作をしている人たちの注目の的になっていますよね」(高橋)

妄想2『スターウォーズ シャドウズ・オブ・ジ・エンパイア 帝国の影』

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『エピソード5/帝国の逆襲』と『エピソード6/ジェダイの帰還』の間の時期を、ゲーム・小説・コミック・トレーディングカード・ポスター・オモチャ・サウンドトラックなど、ありとあらゆるメディアを横断して描いた作品で、映画本編だけがない状態で「映画が公開されたのと全く同様の商業的可能性を追求した」異色のメディアミックス。

「スティーヴ・ペリーによる小説版『帝国の影』は1997年に邦訳も出ていて、ファミコン版、PC版のゲームもありました。『帝国の影』のプロジェクトは1997年に劇場公開された「特別編」に先行するもので、『エピソード4/新たなる希望』の「特別編」には『帝国の影』に登場する密輸業者ダッシュ・レンダーの宇宙船「アウトライダー」も追加されています。『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』の間なので、ダッシュ・レンダーは不在のハン・ソロに代わるキャラクターというわけです。

ぼくのお気に入りは犯罪シンジケート「ブラック・サン」を率いるプリンス・シゾールというエイリアンで、彼はフェロモンを分泌してレイア姫をメロメロにしてしまいます。危うしレイア!その危機を救ってくれたのはチューバッカでした(笑)。メディアミックス『帝国の影』に足りないのは映画本編だけなので、アニメでもいいのでぜひ映像化してほしいものです」(高橋)

妄想3『マスターズ』

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映画でお馴染みのヨーダを筆頭に、メイス・ウィンドゥやオビ=ワン以外にも、コミックスや小説にはさまざまなジェダイ・マスターが登場する。種族や能力もさまざまなため、かなり拡がりのあるシリーズになる予定。

「『スター・ウォーズ:テイルズ・オブ・ジェダイ』ではヨーダと同じ種族のヤドルの活躍シーンが観られて嬉しかったです。ジェダイ評議会にはユニークなジェダイ・マスターが大勢いるので、毎回その一人にスポットを当てるオリジナルシリーズは良いと思います。いろんなジェダイ・マスターそれぞれの活躍は胸熱に決まっています。デイヴ・フィローニも、愛してやまないマスター・プロ・クーンの話をやりたいはずです(笑)。ぼくはヤレアル・プーフの物語が観たい。首の長いケルミアンという種族のマスターで、フォースで幻覚を見せる技に長けています。コミックでは彼の死も描かれていますが、そのときにボバ・フェットと邂逅もしています。ボバ・フェットが唯一認めるジェダイ・マスターなんですよ。このページのイラストを担当しているイラストレーターの河原瑞丸さんは、下半身が蛇状のオポー・ランシスが、どうやって戦うのか観たいそうです!」(高橋)

妄想4『スペース・ゴッドファーザー』

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『ボバ・フェット/SPACE GODFATHER』『マンダロリアン』シーズン2で、まさかの再登場を果たし、伝説の賞金稼ぎ。ドラマシリーズ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fetto』も制作された。

「ドラマ版ではあまり掘り下げられませんでしたが、銀河辺境を舞台にした『スター・ウォーズ』版『ゴッドファーザー』というか『仁義なき戦い』を観てみたいですよね。「ハット・クラン」「ブラック・サン」「クリムゾン・ドーン」「クリモラ・シンジケート」それに「パイク・シンジケート」と、『スター・ウォーズ』世界には名だたる犯罪組織が既に存在しているので活用しない手はないです」(高橋)

完全高橋ヨシキオリジナル。銀河の片隅で起きる、おもしろい話

妄想5『デックス・ダイナー』

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惑星コルサントの工業地区、ココタウンにある24時間営業の食堂。べサリスク種族のデクスター・ジェットスターがオーナー兼コックを務める。主人はジェダイマスターのオビ=ワン・ケノービと旧知の仲。『エピソード2/クローンの攻撃』では、情報を得るために店を訪れたオビ=ワンを快く迎え入れる。下町の人情を感じる。

「ラジオ番組『アフター6ジャンクション』に出演した時もお話ししましたが、惑星コルサントにある『デックス・ダイナー』を舞台にした、10分から15分くらいの短いシットコム(シチュエーション・コメディ)をやってもらいたい!昔のバーを舞台にした『チアーズ』というシットコムがありましたが、あんな感じで毎週さまざまなゲストが登場することにしたらきっと楽しいと思います。オープニングのクレジットで「This Week’s Guest: Qui-Gon Jinn」と出て、本人がお店にガラッと入ってきたらお客さんの声(の効果音)がどっと盛り上がって拍手が聞こえるような。パパノイダとか、いろんなゲストを妄想するだけで楽しいですよね」(高橋)

妄想6『イウォーク上京物語〜コルサント編』

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『エピゾード6/ジェダイの帰還』に登場した森の月エンドア原住の種族。森で生き延びる術や戦術を熟知し、レイアやC-3POら反乱同盟軍を部族に迎え入れ、彼らの目的を果たすために、帝国軍のストームトルーパーやスカウト・ウォーカーらと戦闘。見事、エンドアの戦いを勝利に導く。

また、非常に好奇心旺盛で、人懐っこい側面もあり、スピンオフ『イウォーク・アドベンチャー』(1985年日本公開)などでも描かれている。おなじみのウィケットらの“森イウォーク”に対し、ヨシキさん考案する“海イウォーク”の生態、活躍も見てみたいところ。

「イウォークの子供が種族で初めて、技術を学ぶため留学生としてコルサントへ向かいます。もう目にするものすべてが不思議で面白い。その姿を想像するだけで本当にカワイイですよね。コルサントの高度なテクノロジーはイウォークには驚異の対象なんだけど、逆にコルサントの人々がイウォークから学ばされることもいろいろあったりして、きっと子供が観ても楽しくためになる番組になるはずです!」(高橋)

profile

高橋ヨシキ

たかはし・よしき/1969年、東京都生まれ。アートディレクター/映画評論家/サタニスト/映画監督。『悪魔が憐れむ歌 ─暗黒映画入門─』(ちくま文庫)、『高橋ヨシキのシネマストリップ』シリーズ、『高橋ヨシキのサタニック人生相談』、『ヘンテコ映画レビュー』(以上スモール出版)、ほか著書・編著多数。装丁や映画ポスターのデザインも数多く手掛けている。2022年、映画『激怒』で映画監督デビュー。現在はウェブマガジン「高橋ヨシキのクレイジー・カルチャー・ガイド!」を配信。そしてYouTubeチャンネル『BLACKHOLE』に出演中。

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