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【パリの庭】パリ市の四大植物園「パルク・フローラル」に咲くダリア

  • 2023.11.18
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パリの東端に位置し、かつては王家の狩猟の獲物の保護地だったヴァンセンヌの森は、1969年に行われた国際園芸博覧会を契機に公園がつくられ、現在もパリ最大の緑地が広がっています。このパリ市の四大植物園の一つでもある「パルク・フローラル(Parc Floral de Paris)」の花盛りのダリア園をフランス在住の庭園文化研究家、遠藤浩子さんがご案内します。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」

パリ市の植物園「パルク・フローラル」

ご紹介する「パルク・フローラル(花公園)」は、パリ市の四大植物園(*)の一つで、文字通りにさまざまな植物コレクションを保有するパリ市の植物園。1969年に同地で行われた国際園芸博覧会を契機につくられた、30ヘクタールほどの広い公園です。全体的には、森林公園のような松やオークの林の散歩道の所々に、ダリア園や芍薬園などの華やかな花のコレクションがあり、アイリスやシダ、アスチルべなどのオーナメンタルな植物に加え、パリ盆地の自生植物や、薬用植物などのコーナー、錦鯉が泳ぐ広い園池など、変化に富んだ見所があります。どの季節も、大人も子どもも楽しめるような工夫がされています。

*四大植物園=パリ市の植物園としては、同じくヴァンセンヌの森にあるエコール・デュ・ブルイユの樹木園、バラ園で有名なバガテル公園、セール・ドートゥイユの全部で4庭園が存在します。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」
秋の森に群生するシクラメン。

色彩溢れる華やかなダリアにうっとり

パリ市の植物園「パルク・フローラル」
ダリア園の入口、緑の中のはっとする華やかさ。

さて、今日のお目当てはなんといってもダリア園。ダリアは7、8月から10月下旬の初霜の降りる頃までと花期が長く、少し寂しくなってくる秋の庭に華やかな色彩を添えてくれる人気者です。近年は花屋さんでも、オシャレな色合い、花姿の異なるさまざまなダリアを見かけるなぁと思っていましたが、最盛期のダリア園は、入口に立っただけでその華やかさに圧倒されます。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」

カラフルな色合いに加え、草丈は20cmほどの矮小種から2mを越すものまで、また小さなダリア、大きなダリア、一重や八重咲き、ポンポン咲き、カクタス咲き……などなど。あらゆる種類のダリアが咲き乱れる様子はこれぞ眼福です。

国際ダリア・コンクール

パリ市の植物園「パルク・フローラル」

パリのパルク・フローラルでは、野生種・園芸種を合わせて400種を超えるダリアを栽培しており、毎年8月末〜9月初めには、国際ダリア・コンクールが行われています。これには、フランス国内から60ほどの生産家、ドイツやオランダ、リトアニア、日本などの外国の生産家も参加し、一般投票と専門家の審査を経て、新栽培種の受賞品種が選ばれます。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」
左/Dahlia ‘Hellios (写真内手前)右/Dahlia Gryson’s Yellow Spider

一般参加者は3つの好きなダリアに投票することができ、専門家からは花ばかりでなく茎や葉も合わせた全体の花姿や色彩、さらに耐病性などもテクニカルな部分も加えた審査が加わります。大賞、ジャーナリスト特別賞、一般審査賞、子ども審査員賞などに選ばれたダリアの一部をご紹介すると、ニュアンスカラーのバラ色のDahlia ‘Dutch Delight’、黄色〜オレンジからカフェオレ色に色変わりするDahlia ‘Hellios’、爽やかなイエローのDahlia Gryson’s Yellow Spiderは菊のような繊細なカクタス咲き。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」
左/Dahlia Comet 右/Dahlia Staburadze

Dahlia Cometはパステルトーンのオレンジのポンポン咲き、より柔らかにエレガントなDahlia Staburadze、シックな深いレッドのDahlia ‘King Arthur’など。受賞作品は、色も形も実にさまざま。この多様性こそがダリアの尽きない魅力と改めて実感します。

ダリアの魅力〜多様性

ダリア

もともとはメキシコやコロンビアの暖かい高地に自生するダリアは、18世紀にヨーロッパに持ち込まれ、フランスに導入されたのはフランス革命が勃発した1789年。当初は根を食用にする野菜として導入されたものの、あまり美味しくはなかったようで、ジャガイモを超える人気の食用植物にはなりませんでした。しかし、花の華やかさや、初霜まで続く花期の長さが重宝されて、庭のオーナメンタルな植物として人気となりました。植物愛好家であったナポレオン皇妃ジョゼフィーヌもマルメゾンの庭園にダリアを取り入れ、ダリアは19世紀のフランスで人気を博しました。

再び人気上昇中のダリア

ダリア

かつては希少な品種が高額取り引きされるなど、歴史的にも花形だったダリアですが、一時期のフランスでは、田舎の祖父母のポタジェの花のような、ちょっと時代遅れのイメージになっていた時期がありました。しかし近年には再び、現代の感性に応える色や形のバリエーションに加え、茎の強度が増し、庭での植込みやブーケの素材として使いやすくく進化してきました。また、花がら摘みが不要なように、花後の姿が再びつぼみのような形になるローメンテナンスなダリアなどと、生産家による品種改良の努力が続けられてきた結果もあってか、ここ数年来ダリアの人気は再び上昇しています。

ダリア
野生種のコーナーの一角、ポンポン咲きのダリア。

パルク・フローラルのダリア・コレクションでは、年々増える多彩な園芸品種のダリアのかたわらに、全部で40種類前後存在する野生品種のダリアの1/3程が栽培されています。すでに草丈の短いものから人の背丈くらいのもの、一重も八重も花形にも多種の形態のダリアがありますが、比較的クラッシックなそれらのダリアに比べて、栽培種ではさらに、複雑なカラーコンビネーションで、銅葉やダークな色合いの茎までコーディネートされて、まるでオートクチュールのデザインのような完成度の高さ。

ダリア

ミルキーなオレンジやカフェ・オレ・カラー、シックなレッドなど、オシャレなカラーリングにも目移りが止まりません。ダリア園を一巡りしてみると、帰りにはすっかりダリアマニアになってしまいそうです。

庭デザインにもアレンジにも大活躍

ダリア

花の姿だけでなく、葉や茎も含め、さらに群生した際の姿のよさ、管理のしやすさなど、改良を重ねた園芸種のダリアの多様性は、華のある庭の風景づくりの強い味方です。庭で育てて、家に飾るブーケにもできる、双方に活躍するダリアは、自宅の庭の花としても魅力的。ちなみに、ダリアの花は長時間の輸送には向いていないのですが、逆に地消地産といったローカルな花のサーキットエコノミーにうってつけの花であることは、サスティナブル志向になってきた花屋でのダリア人気が再来している理由の一つでもあります。

パリ市の植物園「パルク・フローラル」

さて、パルク・フローラルのダリアは、季節が終わると掘り上げられて、来春の植え付けまで大切に保管されます。また来年にはどんな新しいダリアに出会えるのか、今から楽しみになっています。

Information

Parc Floral de Paris

https://www.parcfloraldeparis.com/fr/parc-floral-de-paris

Credit
写真&文 / 遠藤浩子 - フランス在住/庭園文化研究家 -

えんどう・ひろこ/東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。

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