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趣里さん「やれるところまでやってみよう」。諦めずにつかんだ主役の座

  • 2023.11.17

数々の出演作で強い存在感を放ち、現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインを演じている趣里さん。11月17日からWOWOWで放送・配信されるドラマ「東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-」では、貧困に苦しむ女性たちを取材する編集者を演じています。9月で33歳になった趣里さんに、年齢について感じることやエンターテインメント作品への考え、同世代の女性へのメッセージなどを伺いました。

結婚の予定を聞かれ「そりゃ私だって!って」

――趣里さんは今年33歳。30歳を前に「仕事か、結婚か」、40歳前後では「キャリアか、育児か」など、人生の選択において焦ったり悩んだりする女性も多いですが、ご自身はそういったことで悩んだことはありましたか?

趣里さん(以下、趣里): 確かに、女性の場合は年齢でこれからの人生のことを色々考えることはありますよね。私は女優としてデビューしたのが20歳くらいと割と遅めな方だったので、「〇歳までに主演を演じられるようにならなきゃ」といった仕事に対しての焦りみたいなものって実はないんです。

周りからポロっと「結婚の予定とかないの?」と聞かれた時は、自分でも「あ、私もそういう年齢よね」って初めて気がつくような感じで、人にそう言われたからって特にムッとすることもないです。「そりゃぁ、私だって!」とは思いますけど(笑)、それもご縁があってのことですから!

朝日新聞telling,(テリング)

やめることはいつでもできるから

――デビュー後も長い下積み生活を送っていたそうですが、徐々に出演作が増え、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」のヒロインの座をオーディションで射止められました。夢を諦めずにここまで続けてきた原動力になったものはなんでしょう?

趣里: 一番の原動力になっているのは「見ていただく方に楽しんでもらえたらいいな」という思いです。私自身、エンターテイメントの力というものをすごく感じていて、作品に救われた経験が今まで何度もありました。これまではそういう世界を見ている側だったのですが、今度は自分が「見せる・作る」側になったので、いただいた役や出会った人たちと丁寧に向き合って、自分ができることを一つ一つの作品に出し切りたいという気持ちでここまでやってきました。

あとは「続けること」ですかね。私は4歳から17歳ころまでバレエをやっていたのですが、その間は「絶対やめずに、続けてみよう」と心に決めていたんです。今のお仕事もデビューして10年以上になるので、バレエの年数を超えるように続けていきたいです。

――自分で決めたことを長い間続けられると、自信にもつながりますね。

趣里: 長く続けていると「もう嫌だ」って思うこともたくさんあります。だけど、やめるのはいつでも簡単にできるし、その決断ひとつで、それまでのものが全て終わってしまう気がするんです。人生は1度なので、私は「やれるところまでやってみようかな」という気持ちでずっとやってきました。

朝日新聞telling,(テリング)

極力寄り添えば伝わる何かがある

――ドラマ「東京貧困女子。」のサブタイトル「-貧困なんて他人事だと思ってた-」にある通り、他人事のように感じてしまいがちなことを、自分事として考えるきっかけを提供するのがドラマや映画などの作品の力でもあると思います。趣里さんはエンターテインメント作品の力をどうとらえていますか。

趣里: 私もこれまで、ドラマや映画などの作品を見て感動したり、物事を考えるきっかけになったりした経験がたくさんあるので、エンターテインメントにしかできないことは絶対にあると思っています。

例えば、戦争の時代を描いた作品の場合、その時代に戻ることはできないけれど、自分が体現することで今の私たちにしか作れないものはある。当事者の方の気持ちを完全に分かりきることはできないかもしれないけど、極力寄り添って、少しでも近くに感じながらものづくりをすれば、きっと伝わる「何か」があると信じています。

見てくださる方にどう受け取ってもらうかは個々の自由なので、私は特にメッセージ性の強い作品に出演するときは「こういう問題にはこうするべき」といった押し付けがましいことはしたくないんです。ただ、演じる側としてはその時代の歴史や、当事者の方々の気持ちを学ぶのは大前提のことなので、私自身も心に留めておかなければいけない現実とこれからも向き合いながら、真面目に作品に取り組んでいきたいと思っています。

朝日新聞telling,(テリング)

まずは心と体を大事にすること

――最後に、同年代の女性へのメッセージをお願いします。

趣里: 「東京貧困女子。」に登場する女性たちにも通じることですが、自分の心と体を大事にしてほしいなと思います。夢や目標、何かやってみたいことがあって、そのために頑張ることはすてきなことだけど、頑張りすぎて壊れてしまったら元も子もないじゃないですか。それは私自身もいつも自分に言い聞かせていることで、最近は以前よりも少し肩の力が抜けて出来るようになってきたかなと思っています。

あとは、何かささやかな楽しみや、ハッピーになれることが日々の生活の中にひとつでもあるといいですよね。自分が毎日を楽しく穏やかに過ごすことができれば、自ずと周りにもいい影響を与えられると思うんです。そのためにも、まずは自分自身の心と体を大切にしてほしいなと思います。

スタイリスト:中井綾子(crêpe)
ヘアメイク:カワムラノゾミ

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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