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迷ったら「縁」を感じるほうを選ぶ。枡野俊明さんが教える、禅的思考で"今を生ききる"方法

  • 2023.11.17

「やる気が出なくてあせる」
→「期日までにできないのではないかと不安になる」
→「できない自分がイヤになる」
→「このままでは自分の居場所がなくなるのではないかと疎外感を覚える」......

こんな"ネガティブ・スパイラル"に陥ることはないだろうか。ネガティブな感情は、放置しておくと、別のネガティブな感情を呼び込む。心軽やかに生きている人は、ネガティブな気持ちを自ら「リセット」できる人だという。

住職の枡野俊明さんは、禅の教えをわかりやすく説くことに定評があり、著書の累計発行部数は290万部超。新著『リセットする習慣 やり場のない感情を整える62のヒント』(明日香出版社)では、"禅"の思想を切り口に、気持ちをリセットする方法を紹介している。

「禅の教えの根本は、"今を生ききる"です。『今』この一瞬が絶対的な存在である、と考えます。そして、「今」という瞬間が積み重なって、一生が築き上げられるというわけです。過去とも未来とも切り離された、この日、この瞬間を、『今しかない』と思って生きるのが、禅的な生き方です。それはまさに、一瞬一瞬、新しい心にリセットすることなのです。」

「リセットする習慣」を取り入れることで、心軽やかに、自然体で生きられるようになるという。あのときああしておけば......こうなったらどうしよう......という後悔も不安も削ぎ落とし、「今」にピントを合わせて生きるには、どうしたらいいのだろうか。本書からそのヒントを2つ紹介しよう。

一つひとつ、できることをコツコツと。
――結果自然成(けっかじねんになる)

世の中には、自分の頑張りでどうにかなることと、どうにもならないことがある。どうにかなることは、やりようがあり、もしダメだったとしても、その理由がわかるから納得がいく。一方、新型コロナウイルスのパンデミックなど、自分の頑張りでどうにもならないことは、永遠に続かないとわかっていても、いつ収まるのかわからなくて不安になる。

不安の正体は、やりようのないこと自体ではなく、それがいつ収まるのかわからないことだと、枡野さんは言う。

「やりようのないことは、まずは受けいれるしかありません。そんなあきらめも大切です。受けいれると、なぜか心が軽くなります。心が軽くなれば、自分が今やるべきことは何なのか、できることは何なのかが自ずと見えてきます。それにコツコツと取り組めばいいのです。」

中国に禅を伝えた初祖・菩提達磨(ぼだいだるま)の教えに、「一華開五葉 結果自然成(いっけごようをひらき けっかじねんになる)」というものがある。一輪の花から5枚の花びらが開き、やがて自然に実をつける――。これは「あせらずに一つひとつできることをやっていれば、かならず結果はついてくる」という意味だという。

今やっていること以外は、すべて"妄想"にすぎない。
――莫妄想(まくもうぞう)

日常的な場面から人生を決定づける場面まで、私たちは選択の連続のなかに生きている。選択とは1つを選ぶことのようで、じつは「AよりBのほうが......」と比べること、ものごとを対立的にとらえることでもあると、枡野さんは言う。

禅語の「莫妄想」は、「妄想することなかれ」という意味。禅における妄想は、心を縛るものすべてを指す。禅では「今やっていること以外はすべて妄想である」と考え、「今」に集中していれば妄想は断ち切れるという。

じつは、この妄想を生み出す大本にあるのが、ものごとを対立的に考える思考。生死、愛憎、美醜、貧富、損得、優劣、好悪......と、対立的にとらえることで妄想が生まれ、それが心の雑念に。

「目の前のことだけに集中していれば、妄想の出番はありません。あれこれ考える暇がないのですから。」

ちなみに、AとBのどちらかを選ばざるを得ないとき、枡野さんなら"縁"を感じるほうを選ぶそうだ。すると、困難なことがあっても、いい方向に展開することが多く、もしうまくいかなくても、悔やまないのだという。

日々生まれては、心に居座り続ける「やり場のない感情」。散らかった心の中を整理できたら......と常々思っている身としては、本書の「切り離す」「削ぎ落とす」という考え方がよかった。いろいろなものに振り回されるのも引きずるのもおしまいにして、「今」の一点に集中して生きたくなる一冊だ。

【もくじ】
はじめに
第1章 尽きない悩みを、うまいこと手放す
コラム1 笑い飛ばせば、心が晴れわたる
第2章 大事なのは、ただ「今」を生きること
コラム2 今できることを、精一杯に黙々と
第3章 もう、他人には縛られない
コラム3 自分の人生は、自分のもの
第4章 かけがえのない良縁を得る
コラム4 いい関係は、素直な心が育む
第5章 ざわつく感情は、こうして整える
コラム5 道理がわかれば、禅の心に近づける
第6章 心地いい習慣を身につける
コラム6 窓を開け、新鮮な空気をとりこもう
第7章 ささいな毎日を、禅の心で変えていく

■枡野俊明さんプロフィール
ますの・しゅんみょう/曹洞宗徳雄山建功寺住職。庭園デザイナー。1953年神奈川県生まれ。大学卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」の創作活動により、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年には『ニューズウィーク』日本版にて、「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館庭園、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園、寒川神社ご神苑などがある。主な著書に『禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本』(幻冬舎)、『心配事の9割は起こらない』(三笠書房)、『片づける 禅の作法』(河出書房新社)、『限りなくシンプルに、豊かに暮らす』(PHP研究所)など多数あり、累計発行290万部を超える。

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