獄中「ムショラン三ツ星」料理大公開　受刑者たちのメシ作り奮闘記

2023年10月20日、現役の刑務所管理栄養士・黒栁桂子さんによる著書『めざせ！ムショラン三ツ星 刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります』（朝日新聞出版）が発売された。

本書は、何も知らずに刑務所の炊場（炊事工場）に飛び込んだ管理栄養士の黒栁さんと、料理初心者の男子受刑者たちとの給食作り奮闘記。刑務所給食を少しでも健康的に、少しでもおいしく、少しでも簡単に、少しでもワクワクできる「クサくないメシ」にしようという試行錯誤を記録した1冊だ。

元札幌矯正管区長の中島学さん、元法務省矯正局長の名執雅子さんなど、現場を知る人々からも推薦文が寄せられている。

「どんぶりぜんざい」に「獄旨ドーナツ」

刑務所の給食は、刑務作業の一つとして受刑者自身が作っている。著者が勤務する刑務所は、男子刑務所ということもあり、調理経験がほぼゼロという受刑者が大半。そのため、ふかしたジャガイモを冷ますために水をかけたり、冷凍コロッケが次々と爆発したりと、数々の珍事件が発生してきた。

本書では、そんなさまざまな失敗にもめげずに作られた「ムショラン三ツ星」ともいうべき料理の数々と、そのスリリングな調理風景を公開。全国の刑務所人気ナンバーワンの「どんぶりぜんざい」、「ピーナツ煮」、「獄旨ドーナツ」など、なかなか立ち入ることのできない刑務所の炊場で作られたオリジナルレシピを楽しむことができる。

【目次】
はじめに クサくないムショメシをめざして
第1章 みりんもバナナの皮もアルミ包装もＮＧ！
第2章 「みょうがはどこまでむくんですか？」
第3章 全国刑務所人気ナンバーワン！「どんぶりぜんざい」
第4章 「愛情の安売りはよくないですよ」とたしなめられて
おわりに 卒業生への手紙
解説 更生を支える「食」／名執雅子（元法務省矯正局長）

■黒栁桂子さんプロフィール
くろやなぎ・けいこ／愛知県岡崎市生まれ。管理栄養士（法務技官・岡崎医療刑務所勤務）。椙山女学園大学家政学部（現生活科学部）卒業。老人施設や病院勤務を経て、病気の予防に興味をもつ。出産育児を機に料理教室や講演等の食育活動をスタート。10年間開催した「男の料理教室」ではのべ1000人の高齢男性に指導。初心者男性が料理を覚えて家族に喜ばれることにやりがいを感じる。2012年、刑務所の管理栄養士採用試験では30倍の狭き門を突破し、採用される。刑務所では制限が多いながらも「ワクワクする給食」をめざし、受刑者たちの「ウマかったっス」を聞くため、彼らとともに日々研究を重ねている。