1. トップ
  2. 恋愛
  3. 『HSM』への愛から日本での感動の出会いまで!グラミー新人賞シンガー、サマラ・ジョイについて押さえておきたい12のポイント【単独インタビュー】

『HSM』への愛から日本での感動の出会いまで!グラミー新人賞シンガー、サマラ・ジョイについて押さえておきたい12のポイント【単独インタビュー】

  • 2023.11.9

オリヴィア・ロドリゴに続いて、第65回グラミー賞で主要部門の最優秀新人賞を受賞し、同賞を12年ぶりにジャズ界にもたらしたサマラ・ジョイにインタビュー。『ハイスクール・ミュージカル』が大好きなディズニー・チャンネルっ子だったという幼少期のエピソードから、サマラらしいジャズ論、そして、日本で衝撃を受けたというチップスとの出会いまで、世界で最も注目すべき新人の1人であるサマラの素顔やアーティスト性が見える12のポイントにまとめた。(フロントロウ編集部)

サマラ・ジョイにインタビュー

1. 「家族の奏でる音」を愛する、ミュージシャン一家に生まれたシンガー

現在24歳のシンガーであるサマラ・ジョイは、1999年11月1日に米・ニューヨーク州ブロンクスで生まれた。祖父母は有名ゴスペルグループであるザ・サヴェッツ(The Savettes)のメンバーで、父親もゴスペルシンガーという音楽一家に育ったサマラは、今もミュージシャンとして活動している家族こそ、「私の最大のインスピレーション源」だとフロントロウ編集部に話す。

画像: ©️Meredith Truax

「家族が奏でる音が、私の一番大好きな音です」とサマラ。「歌うときの、あの機敏さが大好き! 頭に思い浮かぶことを歌で表現できるところもそうですし、サウンドやトーンに宿る温かみや、誠実さ、それからオーセンティシティ(本物らしさ)も。とにかく彼らの歌が大好きなんです」

2. 高校の先生にジャズを教わって才能が開花

音楽一家に育ったサマラだが、彼女にジャズの魅力を教えてくれたのは高校時代の先生。「高校の先生からジャズを教えてもらったとき」が、自分のキャリアの最初のターニングポイントだったとサマラは話す。その後、ニューヨーク州立大学に進学したサマラは声楽を専攻して、本格的にシンガーへの道を志した。

画像: 2. 高校の先生にジャズを教わって才能が開花

今ではジャズの世界で最も将来を期待されている若手シンガーの1人となったサマラだが、そもそも、彼女をここまで惹きつけたジャズの魅力とは何だったのだろうか? 「ミュージシャンたちの即興の演奏や、ジャズ特有の作曲スタイルに魅了されたのはもちろんですが、私が最も魅了されたのは、その歌唱スタイルです」

サマラはこう続ける。「サラ・ヴォーンやベティ・カーターといったシンガーたちの歌唱スタイルに特に魅了されたのですが、それぞれが個性的でありながら、そのどれもが美しくて、オーセンティックでエレガントだったということ。それでいて力強いという部分に感銘を受けました」

3. 『ハイスクール・ミュージカル』の曲は全曲暗記していたディズニー・チャンネルっ子

幼少期に影響を受けたアーティストを訊ねると、「ルーサー・ヴァンドロスやスティーヴィー・ワンダー、レイラ・ハサウェイ、ジル・スコット」と名前を挙げてくれたサマラだが、幼少期の彼女にとっての音楽面でのインスピレーション源は他にも。それは、『チーター・ガールズ』や『ハイスクール・ミュージカル』といった、ディズニー・チャンネルの番組たち。

「子どもの頃はディズニー・チャンネルをよく観ていましたよ。『チーター・ガールズ』とか『ハイスクール・ミュージカル』とか。もちろん曲もよく聴いていましたし。今ではさすがに完全には暗記していませんけど、10代の時は間違いなく、ほぼ全曲歌えていたくらいです!」

4. TikTokの同世代ユーザーとジャズを繋ぐ架け橋になっている

「ソーシャルメディアというのは、芸術性を求めたり、特定の見せ方をしたりという点で、人々がありのままの自分を見せる場所ではないという評判があると思います」。そう話すサマラだが、彼女はそうしたステレオタイプとは異なる形で、自身のソーシャルメディアを活用している。「グラミー2冠|ブロンクス育ち」という、シンプルながらも目を引くには十分すぎるアイコニックな自己紹介文を記載している自身のTikTokでサマラが見せているのは、ありのままの姿。

画像: 4. TikTokの同世代ユーザーとジャズを繋ぐ架け橋になっている

そこに投稿する飾らない姿が共感を呼んだり、圧倒的な歌唱動画が評判を集めたりして、TikTokでも人気の存在となり、記事執筆時点では64万人以上のフォロワーを抱えている。

サマラ本人としても、自身がTikTokを通して若いオーディエンスにジャズを広めていることに対する実感はあるといい、「TikTokにおいては、ありのままの姿を見せている人たちが最も人気を集めやすいんじゃないかと私は思っています。なので、私にとってTikTokというソーシャルメディアはスッピンを見せられたり、好きなように歌ったりできる場所なので、それで、みんなにも見てもらえたんじゃないかなって。なぜなら、それはリアルな姿だからです。私は何かのイメージを作ろうとしたわけではなく、ありのままに音楽を表現しているので」と分析する。

「個人的には、同世代の人たちがそういう形でに夢中になれる場所があることを嬉しく思っています」と続けた。

5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

2023年1月に開催された第65回グラミー賞で、前年の受賞者であるオリヴィア・ロドリゴから授与された主要部門の1つである最優秀新人賞と、最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞の2冠を受賞したサマラ。メジャーデビューから半年足らずでのグラミー賞受賞は音楽業界に衝撃を与えたが、とりわけ、全ジャンルを対象にした最優秀新人賞をジャズ・アーティストが受賞したのは12年ぶりという歴史的な快挙は、ジャズ界を大いに歓喜させた。

画像1: 5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

サマラはフロントロウ編集部とのインタビューで、「グラミー賞はこれまでで最大のターニング・ポイントでした。ほとんど知られていなかった存在から、今では世界中に知れ渡るまでにキャリアに変化をもたらしてくれましたから」と振り返りながらも、“今回の受賞はジャズの門戸を若い人たちにもっと広げることにも繋がったと思います”とこちらが話を向けると、彼女からは「そういうことはあまり考えません」と、地に足の着いた回答が返ってきた。

そう、彼女の魅力は、その謙虚で、あらゆる人たちをリスペクトする姿勢にもある。「少なくとも、私はそういう風には考えませんね。ジャズが広まる上では、ミュージシャンはもちろんですが、ラジオ局のプロモーターや、ジャーナリストの方々も同じくらい大切だと私は思っています」とサマラ。

画像2: 5. グラミー賞受賞で“ほんのちょっぴり”だけジャズの門戸を広げる手助けをした

「なので、ただ私がグラミー賞を受賞したということだけでは、その手助けにはなっていないはずです。たしかに、“ほんのちょっぴり”だけ、ジャズの幅を広げたのかもしれませんが、私はあくまでそのうちの1人です。このジャンルを成長させている1人でいられることは嬉しく思っていますよ!」と、自分はあくまでもジャズの将来を担う1人に過ぎないと謙遜した。

6. グラミー賞ではあらゆるセレブに大興奮だった

自身のグラミー賞受賞を冷静に分析したサマラだが、音楽業界のあらゆるビッグネームが集結した授賞式では、さすがに冷静を保ち続けることはできなかったよう。「たくさんのセレブに興奮していましたよ」と、当日の様子を振り返ってくれた。

「グラミー賞授賞式でビヨンセが目の前にいたとき、こう言えていたらよかったのに」というキャプションを添えて投稿したTikTok動画。

“特に興奮したセレブは誰でしたか?”と訊くと、サマラはその一人一人を思い浮かべながら、こう返してきた。「ファレル・ウィリアムスにザ・ロック(※ドウェイン・ジョンソン)、カーディ・B、メアリー・J. ブライジ、ビヨンセ…ほとんど全員ですね(笑)」

画像: プレゼンターを務めた前年度の受賞者オリヴィア・ロドリゴから最優秀新人賞を贈られたサマラ・ジョイ。
プレゼンターを務めた前年度の受賞者オリヴィア・ロドリゴから最優秀新人賞を贈られたサマラ・ジョイ。

7. 『リンガー・アワイル』はキャリアのドキュメントのような作品

2021年7月にセルフタイトルのファーストアルバムをリリースして、様々なステージに立ちながらパフォーマーとしての経験を積んでいったサマラ。2022年9月にリリースされ、第65回グラミー賞で最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞したセカンドアルバム『リンガー・アワイル』は、彼女がフロントロウ編集部に話してくれた言葉を引用すれば、「当時私が歩んでいたキャリアの地点をドキュメントにしたような作品」になっている。

「ファーストアルバム(『サマラ・ジョイ』)は私が学校で学んだ楽曲たちを収録したような作品だったのですが、『リンガー・アワイル』については、当時ツアーをしていたこともあって、ステージで歌うための楽曲を選んだような作品になっています」と語るサマラが同作で目指したのは、ステージで披露して好評だった楽曲を音源としてリリースすることで、さらに幅広いオーディエンスに聴いてもらうこと。

「クラブなどで披露したそれらの楽曲たちが好評をいただけたので、レコーディングして、私たちがライブで演奏していたものを多くの人たちにも聴いてもらいたいと思ったんです。ラブソングから失恋についての曲、幸せな曲まで、このアルバムでは感情のあらゆる側面を表現することを目指しました」

8. ステージの上だけでなく音源でもオーディエンスと繋がりたい

これまでステージで好評を得てきたパフォーマンスを、音源としてもオーディエンスに届けたい。そんなサマラの思いは、11月1日にリリースされた日本特別編成盤『リンガー・アワイル・ロンガー・ジャパン・スペシャル・エディション』にも結実している。このアルバムは、オリジナル盤には収録されなかったバージョンなどが収録された1枚となっているのだが、日本特別編成盤として特別に収録された今年9月リリースのシングル「Tight」はその中でも、“パフォーマンスを音源で”という、サマラらしいオーディエンスへのアプローチが見て取れる1曲。

「元々は(ライブの)セットリストのうちの1曲だったのですが、私の曲を聴いてくれている人たちの中には、これまでにリリースした2枚のアルバムというレコーディング音源を通してという形だけで聴いてくれている人たちもいるということに次第に気がつきました」と、「Tight」をシングルとしてリリースすることにした経緯について教えてくれたサマラ。

オーディエンスと繋がることができるのは、必ずしもステージに立ったときだけではない。そのことに改めて気がついたサマラは、こう思ったのだという。「なので、この曲をリリースすることで、 『ねえ、私は(「Tight」のオリジナルを歌った)ベティ・カーターも聴いているんだよ!』って伝えたいと思ったんです」

彼女は次のように続けた。「幅広いジャンルのシンガーを聴いていて、そのどれもが私を構成しているということを。それは楽曲のメッセージも同じで、パワフルで前向きなものもあれば、反対にセンチメンタルなものもあるし、幅広い感情を伝えたいと思っているということを、みんなに知ってもらいたいと思ったんです」

9. 物語の「会話」を意識した歌詞

『リンガー・アワイル』には、「自分が好きなスタンダード曲たち」を収録したと話すサマラ。ジャズの世界においては、長きにわたって愛されてきたスタンダードとされる楽曲をカバーすることは定番だが、サマラが歌うバージョンを彼女にしか作れないユニークなものにしている要素の一つは、彼女がスタンダード曲に付け加える、まるでリスナーに語りかけているかのように歌われる会話劇のような歌詞。

歌詞を書くのは「まだ始めたばかり」だと話すサマラは、「インスピレーションの源は読書」だと明かす。「作家が書く2人の登場人物による会話から、私と、もう1人の人物の会話を思い浮かべるんです。歌詞は会話のようなものにしたくて。スムーズに流れていって、オーディエンスやリスナーの人たちの頭にスッと入っていくようなものにしたいと思っています」と、歌詞へのアプローチ方法について教えてくれた。

10. 初めてのホリデーEPには家族とのクリスマスの思い出が詰まっている

10月27日には、初のホリデーEPとなる『A Joyful Holiday(ア・ジョイフル・ホリデー)』もリリースしたサマラ。「私がクリスマスについてどう感じているかについての短い声明のようなEPで、クリスマスの定番曲から、家族との思い出まで収録しています」と話す同作では、ミュージシャンとして活動するサマラの家族が大集合して、家族での共演も実現している。

スティービー・ワンダーの「Twinkle Twinkle Little Me」や、「Warm in December」など、クリスマスの名曲ばかりが収録されている同作だが、サマラがその中でもお気に入りとして真っ先に挙げてくれたのは、やっぱり家族と共演した「O Holy Night」だった。

「お気に入りを選ぶとしたら、『O Holy Night』です」。サマラはそう語ると、その理由について次のように教えてくれた。「この曲は2人のいとこと、私の兄弟、父、それから叔父とスタジオに入って、家族で一緒に歌いながら収録したのですが、それってまさに、いつも家族でクリスマスに家でやっていることなんです。なので、今回こうやってレコーディングできたのは嬉しかったですね。美しい曲になったと思いますし、93歳の祖父が2番のヴァースを歌っています。オルガンを担当してくれたサリヴァン・フォートナーも最高ですし、私のお気に入りの1曲です」

11.ファッションはヴィンテージなものが好き

ティファニー(Tiffany & Co.)がスポンサーを務めた、今年のロサンゼルス現代美術館(MOCA)で開催されたMOCAガラに出席するなど、ファッション界からも注目が集まっているサマラ。

画像: 11.ファッションはヴィンテージなものが好き

普段はどちらかというとヴィンテージなスタイルを好んで着ているそうで、「古着屋さんでショッピングするのが好きです。ヴィンテージものを売っているような!」とサマラ。「そこで私らしいスタイルに合う、おしゃれでクールなアイテムを見つけるのが好きです」

ちなみに、今回のインタビューでは「実は、まだあまり言えることはないのですが、もうすぐファッションブランドとのパートナーシップを発表する予定なんです。今はそれに取り組んでいます」ともチラッと教えてくれたのだが、インタビューから数日後に、セオリー(Theory)のホリデーキャンペーンに起用されたことが発表に。これからどんどんファッション界でも注目を高めていきそうな予感が漂っている。

12. 日本で出会った「エビのガーリックチップス」が忘れられない

2023年4月には初来日して、日本での初パフォーマンスとなる一夜限りのショウケースを開催。その稀代のパフォーマンスで、完全招待制だったショーケースを訪れた幸運な日本のファンを大いに魅了したサマラだが、初めての日本滞在で特に印象に残った思い出を訊くと、「忘れられないのは、エビのガーリックチップスです! 本当にもう、めちゃくちゃ美味しかったので。『どうやってガーリックシュリンプをチップスにしたの?』って、感動してしまいました」と、意外なエピソードを教えてくれた。

画像1: 12. 日本で出会った「エビのガーリックチップス」が忘れられない

とりわけ、日本の食べ物には魅了されたそうで、サマラは「それからお酒もお寿司もたくさん楽しみました。また日本に行ったときは堪能したいです」と、早くも次の来日を見据えていた。

そして、インタビューの最後に日本のファンへのメッセージをお願いすると、サマラはメッセージを次のように送ってくれた。「日本のファンのみなさん、大好きです! みなさんの音楽への愛も、スタイルやファッション、音楽で自分らしさを表現しているところも最高! 会える日を楽しみにしています。(日本語で)ありがとう!」

<リリース情報>
サマラ・ジョイ
EP『A Joyful Holiday』
配信中
ストリーミングやダウンロードはコチラ。

画像2: 12. 日本で出会った「エビのガーリックチップス」が忘れられない

収録曲目:
1. Warm In December
2. Twinkle Twinkle Little Me ft. Sullivan Fortner
3. The Christmas Song
4. Have Yourself A Merry Little Christmas
5. O Holy Night
6. The Christmas Song (Live)

『リンガー・アワイル・ロンガー・ジャパン・スペシャル・エディション』
2023年11月1日 リリース
SHM-CD:UCCV-1198 ¥2,860(税込)
Verve/Universal Music
発売中
ストリーミングやダウンロード、購入はコチラ。

画像3: 12. 日本で出会った「エビのガーリックチップス」が忘れられない

収録曲目:
1. キャント・ゲット・アウト・オブ・ディス・ムード (デュオ・ヴァージョン)
2. ゲス・フー・アイ・ソウ・トゥデイ (ニュー・トリオ・ヴァージョン)
3. スィート・パンプキン (デュオ・ヴァージョン)
4. アイ・ミス・ユー・ソー
5. アイム・ゴナ・ロック・マイ・ハート
6. サムタイムス・トゥデイ・シームズ・ライク・イェスタデイ
7. アイム・アフレイド
8. ゲス・フー・アイ・ソウ・トゥデイ (デュオ・ヴァージョン)
9. タイト ※ボーナス・トラック

元記事で読む
の記事をもっとみる