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浦和と戦う浦項キム・ギドン監督を「屈指の戦術家」と呼ぶ理由 選手とも駆け引きする名将の頭脳

  • 2023.11.8

浦和レッズとACLグループステージで同組の浦項(ポハン)スティーラーズ。チームを率いるキム・ギドン監督は、韓国国内で「Kリーグ屈指の戦術家」との呼び声が高い。

キム監督の長所は「柔軟性」と「選手采配」にある。試合の流れに応じて適切な選手交代、ポジション変化を図り、着実に利益を出す。

何より、自らのミスを“クール”に認め、直ちに修正する。

今シーズンに限っても、新加入のMFキム・ジョンウ(30)を本職のトップ下ではなく一列下げたボランチで起用したほか、ブラジル人DFヴァンデルソン(34)をウィングからサイドバックにコンバートさせ、彼らのポテンシャルを最大限に発揮した。

また、DFパク・スンウク(26)を両サイドバックやセンターバック、さらには守備的MFで起用したり、キャプテンのFWキム・スンデ(32)を本来のトップ下ではなくサイドで起用するなど、多くの選手に複数の役割を任せている。

「練習を通じて選手をあらゆるポジションに立たせる。練習時の選手の性向もチェックしている。常に試して、念頭に置く」というキム監督。去る11月4日の全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースとのFAカップ決勝でも、相手の先制を許した直後に両サイドバックと攻撃陣の位置をすべて入れ替えた。

「実際、タイミングが重要だ。元々(右サイドバックのシン・)グァンフンに“ポジションを変える可能性がある”と伝えていた。ただ、タイミングを見計らっていたときに失点した。そのように遅れることもあれば、ちょうど当たるときもある。試合の流れを見て考えることもある」とキム監督は説明する。

キム・ギドン監督
(写真提供=韓国サッカー協会)FAカップで優勝し、胴上げされるキム・ギドン監督
指揮官の原点は「選手時代の経験」

試合の局面を大きく打開するキム監督の采配術を、ファンやメディアは「ギドン・マジック」と呼ぶ。ただ、当の本人は手を振って否定する。

「“マジック”なんてどこにあるんだ」と逆に問い返したキム監督は、「交代出場した選手が上手くハマっただけだ。試合の流れを呼み、ポジションや戦術を変化させたことが的中したのだ。大きな枠組みは同じで、試合ごとにポイントがある。それがサッカーの醍醐味というものだと思う。試合のポイントを探すことだ。見つからないと眠れないし、寝ているときもサッカーのことを考える。そして、どのように攻撃して守備をするかを探し出せば、コーチ陣や選手たちと話し合う」と、徹底した準備過程を説明した。

とはいえ、試合の流れを上手く読み取ることは決して簡単なことではない。キム監督は秘訣として、自身が現役時代にMFだったこと、そして選手生活を長く続けたことを挙げ、次のように強調した。

「MFだったことが助けになることもあれば、数多くの指導者に会って学んだこともある。選手時代にキャプテンを務めながら、必要に応じて部分的なことをチームメイトに要求したこともある。サッカーを見る観点とポイントは人によって異なる。だからこそ、どこにポイントを見出すかが重要だ」

キム・ギドン監督
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)キム・ギドン監督(左)

そんなキム監督は、自チームの選手との「駆け引き」にも長けている。

選手たちに対して時には優しく、時には厳しく接する。その一方で、上手く選手たちのモチベーションを引き出すことから、“兄貴分リーダーシップ”と呼ばれることもある。

ただ、普段は選手たちと気軽に冗談を交わすキム監督も、練習場とピッチ上では“態度”と“姿勢”を強調する。

「相手を知ってこそ、“駆け引き”もできると思う。選手たちの気持ちも理解しなければならない。私は選手生活を長く続けた。プロの舞台で起こることは、世代間の差こそあれど基本的には似ている。選手たちの悩みも同じだ。年代別に、また試合に継続的に出られるとき、また出られないときの選手の気持ちを知っている」と、指揮官は自らの選手時代の経験が、監督業にも活きていることを明かした。

キム・ギドン監督
(写真提供=韓国プロサッカー連盟)キム・ギドン監督

それとともに、「(ホン・)ユンサンがとあるインタビューで、“監督はとても親しく接してくださるが、だからといってラフな関係ではない”と言っていた。選手と監督の関係が近すぎてもいけない。お互いの間の壁がなくなり、言葉や行動を防ぐことがある。だからといって、性向が正反対に流れると心が傷つく。(選手とは)近いようでいて、常に距離を維持しなければならない。人間関係も同じだろう。並行を維持できる関係は、実は非常に難しい」と、選手との関係性構築について語っていた。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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